涙のテレフォン シャネルズ 唇、噛んで×4

シャネルズのキャリア中、オリジナル曲中心になった最初のオリジナルアルバムといえるかもしれません。このアルバム収録曲のうち3分の1くらいはメンバー自身による作詞や作曲が含まれているのもポイントです。彼らなりの、エンターテイメント音楽への作家としての接近、習熟を感じられるアルバムかもしれません。本曲『涙のテレフォン』は1・6・2・5のおきまりのコード進行にトリプレットのリズムのバラード。こういった「おきまり」の器に肉声の魂を添わせて彼らのスタイルは成就をみるのでしょう。リスナーの想いを投影できる器、それが音楽です。リードボーカルが田代まさしさんなのもアルバムの聴き心地に起伏をもたらします。

夏のほろ苦い心象を情景的に描写します。夏の空気・空間を歌詞に描くことで想いの不在、満たされきることのなかった何か……成就の先送り・お預け感、寂寥を私に与えます。唇かんで、かんでかんでかんで……のラインに胸いっぱい。

涙のテレフォン シャネルズ 曲の名義、発表の概要

作詞:田代マサシ、作曲:鈴木雅之。シャネルズのアルバム『Heart & Soul』(1981)に収録。

シャネルズ 涙のテレフォン(アルバム『Heart & Soul』収録)を聴く

派手な曲ではないですがすごくいいボーカルグループなのが伝わってきます。レンジが広い。ばぁう……とベースボーカルが響きトップは思い通りにならない夏の空。

カツっときれの短いサウンドのハイハット、リムショット。ドラムスが針穴糸通しの緻密なプレイ。ハイハットのダイナミクス、細かさが良いですね。輪郭があります。ピアノはずっとトリプレットのダウンストロークを並べ続けて等間隔の高速道路の蛍光板みたいです。ボーカルグループの背後から音がまわってくる遠さ。アンサンブルに前後感があって良好です。それでいて各パートの音像は明瞭です。

クリン、きゅるんと奥行きのあるエレキギターの音がチャーミング。間奏では低い音域で夏のやりのこしも悔いのない爽快感も、結果がついてきた人もそうでない人もみんな一括りにして昇華します。ほわっとオルガンが薫って、必要十分な減衰系のベーシックに空気やオレンジの色味を添えます。きらりとグロッケンがアクセント。

田代マサシさんのリードボーカル、その声質、そしてバンド全体の音像や曲調、楽曲の音楽スタイルにふとチェッカーズを思い出します。時代的にも比較的近いのではないでしょうか。

応答をもとめる電話だけが鳴っている部屋がさみしい。バンド(グループ)のハレとケがあるとすればケがわかる楽曲ともいえるかもしれません。同名異曲がズラリと並びそうな、普遍的でツボをおさえた「涙」「テレフォン」といった名詞が組み合わさった曲名ですが、サブスク検索してみるに意外とそうでもない。

蛇足ですが本アルバムの発売年月日は1981年3月21日だそうで、大滝詠一さんの傑作“ロンバケ”と同時にリリースされた作品のようです。

青沼詩郎

参考Wikipedia>Heart & Soul (シャネルズのアルバム)

参考歌詞サイト 歌ネット>涙のテレフォン

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『涙のテレフォン』を収録したシャネルズのアルバム『Heart & Soul』(1981)