背中まで45分 井上陽水から沢田研二への提供曲

長いようで短い45分間。仲の深まる、あるいはプロセスをたくさん省いた心やカラダの距離=恋がカウントダウン方式で綴られます。

沢田研二さんへの提供曲。提供者の井上陽水さん自身もセルフカバーしていて『リバーサイドホテル』を収録した名盤“ライオンとペリカン”に収録されています

そんな短い時間でそんなに深まれるの?!という恋のマジカルを描いているのでしょうか。乾いているのか湿っているのかよくわからない距離感。さばさばした、あくまでワンナイトの仲なのでしょうか。45、35、25、15、5……とこれらの経過が減っていく時間とともに抽出されます。

さいごは「背中の指が静かに跳ねた」とつづります。はねる主体として指がつかわれる。指が色欲の象徴なのかもしれません。下着を外す動作を、指が静かに跳ねたとでも表現したのかと思うとエロティックですね。

本曲のサウンドは、結局なにもおきない平坦な景観が延々とシームレスに続いているみたいな印象を私にくれます。巨大な機構、構造体としての都市における個人の無力さを冷たく笑っているみたいな態度が伝わってきます。井上さんの歌の精神性を見事につかむ沢田さんの歌唱も、井上さん御本家の歌唱もそうした無常感がクールです。

背中まで45分 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:井上陽水。沢田研二のアルバム『MIS CAST』(1982)に収録、シングルカット。井上陽水のアルバム『LION & PELICAN』(1982)に収録。

沢田研二 背中まで45分を聴く

鳥がひゅんひゅん交い、ぴゅいぴゅい鳴く、海岸だかジャングルだかマングローブ界隈に建てられたホテルに私は連れていかれたのか。自然と人工物のはざまに遣っている気分です。環境音のサンプルがどれだけあるのかわからりません。スライドホイッスルなどで鳥みたいな声を演じているのか。後半にかけて、テープ素材のサンプリングのコラージュが右に左ににじみ出るみたいな演出が増えていきます。アヴァンギャルドです。中後期のビートルズ作品みたいですね。

ドドン……。ドドンッ……。タムがおおらかな等間隔で鳴りつづけます。楽曲の後半までスネアのオープンショットはおあずけ。このスネアが入ってきて、2人の仲もだんだんキャイキャイと色味が深まっていくみたいにダイナミズムが増していきます。演出された作為。イミテーションのなかに身を投じて、踊りませんか?とヒトの経済活動に誘われるままにでは踊りましょうかと応じるように2人はファッションのように恋をする。そんな俯瞰と冷笑の45分を楽曲の5〜6分の実尺に抽出。額縁のそとまで延々と同じ景色がつづく諦観です。

青沼詩郎

井上陽水 背中まで45分(『LOON & PELICAN』収録)

参考Wikipedia>背中まで45分MIS CASTLION & PELICAN

参考歌詞サイト 歌ネット>背中まで45分

沢田研二オフィシャルへのリンク

井上陽水 オフィシャルサイト [ Yosui Inoue Official Site ]へのリンク

沢田研二のアルバム『MIS CAST』(1982)

井上陽水のアルバム『LION & PELICAN』(1982)