悼みのスウィング

デュオの1stシングル、同名のアルバムに入っています。ブルージーでありながら、スウィングしているのが良いですね。

グループ名、曲名、ジャケットイメージなどからなんとなくしめっぽい歌謡を想像したのですがリズムとブルーノートで揺さぶる態度がナナメでトガっていてびっくりしました。精神がブルースだなと思いました。“さびたナイフのようなあの人の過去を 抱きしめて 幸せの虹を見た”……作詞の橋本淳さん、器用に多様な詞を書く方でカドのまるい歌謡っぽい作詞も多いと思うのですが本曲のフレーズは光ってるなと思います。筒美京平さんの書く曲はときに引用や文脈の継承、コラージュのあからさまな塩梅がおかしみであることもあるのですが、本曲の質感にはにじみ出る必然・自然を感じます。つなき&みどりの資源の豊かさに由来する説得力です。

愛の挽歌とのタイトルですが、挽歌は失くなったものを悼むという意味、喪失を嘆くような意味があるそうなのです。つまり愛の喪失を讃える、鎮める歌なのですね。愛を失い、新しい愛を迎えるために魂よ鎮まれ……という態度が本曲なのかもしれません。

本曲を収録したアルバムはカバーがたくさん入っています。その選曲はもちろんですし、それらをどう実演するかに実演家の方針や思想信条、尊重しているものごと、考え、心が映ると思います。本アルバムの選曲やそれらの実演の質感にはつなき&みどりの音楽への柔軟で寛容で真摯な態度がうかがえる気がします。

愛の挽歌 つなき&みどり 曲の名義、発表の概要

作詞:橋本淳、作曲・編曲:筒美京平。つなき&みどりシングル(1972)、アルバム『愛の挽歌』(1973)に収録。

つなき&みどり 愛の挽歌を聴く

右に寄ったドラム。演奏のダイナミクス、ニュアンスに富み、グルーヴの解像度と有機的なゆらめき、きらめき、ほこりくささしめっぽさに満ちた名演です。ずぅんとおぞましいベースの低音と盛大に悪巧み。

酒場のしめっぽさと暗さと愛をうしなって枯渇した乾きの同居したようなピアノの音色もまた秀逸。ミュートをつけたトランペットの音色とシンクロするときの短2度の濁した装飾が鳴る瞬間が最高。ビブラスラップがここぞのタイミングでかろやかに妖狐の出現を祝います。中低域にコシと広がりをもたらすのはトロンボーンでしょうか。鬼気迫るストリングスのダイナミクスもあの世のものが降臨しそう。

つなき&みどりのリードはユニゾンでおなじ旋律をつかずはなれずトレースする部分を中心にセクションのお尻でハーモニーに分かれます。

すべての個性が圧倒的。誰が主役でもおかしくありません。でもちゃんとつなき&みどりになっている。見たいところを見る邪魔もされないのに何が主役かもちゃんとわかる。すべてのパーツに職能が惜しげもなく注ぎ込まれ、体温の熱さが見えてくる。こんな編曲、実演、記録物、知的財産を1曲でも多く残せたらと仰ぎ見るばかりです。素晴らしい。

歌詞の含蓄もまたすばらしい。

参考歌詞サイト 歌ネット>愛の挽歌

上記リンクなどを参照しておのおの読んでみてください。行間が豊かなんです。何かを言い切るでもなく、どう転ぶも自由。運命に身を委ねる諦念と、どんな運命の潮流も泳いで渡る自負と情念がちりちりと落ち着いた炭火のように燃えています。作詞作曲編曲実演、アーティストの個性と同調した必然が2分半に凝結。あらゆる面において抜群です。

青沼詩郎

参考Wikipedia>つなき&みどり

『愛の挽歌』を収録したつなき&みどりの楽曲と同名のアルバム(1973)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『愛の挽歌(つなき&みどりの曲)悼みのスウィング【ギター弾き語り・寸評つき】』)