円満のオノマトペ

娘をもつ親のペルソナを父親は自ら利用して面白がってネタにしているのではないかと思えてくるコミカルさを感じます。“待ってましたとばかりに君のパパが「うちの娘とはどんな関係なのかな?」”。父親目線でいうとそら来た、娘の父親としての立場を利用してのロールプレイングを楽しむ瞬間がおあつらえむきに!といった感じでしょうか。

会っていないときに意中の人とつながる主たる手段が家族と共有の「家電(いえでん)」だった昭和平成時代のティーンズラブの構図を思います。制約こそがドラマを生むのです。B面(カップリング)曲っぽさを感じる、この頃のキャリア相応のゆずの青々としてコミカルな側面の芸風・気風が強く出た楽曲のようにも思えますし、あるいはこうした楽しい面こそがゆずの本懐なのかもしれません。

娘の父親と、娘のパートナーの間の関係の築き方やその機微もいろいろあるでしょう。本当に話がこじれてしまって、娘のパートナーが認められないが故に娘とも絶縁状態になってしまう父親……みたいな笑えない話も世には実在するでしょうが、本曲は楽しめる思い出として描かれているようですので甘酸っぱく爽やかな味わいです。

主題の「ルルル」は昭和・平成時代の電話のベルがRRR…と物理的に鳴動する擬音語のようにも機能していて巧みなネーミングだと思いますし、本曲のコーラス(サビ)におけるスキャットがまさに「ルルル」です。娘の父親というペルソナを利用して圧力をかけるという儀式を経て、最終的には誰しもと円満なオノマトペ(ルルル♪)になってほしいもの。

ルルル ゆず 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:北川悠仁。ゆずのシングル『サヨナラバス』(1999 )に収録。

ゆず ルルル(シングル『サヨナラバス』収録)を聴く

ここぞの決め台詞以外はほとんどの部分、北川さんのリードに上ハモで岩沢さんの声が重なっています。ここぞの部分をハーモニーにするのでなく、ここぞの部分でハーモニーをはずして単一の質感を浮き立たせる引き算処理のボーカル演出が映えます。

左右にちゃきちゃきとアコギがひらきます。まんなか付近にはギュモ、グゥィーンといった感じのシンセベースがねっとりと粘り、プログラミングで入れた感じの軽くてきれの短いリズムトラックが鳴ります。

まんなか奥付近にはウクレレっぽい音色がきこえます。これがなかなか隠し味といいつつ響きのボディで重要です。右にひらいたボンゴのペカペカとした音色とあいまって、愛嬌と陽気な温度・彩でサウンドのキャラクターを握ります。

オープニングとエンディングには左にクゥィーカが入っていて野生の猿がわめいているみたい。これ、クウィーカの声真似でしょうか。わかりません。ウホウホキャッキャしています。電話をかけるときの主人公の興奮を表現しているみたいで絶妙です。

間奏のハーモニカはセカンドポジションでしょう。オリジナルがBキー。半音下げチューニングのギターでCキーのポジションを弾けばコピーしやすそうです。ハーモニカはBキーにおけるセカンドポジションということで、Eキーをつかえば原曲のコピーができるかと思います。

ハーモニカのリードの背景には北川さんの電話ボイスの演出。アセアセして自己紹介する様子が愛嬌に満ちていますがけんもほろろに通話を切られてしまう感じがコミカルさを助長します。ゆずというフォークデュオをやっていまして……みたいに青春時代の恋の思い出とこの曲のレコーディング当時の現実のペルソナをあえてまぜこぜにしているメタ的な視点を感じます。

オープニングは電話の呼び出し音、エンディングは通話切れの音で電話の意匠をオトの面でも表現します。この恋のゆくえは……ツー・ツー……と音信不通? それもおそらく青春の恋の多数派の結末に違いありません。

青沼詩郎

参考Wikipedia>サヨナラバス

参考歌詞サイト 歌ネット>ルルル

ゆずオフィシャルサイトへのリンク

『ルルル』を収録したゆずのシングル『サヨナラバス』(1999)