同じメロディくりかえす冬空

リバイバルヒットが記憶に新しいと思えば2020年とのことで光陰矢の如し。季節がこっくりと暮れ一年が終わる、あるいはその年が朝を迎える冬のイメージと真夜中の主題の観念が重なるのが本曲のおしゃれさの本質ではないでしょうか。

あらためて聴くに、松原さんの歌唱はブルージーあるいは歌謡曲のようなウェットさ、情感・情緒の強さが滲み出ていて曲のおしゃれさとの対比で楽曲と歌手お互いのアイデンティティを際立て合っています。彼女の歌唱にみるリズムの絶妙な前後のゆらし方も達者です。

R&Bっぽい黒っぽいイントロ。かっちりして明瞭な80年代サウンドの扉を叩いてもいます。イントロのリフがTOTOの『Africa』っぽい。どちらが先かと思えばAfricaは1982年でした。真夜中のドアの方が先なのですね。

“淋しさまぎらわして 置いたレコードの針 同じメロディ繰り返していた”(『真夜中のドア』より、作詞:三浦徳子)の歌詞フレーズが2020年代の世におけるミュージック・ラバーたちのアナログ趣味と波長がピンと合い、熱量をより高める一因になったのじゃないかなどとも察します。おなじメロディをくりかえすように、歴史を再演する人の性を物語ります。

善行もあやまちも、似たことが古今東西の時空で輪廻転生しながらわたしたちの心は冬空みたいにより高く天に向かって伸びていくのではないでしょうか。

真夜中のドア Stay With Me 松原みき 曲の名義、発表の概要

作詞:三浦徳子、作曲・編曲:林哲司。松原みきのシングル(1979)、アルバム『POCKET PARK』(1980)に収録。

松原みき 真夜中のドア Stay With Me(アルバム『POCKET PARK』2008 Remastered収録)を聴く

伸びた音符の途中からメロメロにヴィブラートが振幅する松原さんの歌唱が無敵。この情感たっぷりの歌をささえるのは病的なまでにピタっとしたタイトなベーシックリズムセクション。ギターなどもはやピックが衝突したその瞬間にきつくミュートしていてもはやコード楽器というよりパーカッションです。ベースの音の切り方も最大限に短い。ドラムが1拍目などの表を強調しつつ、裏裏で次の拍の表を強調する16分割の解像度。ハイハットの輪郭のキレもまるでスーパードライで冬の澄み渡る空の高みに浮かんでいるみたいに聞こえます。

ウェットで空間に轟く松原さんの歌唱と対照的に、バックグラウンドボーカルが左右に開き、近くてふくよかで豊かな質感です。

もや〜んとフェイズがかって冬の明け方みたいなエレピのサウンド病的なまでにタイトなベーシックリズムのうえでのびのびとあくびをするように対照的に横たわります。

ミュートの効いたトランペットのカウンターも筋肉質です。間奏はサックス。転調をはさむことでサックスが活かしやすいキーを意識しているのでしょうか。Fメージャーを主調に、間奏ではA♭メージャーに行って間奏のおわりとともに元のFメージャーに回帰。

右のエレキはワウがかかっている瞬間があります。エンディングのコーラスのくりかえしにはやがてエレキのリードプレイも乗ってきます。

ピタっとしたリズムのキレと、エレピののびのびとした音価やわずかにくずしたアルペジオ、歌唱のメロメロでカンタービレな質感・アプローチの対比。風通しがよくメリハリがあるのにサウンドは豊かでひとつひとつに筋力があり輪郭が引き締まっています。作詞作曲編曲実演のすべてが機能し合ってリバイバルヒットも必然のクオリティ。あなたが一緒にいてくれればつらい冬を何度でも乗り越えられそう。

青沼詩郎

参考Wikipedia>真夜中のドア〜Stay With Me、POCKET PARK

参考歌詞サイト 歌ネット>真夜中のドア Stay With Me

Miki Matsubara – Officialへのリンク Spotifyで『真夜中のドア』の再生回数が5億回を突破していると報告されているオフィシャルサイト。未知の扉を開きつづけます。

『真夜中のドア Stay With Me』を収録した『POCKET PARK』(1980)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『真夜中のドア Stay With Me(松原みきの曲)同じメロディくりかえす冬空【ピアノ弾き語り・寸評つき】』)