地元で音楽やってる人

音楽をやっている人はそこらにいっぱいいます。住んでいるのです。そうした人たちが、渋谷とか新宿とか吉祥寺とか立川とかどこか知りませんが(この羅列もふんだんに私の偏見を含んだものですし)ライブハウスがありそうな街に行ってライブ活動をやったりやらなかったりしているわけですね。

(音楽をやっていて、)あなたの近くに住んでいる人はきっといっぱいいる。でも、そういう人たちどうしが、その住んでいる街のなかでつながることって、案外貴重でありがたいことかもしれません。

おなじ町に住んでいても、バラバラのままであることがきっと多いのです。

そうした人どうしが、住んでいるその町、そのフィールドで直接つながれたらそれは幸いではないでしょうか。もちろん、異なる町に住んでいる者どうしが、音楽の接点があるからヨソユキの街で会えるありがたさや幸せもあるでしょうけれど。

最近わたしは、自分の住んでいる町におなじように住んでいる音楽を好きな人、音楽をやっている人どうしがつながるような種まき活動を一役担うなどしています。そうしたなかで、その人たちが好きな音楽や接したことのある音楽を教えてもらうのです。私になかったものの種が私のなかに巻かれるわけです。

先日、地元のライブハウスのオープンマイクイベントに遊びにいったとき、そうした種まき活動のかたわらでお知り合いになれた地元の“音楽同志”が演奏していたのがスピッツ『僕のギター』でした。これまた素敵な種を私の胸に授かったものです。

僕のギター スピッツ

作詞・作曲:草野正宗、編曲:亀田誠治、スピッツ。スピッツのアルバム『さざなみCD』(2007)に収録。

スピッツ 僕のギターを聴く

アコギの倍音の妖精が漂いまくってるみたいなリッチさ。神々しいです。イントロのアコギに絡むエレキギター。フィードバックしているでしょうか。いや、何気ないけど歪み深いなっ!と唸る私。

路上で街灯のたよりないあかりをかたわらに弾き語っているみたいな……夜の空気のふわふわ感を猛烈に覚えるのです。残響のせいでしょうか。音が良すぎる。どうなってるのコレ、と思います。

アコギのストロークがスポットをあひているときはこんなにもリッチなのに、バンドがインするとちゃんと全体に焦点が合うのです。オートメーションを書いているのでしょうか? 曲の進行に合わせた、リハーサルマークごとの音の景色の構成が絶妙すぎます。

ゆったりと伸びやかにとどろくドラムスとベース。かと思えば、急にベースが猛烈に16分割の同音連打の猛プッシュをはじめるなど、スピッツのバンドの全体と細部のコントラストの見所の豊かさときたら健在どころかますます格を上げるばかり。それでこのキラキラの美麗な楽曲、声。もう最強説一強。

シンプルな部品で構成する、ギターのようにどこへでも持って行きたくなるまとまりの良い楽曲ですが転調が面白いですね。G♭(F♯)キーかとおもえば、Ⅴの和音(D♭)からそのまま全音上げて、E♭キーの主和音でサビに突入するのです。これで清涼感と地平を転換する演出が抜群。G♭キーとE♭キーは6度の関係というか3度の関係というか。小室哲哉さんの楽曲とか、織田哲郎さんの楽曲とかを追っているとこれくらいの距離感の転調にしばしば出会う気がします。つまりポップソングとしてこういう息吹を取り入れることがリスナーの心に有効に作用しうることは、さざなみのように連綿と証明され続けているのです(いいすぎ?)。いや、抜群。

あらゆるミュージシャンの心をくすぐる「僕のギター」というテーマ設定も憎い。同時に、草野さんやスピッツ自身のことでもあるでしょう。

しかしそれでいて、パーソナルヒストリーを語るのに傾倒しません。ちゃんと宇宙の風に乗せて連れていってくれる壮大でタイムレスな曲想です。もうスピッツ印といっていいでしょう。この外さないクオリティでオトを生み出し続けるなんて奇跡です。どうかしてます。私がどうかしてる? こういう身の丈にあった近くへのピントあわせから、観念と宇宙や数学の真理にブワっと巻き込むような振れ幅がもう麻薬的。キマってしまいます。

間奏のワウギター、良いですね。弾き語りのアコースティックな質感と、このラウドな叫び上げるエレキギターを同居させる。つながっているのが奇跡に思います。このため息もなんなら宇宙に連れてってください。

はなはだ余談なのですが、サビの結びのフレーズ“祈ってる”“刻んでる”のボーカルメロディが、杉本竜一さん作詞作曲『Believe』の“I believe in future 信じてる”のところと似ています。『僕のギター』を聴いて「アレに似ている!」と猛烈に感じつつしばらくなんの曲だったかを思い出せなかったのですがスッキリしました。『Believe』は合唱曲の定番で私の記憶にすでに居場所を確保していますが、『僕のギター』もまたお気に入りとして私の心に座布団を敷いたところです。どちらも素敵。

青沼詩郎

参考Wikipedia>さざなみCD

参考歌詞サイト 歌ネット>僕のギター

スピッツ 公式サイトへのリンク

『僕のギター』を収録したスピッツのアルバム『さざなみCD』(2007)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『僕のギター(スピッツの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)