青い魚群
サブスクにコンピレーション『「冬と夏の物語」坂田晃一の世界』に収録されていて私はこの曲を見つけたのですが、日本テレビドラマ『さよなら・今日(こんにち)は』(1973.10-1974.3)主題歌。当時を知る人はこのドラマありこの曲ありといった印象なのかもしれません。
愛の伝説の歌詞は容易に検索ヒットするのですが、この曲の実演家でバンドの「まがじん」についての情報がやたら少ないです。検索AIにいくつかの語句を挙げながら訊いてみて、やっといくつかの個人の方のブログや中古レコード屋さんのページを手がかりにわかったのは、吉田拓郎さんのバックバンドなどのキャリアもお持ちのドラマー:島村英二さんがそのキャリアにおいて所属していたバンドが“まがじん”だとわかりました。まがじんの活動キャリアはあまり長くなく作品数も限られるようです。セッションドラマーとしての島村さんの活動歴はたとえば吉田拓郎さんの王様達のハイキング in BUDOKANの演奏メンバーとして参加しているのが私の目を引きます。
『愛の伝説』の話にもどると、いかにも作曲家さんが五線紙のうえで制作したかのような、メカニカルなボーカルメロディと知見豊かな和声展開が特徴です。ヴァースのボーカルメロディは2小節くらいのモチーフを反芻し、異なる音高を旅人のように渡って移ろっていきます。単に短調であることもふまえて、この曲が旅情・風情をともなう一因かもしれません。やがてセクションが変わるにつれ、ボーカルの音価が大きくなったりキュっと内臓が縮こまる和声をアクセントにしたりしつつも、あくまで清らかに流れていきます。非常に作曲家的かつ技巧的なアプローチです。リスナーとして聴いていると極めて流麗で儚い印象なのですが、歌唱・演奏に挑戦してみると難しい曲だと感じます。旋律が有する理性的な音程の移ろい、非和声音の和声音への解決が織りなす緊張感が要で、それらの音程一つひとつの正確さが波状に押し寄せ感情を揺さぶる楽曲だからです。
「青ざめた車が泳いでゆくよ」、「ほほえみを忘れたさかなたちの群れが地下鉄の入り口 ながれてゆくよ」など、人々の動きを冷徹に距離を持って眺る比喩が光る歌詞もまた風情に満ちています。
愛の伝説 まがじん 曲の名義、発表の概要
作詞:万里村ゆき子、作曲:坂田晃一。まがじんのシングル(1973)、アルバム『まがじん Vol.1』(1974)に収録。日本テレビドラマ『さよなら・今日(こんにち)は』(1973.10-1974.3)主題歌。
まがじん 愛の伝説(配信コンピ『「冬と夏の物語」坂田晃一の世界』収録)を聴く
アコギのストラミング、ハイハット、オルガンなどがピコっと短く4分音符を連ねて快調なミドルテンポ。ベースのバランスが小さく感じます。左にヴァイオリン族、右にフルート族が飛翔していきます。
強烈なまでにソフトな歌唱。ふぅっとため息とともに自然に声帯がふるえたみたいな歌唱が儚く色気があります。サビでダブルになるところも感情を昂らせエネルギーのあるサウンドになっています。
オケ、バンドの音を基調にソフトなトランペットみたいな音色のミュージカルシンセサイザーの音が融合折衷。人工物……都市の背景を思わせます。
セクションにあわせて各パートが息を合わせてビートの重み・質感を変えていきます。
エンディングのフレーズ「信じてみたい 確かな愛に めぐり逢えるあしたを」の果てにピカルティ1度でメージャーになって終止するところに、未来(あした)に寄せる希望の想いが映り込みます。
青沼詩郎
『愛の伝説』を収録したまがじんのアルバム『まがじん Vol.1』(1974)
『愛の伝説』EP