まなざしの先の青春
Love hurts, Love scars, Love wounds, and mars……と、シンプル極まるメロディの音形。移動ドで読めば「レードー, レードー, レードー, ミーレー……」です。このシンプルさゆえに、エヴァリー・ブラザーズのおふたりのハーモニーが柔和に甘美に響きます。
アコギのかき鳴らしがグルーヴの基盤となり、カツっとリムショットのドラムプレイが寄り添い、ポキポキと歯ざわりの軽いエレキギター、ポヨーンと隠し味的なオルガンがサウンドの愛嬌といった耳にソフトな聴き心地です。
人生の平日をすべて消化した回顧の日曜日感。シニアのアニキアネゴたちもみんな青春を振り返れる器の広い歌ってこういうのだよね……と思わせる、熱い感情を遠くから温かい目で見守るような独特の悟りの距離感の宿る曲想が耽美です。真昼間から夢を見ているような輝度と浮遊感。副交感神経が優位になってリラックスできそうに思えます。目を閉じて音楽をじっくり聴く時間を日々のなかにわずかでも見出してみてはどうでしょう。そんなときのお供に本曲はふさわしいと思えます。
愛は人を傷つけるきっかけを生みもするかもしれない、けれど傷が癒えたり、苦痛を負った体験を経て以降のその人の強さをもたらすのもまた愛なのだと、誰もが理屈の向こう側では直感しているのでは。
Love Hurts The Everly Brothers 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:Boudleaux Bryant。The Everly Brothersのアルバム『A Date With The Everly Brothers』(1960)に収録。
The Everly Brothers Love Hurts(アルバム『A Date With The Everly Brothers』収録)を聴く
左にストラムのアコギ。右にトレモロサウンドのゆらめくエレキギターとロータリースピーカーで出したようなオルガンの音色がかさなっていて溶け合っています。2コーラス目あたりからスウィープで撫でるようなピッキングで装飾をつけたエレキギターが入ってきてサウンドにゆるやかな変化をもたらします。肩の力が抜けていてとにかく軽い聴き味。ドラムのハイハットの解像度なども非常に抑制が効いています。
軽い聴き味を支えるのはズドンと深いベースの音。コントラバスタイプの楽器だと思います。ヘッドフォンで聴くと深い。時折のストロークのアクセントにともなってオーケストラ・ヒットが鳴ったかと思うようなインパクトを感じます。たとえばビートルズやビーチボーイズも、エヴァリー B. の存在があったうえで音楽史に登場した文脈を私に強く印象づけます。
ヴァースとコーラスがあまりにもシンプルですがブリッジ、大サビみたいなのが最後のコーラスに突入する前にあって、短くシンプルな曲想ながらも1曲としての情報量を満たして思える必要十分構成だと思えます。エンディングはさっとフェード・アウト。さぁ、もう行かなきゃという気にさせます。
過去を回顧すること、未来に想いを馳せることは似ているというか、ほとんど一緒のことにすら思えてきます。
青沼詩郎
The Only Official Everly Brothers Websiteへのリンク
『Love Hurts』を収録したThe Everly Brothersのアルバム『A Date With The Everly Brothers』(1960)