鉄の意志でたぐる飛距離
まずアフリカに行きたいと思うのすごいです。世界にひらいた心の眼の持ち主の言葉。
リズムがタイトですが訛ってもいるようで土着的。コンガとハイハット&スネアのリムと、日本の商業音楽の録音スタジオにありそうな楽器でアフリカをイメージさせるリズムパターンが発明で功績。

ドラマー:林立夫、パーカッション:斉藤ノブ、ベース:細野晴臣、ギター:鈴木茂、鍵盤ものと編曲が松任谷正隆さん。
雲をつかむような独特の浮遊感。調性も何もないような摩訶不思議さを覚えますがよく聴くとGマイナーキー、フラット2つ系の秩序があります。AセクションでいきなりGm→Amに進行するのでここで調性外のナチュラルEが構成音に含まれ浮遊感が出るのだと思います。
エンディングはフォーリズムが残って飛行機のサンプル音がかむさり、一緒に遠ざかっていきます。本曲を収録したアルバム『COBALT HOUR』の1曲目にして表題曲『COBALT HOUR』の冒頭の飛行機の音にそのまま接続する、あたまとおしりがつながる意匠になったアルバム。創意とアイデンティティが際立ちます。
コーラスの「アイアン・バタフライ」のア行の響き半拍小節線を飛び出し食って出て、アフリカへ行きたい!との主題の想いの勢いが楽理的にも表明されています。コンパクトな楽曲サイズですが音楽的飛距離に富むセンスの高い着こなしと応用がユーミン(愛称で失礼します)ならびに参加ミュージシャン勢の器量を物語ります。
アフリカへ行きたい 荒井由実 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:荒井由実。荒井由実のアルバム『COBALT HOUR』(1975)に収録。
荒井由実 アフリカへ行きたい(アルバム『COBALT HOUR』収録)を聴く
担当直入にものを言うようなきっぱり感がすごい。アァーとバックグラウンドボーカルの描線が刺さります。これが銀色のセスナの音意匠なのでしょう。小型機のようにくるっと翻ってはまっすぐに伸び、刺さる。現実の旅客機ではアクロバットな飛行はないでしょうけれど。
きっぱりした音の切り方のベースが暗示する空間的な余白にピアノの響きがじんじんとにじみます。ギターも出所の足し引きにメリハリがあります。ボトルネック奏法なのか、キュイーンの滑るポルタメントですが細かいところは細かい。技巧が高いです。
ベースのピタピタきびきびしたフィンガリングとコンビするドラムのライドシンバルが高層圏の雨霰のごとくふりそそぎます。サンバのようなパターンを基調にしているように思えますが本曲のコーラスの「Iron butterfly」のフレーズに合わせてベーシックリズムが細かく移勢。腕利きのメンバーのみに許されるきりもみ飛行みたいです。
コンパクトな楽想に思えてそれは構成や演奏がきっぱりしている印象によるのでしょう、バフーんと勇壮な低域の金管はトロンボーンなどでしょうか、ヴァイオリン族も倍音がすっきりしたフォーリズムがつくる空間にのびのびと棚雲をなびかせます。まっしぐらな印象を残しますがサウンドスケープは実に豊か、アフリカへの空路でめまぐるしく、かつ地続きに変容していく地平線の彩を思わせます。この曲を聴くことが私にとってのアフリカ旅行です。達者なエンディングのリズムのリフレインにかかるフェード・アウトがうらめしい、このままずっとそのビートに絡みついていたいと思います。
青沼詩郎
Yumi Matsutoya Official Site 松任谷由実 オフィシャルサイトへのリンク HOME > Discography > オリジナルアルバム > COBALT HOUR
『アフリカへ行きたい』を収録した荒井由実のアルバム『COBALT HOUR』(1975)
Take Me To Africa