調和のねがい

ニューシーカーズが歌ったものがヒットし有名。ヒルサイドシンガーズがパフォーマンスしたものがコカ・コーラのCMに使われたようです。ヒルサイドシンガーズ名義で、本曲を表題にしたアルバムも出ています。みんなで美しいメロディをユニゾンでシンガロングしたらそれでいいじゃん!🌍という姿勢がうかがえる、統一感が耳福なアルバムです。

当初はニューシーカーズに依頼の話が行ったが、グループ側が断った?(のか?)ために寄せ集め集団のヒルサイドシンガーズが組織されたとのこと。

本曲は、元はSusan Shirley『True love and Apple Pie』です。それの歌詞の一部をコカ・コーラのCMのメッセージに応じて変化させました。さらにそれを、コカ・コーラから切り離しても音楽作品として味わえるようにコカ・コーラの名詞を用いない形に仕上げたのが、ヒットソング:愛するハーモニーとして浸透しているようです。背景、曲のあゆみに多層(レイヤー)の厚みがあるところに世界規模のヒットソングとしての普遍の偉大さを覚えます。偉大であると同時に極めてシンプルでもあります。

原曲(の原曲?)にクレジットされる作家のRoger Cook、Roger Greenaway、Billy Davisのうち、Roger CookとRoger Greenawayは元々The Kestrelsというクローズド・ハーモニー・ボーカルグループをやっていたメンバー同志の仲とのこと。フォーチュンズやホリーズへの提供曲ほか多数の作例を証拠に作詞作曲コンビとして活躍する二人です。Billy Davisはコカ・コーラのジングルの作曲者であるとのことですが、コカ・コーラのCM曲になる前のSusan Shirley『True love and Apple Pie』の時点から名義がすでにあったのか、あるいはコカ・コーラのCM曲として改変修正されたうえで以後も利用され続けることになるために新たに名義に加えられたために現在Susan Shirley『True love and Apple Pie』のクレジットを見てもBilly Davisの名前が加えられた状態になっているという道理なのかよく分かりません。

CMソングとしての『愛するハーモニー』になるにあたって作家名義に加わっているBill Backerは広告代理店勤務でキャッチコピー“I’d like to buy the world a Coke”を考案した人だそうです。

本曲『愛するハーモニー』の特徴としては構造が非常にシンプルで短い時間に本旨を直訴する必要に迫られるCMソングとしての資質を備えています。メロディは5音音階を基調にしており、世界が通じ合い調和する未来をみつめる曲の魂柱・メッセージを伝えるために適切なフォーマットで普遍性と音楽的哀愁を両立しています。

コードもきわめてシンプルですが歌い出し3小節目でⅡ7(五度調の五度……=ドッペルドミナント)に進行するところが気が利いています。

ここからは余談ですが5音音階って、選ぶ音が5つしかないが故に進行の選択肢が限定されるシンプルさがあって、なお且つ5音しかないが故にどうしても音程間に跳躍が生じやすいので、メロディがシンプルでありながら雄弁なエモーショナル(感情豊かさ)を獲得しやすいのです。日本や世界の商業音楽のヒットを見渡しても、ペンタトニックスケール(5音音階)を用いた作例を見出すのは実にたやすいでしょう。どうしても音の選択肢が狭いが故に似たメロディになりやすいという短所も孕んでおり、ペンタトニックを基調にしながらダイアトニックスケール(7音音階)を少しだけ混ぜるとアイデンティティの獲得もたやすくなります。平成時代のJpop的な作例でペンタトニックとダイアトニックを混ぜてフィットした曲……という特長でぱっと私が思い浮かぶのは例えば米津玄師(Foorin)『パプリカ』、福山雅治『桜坂』などです。

愛するハーモニー I’d Like to Teach the World to Sing (In Perfect Harmony) 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:Roger Cook、Roger Greenaway、Billy Davis、Bill Backer。The Hillside Singersのシングル、アルバム『I’d Like to Teach the World to Sing』(1971)に収録。

愛するハーモニー I’d Like to Teach the World to Sing (In Perfect Harmony) 

私の記憶のなかで盛大な混同が起きていたと気づきました。ヒルサイドシンガーズバージョンは転調がありますね。E♭からEメージャーに転調しています。ニューシーカーズはE調で統一、転調なしです。

ヒルサイドシンガーズのものは、セクションの間に短いですが独自の展開があります。ニューシーカーズ版は、このイレギュラーをうまいこと割愛したのですね。ほとんどシンプルなヴァース(Aメロ)しかないような反復の曲調に仕上げているんです。愛するハーモニーがさもニューシーカーズが元々オリジナルだったかのように誤解されるほどに浸透したのは、ニューシーカーズバージョンになるときのわずかばかりのよりシンプルになるためのエディットの功績が大きいかもしれません。

ヒルサイドシンガーズバージョンの鑑賞の話にもどります。みんながシンガロングしているようで、いくつかのパートにわかれて歌ってもいます。もちろん主旋律のシンガロングもあります。ギター類、マンドリンや12弦ギターもいるのか、イントロやオブリの短いモチーフの弦の響きにチミチミとした輪郭の幅があります。ニューシーカーズ版にはない転調や、わずかばかりのヴァース間の独自の展開が一瞬の清涼感をもたらします。コークのCMだからおあつらえ向き。

青沼詩郎

参考Wikipedia>I’d Like to Teach the World to Sing (In Perfect Harmony)

参考歌詞サイト JOYSOUND>I’d Like to Teach the World to Sing (In Perfect Harmony) 

The Hillside Singersのアルバム『I’d Like to Teach the World to Sing』(1971)