哀≒愛 すべての心の同居者の葛藤
機動戦士ガンダムのテレビバージョン16〜31話前半までを再編集したものが、本曲『哀 戦士』を主題歌とした劇場版『機動戦士ガンダムⅡ 哀・戦士編』だそうです。作詞は富野由悠季さんの変名。作曲と編曲と実演が井上大輔さん。ジャッキー吉川とブルー・コメッツのメンバーとしてボーカル、フルート、サックスなどを担当された方でもあります。
現実の戦争は絶対にご免ですが、物語としてのガンダムのなかで戦う多様なキャラクターたちは、現実の私たちのなかにすむ多様な人格の象徴だと思います。誰しものなかに、対立する考え方が存在したり、惹かれあったり共感しあったりする人格が同居しているのです。物語としてのガンダムのなかで戦ったり恋愛したり友好したりする色鮮やかなキャラクターたちは、すべての鑑賞者の心の写し鏡だと思います。
そうしたキャラクターたちに対して、物語のなかでは生死や勝敗が烙印されたりすることがままあるでしょう。その無情・非情・哀れみを朗々と高らかに表現しているのが本曲の最たる魅力ではないでしょうか。勝敗の結果が出たようにみえてもそれは始まり。哀≒愛の構図が立ちます。
哀 戦士 井上大輔 曲の名義、発表の概要
作詞:井荻麟、作曲:井上大輔。劇場版『機動戦士ガンダムⅡ 哀・戦士編』(1981)主題歌。井上大輔のシングル。
井上大輔 哀 戦士を聴く
自分の弱い心こそが戦う相手なんだという気になります。ロマンほとばしるサウンド。演奏が躍動します。機動戦士ガンダムが宙を交い滑る軌道が見える音楽。たとえばエレキギターとサックスのギュイーンと伸びるロングトーンがそれです。ストリングスがひぃーんと伸びて、「拾う骨も……」と歌詞にうたわれるところで伸びたストリングスをオルガンが受け取る。骨はこっちが拾う。お前はいけ!そんなチームワークを思い浮かべます。
ピアノの伴奏がひとりで弾き語りでも成立させるくらいにスポットライトを独占するAセクション。ずんずんとピアノのベースラインがオクターブの梯子でばくばくする心臓の鼓動を表現するかのよう。
ぎゅいーんとサックスやエレキギターが入ってバンドのボルテージがアップし、サビでは左右に定位の開いた井上さんの複数のボーカルトラックが戦う男たちの群像とその個々の筋力を象徴するようです。カラオケ屋で団円を組んでハモって絶唱したら楽しそう。
Cメージャー系の本編、間奏で同主短調の平行調、E♭系にいってもどる。エンディングでA♭→B♭→Cと戦いの夜明けに虹を見る気分。
青沼詩郎
標題曲を収録した『哀 戦士』オリジナルサウンドトラック(再発売あるいは再編集盤なのか?アニメの放送・劇場公開から時をへて1999年に出ている様子)
井上大輔のシングル
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『哀 戦士(井上大輔の曲)哀≒愛 すべての心の同居者の葛藤【ピアノ弾き語り・寸評つき】』)