映像
映画『ブルー・ハワイ』劇中シーンか
小さな箱を開きながら手渡します。オルゴールでしょうか。エルヴィスの口が歌詞にあわせて動きます。曲が劇中で用いられた映画『ブルー・ハワイ』でしょうか。
デザインが目立つ椅子にひとまわり年長に見える婦人がかけており、エルヴィスがオルゴールを渡したのは彼女。椅子と婦人をはさんで逆側に若い女性が立っています。劇中のエルヴィスの相手役でしょうか。
エルヴィスがレイ(首飾り)を婦人にかけてやり、黒フェードする映像。アロハシャツを着たり首飾りをしたり、多くの聴衆も画面に映っていました。どんな物語のどんなシーンだったのか……映画未視聴なので想像します。
曲のタイトルの和訳が「好きにならずにいられない」。婦人は女性の母親(もしくは祖母?)で、「僕が彼女を幸せにするから、どうぞ心をゆだねてお任せください」といった意思をエルヴィス扮する主人公が示すシーンだった……と想像(全然違う?)。
奇抜なデザインの椅子の巨大な背もたれの上で、半分隠すように手を合わせたり指を動かしたりする2人。ヘタな濡れ場よりよっぽど欲情を誘います。
レイをかけてやりつつ黒フェードに隠れるときに婦人の頬にくちづけする(唇を寄せている)エルヴィス。親密さを表現します。
ハワイ・ホノルルでライブ
テンポがはやい! ピアノのアルペジオが軽快です。ストリングスも揺れる花のようにかろやか。
歩きながら微笑みながら、客席へせり出したステージに立ち、腰をかがめて数度ファンサービス。ファンからあがる歓声、伸びる手。ヒラッヒラでキラキラの白い衣装です。
Bメロのところはフェイクしたのかメロディをやや変えて歌っています。どこからか差し出されたレイを首にかけたエルヴィス。
ひょうひょうとファンサービスしながらパフォーマンスしていたかと思えば、エンディングで一気に熱を帯びたハイトーンボイス。
両手の人差し指を左右に向けて突き出すとともにドラムスがシンバルを決めます。ビシッ!! 「カッコイイ……」に尽きる語彙アホになってしまう私。エルヴィスのみに許されたパフォーマンスに思えます。
数多の日本人歌手が彼から受けたであろう影響、得たであろう構想が私の頭のなかにめぐります。私の記憶の中の色んな歌手の身振りや曲想、衣装などのヴィジュアルにそっくり。特定の1人の歌手じゃなく、多くのフォロワーのネタ元にされているのを思います。
それも私は受け入れますし、ご本家の鑑賞を重ねることで、エルヴィス・フォロワーの表現をこれまでよりさらに快く思える気がします。
本当にカッコイイ、エルヴィス・プレスリー。わかるよ、最高だよね……!と、これまで以上にフォロワー同士で共感を高められそうです。
リンクした映像のライブはホノルルでおこなわれたもののようです。この歌がつかわれた映画『ブルー・ハワイ』の撮影地あるいは物語の舞台に凱旋したようなものですね。この熱気、歓迎、そしてレイの演出などが腑に落ちます。
’68 黒い皮の衣装に身を包んで
ストリングスのイントロの雰囲気がだいぶオリジナルと違います。私の記憶の中のエルヴィスは白のイメージでしたが一転、黒のライダースーツのような皮に身を包みます。
甘美な曲想とのギャップが良い対比です。エンディングのラインを歌うときには力のこもった体の動きをみせます。
足を肩幅以上に開き、右腕を背後から右斜め上に向かって強く機敏に振り動かします。そのままその腕をゆっくりと前方に動かし、さらに音楽に合わせて宙を舞わせ空を切る。「Ah!」と咆哮です。「Thank you」「Thank you」「Ho!」。熱くやりきり、後味は軽やか。
曲についての概要など
エルヴィス・プレスリー(Elvis Presley)のシングル(1961)。作詞・作曲:ジョージ・デヴィッド(George David Weiss)、ヒューゴ・ペレッティ(Hugo Peretti)、ルイージ・クレイトアー(Luigi Creatore)。エルヴィス・プレスリー主演映画『ブルー・ハワイ』劇中歌。
『Can’t Help Falling In Love』を聴く
右にズゥゥンと深く響くベース。フレットレスのアコースティック(コントラバス型)の楽器でしょうか。
左に複数の男声のコーラス。聖歌隊のような発声です。
右に乾いたトーンでスライド・ギター。ハワイアンやサーフの定番サウンドですが、音像が近くてロックっぽい。ビートルズのギターの音作りを思い出します。よくあるビーチ・サウンドだったらもっと湿っぽい残響のある音にしてしまうのではないでしょうか。というか1961という発表年を思うと、現代のように手軽に豊潤な残響づけや音作りをする機材、ましてやエフェクターはなかったかもしれません。
右側にチロリキラリとグロッケン・シュピールのような可愛いブライトなトーンが輝きを添えます。
ベーシック・リズムにトリプレットのダウン・ストロークのウクレレ。ちょっと右寄りの定位でしょうか。コンコンコンコンコンコン……とかろやかに和音とリズムを出しています。ナイロン弦に爪がヒットしたようなチャッという質感のアタック音か。
終始するのはピアノの上行と下行を対にした音形のアルペジオ。部屋の残響を多く含んだ録れ音です。オフマイクで録音したのでしょうね。縦型ピアノっぽい音色ですがどうでしょうか。酒場のホールのような音響環境を感じます。
右にはリゾート地の海辺を想起させるスライド・ギターやウクレレ。左には礼拝堂をおもわせる聖歌隊。まんなか付近のメインボーカルとピアノは木造の酒場を思わせる編成と音響。なんだか、定位ごとに異色なアイコンがまとまって配置されている気がして……今まで気づかなかった面白さがみえてきました。私の妄想ですが。
雑感
BメロでⅢm調になるのが好きです。「え、なになに?! どうしたの?!」と思わせる展開です。副次調のコードを経由してまた主調のニ長調に戻ってきます。
私はこの曲に、高校生の頃Hi-STANDARDの演奏でふれました。もっとハイテンションでボーカルのポジションも高いパフォーマンスでした。エルヴィスのオリジナルはハイスタよりも1オクターブ……は言い過ぎですが7度低い。しっとりと嘆きかけるように甘く表現しています。
エルヴィスの歌声は強めにビブラートしています。振幅は密に、確固たる揺れ。照りがあって雄々しい声質をしていますが、聴き疲れないのはこのためかもしれません。ビブラートはコッテリさせるものではなく、実はアッサリさせるためのものなのだ!という気づきをエルヴィスのボーカリゼーションはくれます。
ライブ映像のほうでは雄々しい印象を遺憾無く出した表現もしていますね。コンサート全体の中での前後の流れの影響もありそうです。コンサートのエンディング付近だと熱も入りがちになったりするかもしれません。彼のコンサートに行ったことも今後行けることもなく、想像ですが……。
歌の内容はラブソング。メロディラインも甘美です。歌い出しは「レーラーレー……」と5度の華麗な跳躍。そこから甘美な順次進行の連続です。
途中、Aメロ折り返しの前に5度跳躍の下行をしますがこれは実はここから7度上まで順次進行でのぼりつめるための余白とりです。この余白とりによって、大胆な振れ幅でどこまでいくの?!という甘美な順次進行の上行が実現するのです。
のぼる前に下げておくことで、ボーカルのポジションもヒステリックにならずに高揚を演出できます。非常に計算されたメロディなのです。……計算してないって? じゃぁ天然の人たらしだねッッッ!!(謎のノリ)。なりたいなぁ、天然の人たらし……(謎の自省)。
青沼詩郎
『Can’t Help Falling In Love』を収録したElvis Presleyの『Blue Hawaii』(1961)。同名映画のサウンドトラック。
Hi-STANDARDによるカバー『Can’t Help Falling In Love』を収録した『LOVE IS A BATTLEFIELD』(2000)。『はじめてのチュウ』のカバー『My First Kiss』も収録。
ハイスタの『Can’t Help Falling In Love』は「元気!」なイメージでしたが、久しぶりに聴き、ストリングスのメロウで麗しいイントロがついているのを改めて思い出しました。ハイスタを一番よく聴いた同時期によく聴いていた、オアシスのサウンドも思い出します。『Whatever』などのそれです。
ハイスタの『Can’t Help Falling In Love』は曲中もストリングスが和声の厚みや対旋律を演出しています。横山健のギターは絞った音数によるハーモニックなプレイが魅力。両者(ストリングスと横山健のギタープレイ)の相性いいな! と高校生の頃には気づかなかったことを思いました。
余談 あの青い飲み物について
LeaLea Webより『大人がくつろげるホテルのバー「タパ・バー」』
カクテルのブルーハワイ。かき氷の定番フレーバーとしても有名ですね。元々、映画『ブルー・ハワイ』のロケ地のホテルのバーテンさんが(映画とは関係なく、それより前に)考案したカクテルなんだそう。本家本場のブルー・ハワイ……行ってみたい、飲んでみたい。
ご笑覧ください 拙演