愛のシャリオはどこへ
ポール・モーリアとフランク・プゥルセルによるインスト曲(1961)が原曲。それがペトゥラ・クラークの歌う『愛のシャリオ(Chariot)』(1962、フランス語の歌詞)になり、 リトル・ペギー・マーチの歌う『I Will Follow Him』(1963)になりました。さらにそれを男性歌手であるリッキー(リック)・ネルソンが実演するのに適合すべくhimの代名詞をyouに変えたのが本曲『I Will Follow You』。落ち着きのあるリックの歌声が表現するペンタトニックのメロディが心地よいです。
愛のシャリオではイントロの長い音価の描線と下行音形で表現する「シャーーーァァリオー……」という主題があります。英語のカバーなどでもこのモチーフが拾われていますが、「ah」など母音で表現されシャリオの固有名詞は拾われていません。主題のシャリオが英語版で消えてしまうのですね。大元がインスト曲だから、そもそも固有名詞の「シャリオ」の主題は副次的に導かれた具体だったのでしょうか。
タ・タータ……のリズムをリフレインするベースラインがありますがこのリズムがコーラスのメロディのリズムそのものでもあります。I love youやI’ll followやmy true loveやforeverといった普遍的な歌詞の語彙の王道がそのタ・タータのリズムに当てられたサビ(コーラス)になっており親しみやすいうえ、歌そのものがリズミカルなのでくせになります。
I Will Follow You Rick Nelson 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:Franck Pourcel、Paul Mauriat、Norman Gimbel。Rick Nelsonのアルバム『For Your Sweet Love』(1963)に収録。
Rick Nelson I Will Follow You
沈静な歌い出しが渋い。ピアノが浮かべる哀愁めいた和音の響き。ウー……と漂ってくる男声コーラスががさびしげで風流です。
右にベースとドラムが振ってあるようです。スネアがカツカツいっているのですがパサパサいってもいます。片手にブラシを持ってもう片手に木のスティックを持ってリムショットとブラシのストロークを併用しているのでしょうか。トライアングルが雄弁でグルーヴを先導します。シャワシャワとアコギのストラミングの響きも加わり、スネアとあいまって歯触りが軽いリズムが、ブルージーなリードボーカルの背中を温めます。
あたたかく質量に富むリッキーのボーカルと軽い響きのオケに空間があり、ぽつんとした情緒を醸します。ベースの音色がポーンと輪郭が立っていて、かつ音色自体はまるっこく耳あたりがやさしく気持ちが良いです。
ブレイクで和音の響きをおさえてから半音上の調に行くので、「いつのまに」感がある。マジックの名人みたいに自然です。CメージャーからD♭メージャーに曲の途中で上がっているのですね。音楽の自然さに対して、四季の流れから遊離する個人の悲哀に胸がしめつけられます。
青沼詩郎
参考歌詞サイト Genius>I Will Follow You
『I Will Follow You』を収録したRick Nelsonのアルバム『For Your Sweet Love』(1963)