讃えあう出自
1965〜1969年にかけて永六輔さんによる作詞、いずみたくさんによる作曲により1都1道2府43県日本全国を主題に曲を書きデューク・エイセスが歌う「にほんのうたシリーズ」のなかの東京を主題にした1曲。
いい湯だな、女ひとりなどもこのシリーズから出た名曲です。
東京のアイデンティティとはなんでしょう。通常、ある主題を敷いたとき、そこに見出す資源、魅力などを取り出すのがソングライティングの着眼だとも思うのですが、ないものを見出すのもまたブルース(哀愁)でしょう。
青い海。深い森。土と空。東京にないものを恋しく侘しく思う歌詞。東京にもこれらはあります。小笠原諸島や伊豆大島なんかも論じればもちろんですし日本列島本島側の東京にだってあるいは……
東京はいろんな故郷を持った人たちが志を胸につどう都市。それらの人々のコミュニケーション、お互いの背景・出自を交歓し讃えあうつながり、関係形成に伴う体温のあたたかみこそが本曲の本質なのかもしれません。そんなリゾートチックな報われた、浄化された雰囲気を映してなのか、なんだかハリー・ベラフォンテのうたった「さらばジャマイカ」などの楽曲の気質を思い出す作風です。こういった特徴をもつ音楽群一帯……カリプソとでも呼ぶでしょうか、どうだったか。
そんな快い風の通る音楽性のオケに、デューク・エイセスによる、オペラとも民謡とも大衆娯楽音楽(ポップソング)とも異なるような朗々とした歌唱が乗って「東京」の普遍を私にとどけてくれます。
ちなみになぜか東京を主題にしたにほんのうたシリーズは本曲ともう1曲『明日の故郷』が存在するようです。北海道も複数曲ある。数年の幅を持ってやっているうちに、曲ができてしまったり必要になったりしたのでしょうか。シングルを出す際のAB面の必要性などから生じたのか、など動機の想像がふくらみます。
君の故郷は デューク・エイセス 曲の名義、発表の概要
作詞:永六輔、作曲:いずみたく。左記の二人が1都1道2府43県日本全国を主題に曲を書きデューク・エイセスが歌う「にほんのうたシリーズ」のなかの東京を主題にした1曲。デューク・エイセスのシングル(1966)、アルバム『にほんのうた Vol.1』(1966)に収録。
デューク・エイセス 君の故郷は(『にほんのうた 第1集』収録)を聴く
ときに歌声が器楽的に完璧すぎて意味のある言語で歌われているのを忘れます。納豆の糸かよというくらいに完璧なまでの伸びを見せるハーモニー。ノンビブラートでまっすぐに朽ちない線を引く声に、ビブラートのかかった声部が同居していたりするのも東京のいろんなお国の人の集合した特徴の表現なのかもしれません。リードボーカルの子音と母音の扱いなども声楽的な習熟を感じさせる完璧なものです。朗々としています。ゆえにこれが言語であるのを忘れるのです。言語として標準のもの、共通、ワールドスタンダードはある意味存在しない。すべてが優勝で一等賞であり、言語を超越する歌唱です。
左にジャンジャカジャンジャン、ジャンジャンジャン……とかろやかなリズムのナイロン系ギター。右にもぽろんとぱらんみずみずしいナイロン系のギターでこちらは役割がオブリガードです。右にはアコースティックのベースも定位していて、まんなかにデューク・エイセスのリードとハーモニーがいる格好。楽器数はたった3つ。あとは声です。慎ましくも豊か。声はそれだけで己の背景を総合するもの。彼らの豊かな歌唱スタイルも、そうやってたくさんの「故郷」が混じり背負い築かれたものなのかもしれません。
青沼詩郎
参考Wikipedia>「にほんのうた」シリーズ、デューク・エイセス
『君の故郷は』を収録した『にほんのうた(1)』(1966)
シリーズ全曲をおさめた『プレミアム・ツイン・ベスト にほんのうた~デューク・エイセス、ふるさとを歌う – デュークエイセス』(2012)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『君の故郷は(デューク・エイセスの曲)讃えあう出自【ウクレレ弾き語り・寸評つき】』)