懐かしい日々の想いにもう一度

ウルフルズのセカンドアルバム、同日リリースのシングル『借金大王』のB面曲。

収録アルバムの『すっとばす』は前半が勢いやパワーのある曲が多く、後半は沁みるバラードが多い印象。本曲はアルバムの後ろ半分をリードする・象徴して思えます。

ある時期はあの娘と思いが通じていた時期もあるのかもしれません。こちらの想いと他者、あるいはコミュニティ、転じて理想や青写真の波長がいつも合致するとは限りません。

だからこそこちらは、こちらの想いを持ち続け、想いをひらいて待ち続けるのも然るべき戦略なのではないかと共感できるのが私が本曲に共感するポイントです。待ち続ける戦略は報われるとも限りません。勝算があっての待ち続ける選択ももちろん世には事例としてありうるでしょう。いくら待ったところでただの待ちぼうけかもわからない、そういうこわさもあるでしょう。その虚しさにあなたはどれだけたえられますか? その虚しさにたえられるくらいにあなたの想いは強い、本物なのですか? もしそうなら示してみせよ……そんな問いにどう取り組むのか、それがミュージシャンの鑑であり私にとってのウルフルズの魅力の一面であり、本曲においてはきらびやかなバンドのサウンドや芯のつよく明瞭でホットなトータスさんの歌声がその「取り組み」(アンサー)にあたると思うのです。

音楽的なギミックとか意匠の細部になりふりかまっていられないのっぴきならないスピードで生きていかなくちゃならない、そういう速度感、ふりかえってたちどまっていられない速度感のなかで何が自分にできるのか? 想いを原資に正面突破するのみだろう……という態度を感じるのが私にとってのウルフルズの魅力のふりだしポイントです。

あの娘に会いたい ウルフルズ 曲の名義、発表の概要

作詞:トータス松本・ウルフルケイスケ、作曲:ウルフルケイスケ。ウルフルズのシングル『借金大王』B面、アルバム『すっとばす』(1994)に収録。

ウルフルズ あの娘に会いたい(ウルフルズのアルバム『すっとばす』収録)を聴く

トータスさんの歌声が終始、孤独にあたたかくとどろきます。ハーモニーやダブルのお化粧なしのボーカルトラックがわずかにエコーする、残響するのがあとをひいて聴こえます。あの娘への想いや未練をサウンドの意匠面で表現しているみたいで、むなしくてさびしくてしょうがないねと微笑みたくなります。

きらびやかなアコギのサウンド、左寄りの定位にメインの12弦ギター。ピックの明瞭な音像でアルペジオとともにボーカルトラックがはじまるイントロ。右寄りの定位にもやがてアコギがあらわれます。エレキギターをまったくもちいないバンド編成になっています。

ほわっと中央奥から寄り添うようにシンセのサウンドが支えます。ドラムのAメロはスネアの数を1小節につき1発に抑え、2・4で刻み出した時に歩調が確かになるようにコントラストを演出します。

間奏ではじめてピアノが加わってくるのを認識。それ以降、ピアノがいてくれています。歌い出しから前半までのピアノの不在、からのピアノ合算、これくらいの小さな違いで大きく映える、演奏に誠実なアレンジです。間奏はテンホールズのハーモニカ、ストレート(楽曲と同じキーのハーモニカを用いるスタイル)の純粋な響きです。

エンディングでまたアコギ12弦のアルペジオが残って、トータスさんの最後の「あいたい」の一音の伸ばしがあの娘への未練を意匠するように長く残ります。Dメージャーの開放ポジションのギターの豊かな響きを用いて、アドナインスさせたり低音を下行させて動かしていくギターの響きを活かしてあの娘への想いの混濁と調和を表現したソングライティングです。

青沼詩郎

参考Wikipedia>借金大王すっとばす (アルバム)

参考歌詞サイト 歌ネット>あの娘に会いたい

ウルフルズ オフィシャルサイトへのリンク

『あの娘に会いたい』を収録したウルフルズのアルバム『すっとばす』(1994)