古道具の妖精

複数のボーカル、ソングライターが同居する軌跡のバンド。本曲は柳原陽一郎さんによる作詞作曲です。

とんちんかんでシュールな情景を嬉々として元気いっぱい、童謡のように前後のつながりが良くシンプルで調性がきれいに響くメロディに乗せてはつらつと歌います。

麻薬のような恍惚とした陶酔感を伴う独自の光陰と色彩の感覚を、ちゃかちゃかしたマンドリンほか撥弦楽器の音色を筆頭に減衰系の楽器、歌やハーモニーやかけ声のみで表現。アコースティック音楽の可能性の開拓としても功績を表することもできそうですが、ジャンルのレッテルを貼り付けること自体がたまには陳腐な気もします。表面がつるつるしていたり、なぞのオイルやワックスでテカテカしていてそもそもたまに何かを貼り付けること自体が不可能な気もします。

イカ天登場バンド・登場曲としても認知されているでしょう。当時の年代、オゾン層の破壊は社会問題として一般にも認識されていたのではないかと思いますが、そうした社会問題に警鐘を鳴らす意図として「オゾン」のモチーフを扱う様子はないどころかむしろ弾け、躍動しています。

曲の後半には深淵な宗教観や哲学、死生観までも想起させるモチーフ「曼珠沙華」を夜風にめくられるあのこのスカートの中に登場させてしまい、浅はかなすけべ心をコミカルに描いていたのか、あるいはとらえようによっては極めて真面目で深いのか、私を混乱におとしいれ、「まんじゅしゃが」の入念なリフレインでこてんぱんに古道具屋の掘り出し物の中に私を押し込めてしまいます。聴いてるこっちが妖精になりそうです。

オゾンのダンス たま 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:柳原幼一郎。たまのシングル、アルバム『さんだる』(1990)に収録。

たま オゾンのダンス(アルバム『さんだる』収録)を聴く

あいた口がふさがらないですよ。せきにんとってくださいよ。褒め言葉です。

あたまのなかに、ゆきをかむった白い山脈を遠くに透かし見た、赤く開いた曼珠沙華の花の映像が浮かびました。山は富士山でも良いね。逆三角形です。スカートの中でしょうか。なんで爽快な山の景色がふと見えたのか考えてみると、とちゅうで「ヨーロレイヒー」というコーラスが出てきます。そのせいでしょうか。クララも立ちそう。

クラクラ来ている場合じゃないスピード感に満ちています。トントンと、キックドラムではないフロアタムの響きの腰が通常のドラムキットを導入する一般のバンドのサウンドよりも高くなります。そのぶん、ぶうん。ずうん。と伸びやかなベースの舞台まわりを邪魔するものがなく縦横無尽に低音が語彙をくりだします。

右にアコギ、左にマンドリンが開きます。マンドリンは歌メロを要所で拾って的確にトレース。右のアコギはまるでフラメンコギター。世界の舞踊音楽の心をガチャポンのトイカプセルに入れてぶんぶんと振り回して嬉しそうな幼児返りした空想上の私が拍手喝采スタンディングオベーション。

わっはっはっはーなどと石川さんのかけ声が意識の奥のほうで奇行を繰り返します。キーワードの「まんじゅしゃが」がスカートのなかに出てくる直前のあたりはなにやら「ぐっひっひっひ……」みたいな極めてヘンタイちっくなうすら笑いを浮かべています。もう私には救いようがないから勝手にどこまでも走り抜けてください。ステレオの空間すべてを多い尽くす彼のひと声「まんじゅしゃが」を合図に楽曲は最後のコーラスを経てエンディング……いや、あのこのスカートのもとめがけてまっしぐらにヘッドスライディング。

エンディングはグラウンドを滑る私たちの映像をスローモーションにするリタルダンド、どこの古道具屋で見つけたんだよという和太鼓がこんこんと逆三角形の頂にノックを響かせビシっと正気を取り戻すように終わります。まんじゅしゃが……(呆然)

青沼詩郎

参考Wikipedia>たま (バンド)さんだる

参考歌詞サイト 歌ネット>オゾンのダンス

たま公式サイト – Office K.へのリンク

『オゾンのダンス』を収録したたまのアルバム『さんだる』(1990)