映像

盛装で

ピアノのイントロ。蝶ネクタイに紺タキシード?のお兄さん。ボーカルのカレンは白いドレスです。手に持ったマイクロフォンの柄が細く長いのが気になります。歌の節目でマイクの向きをくるっと機敏に変えてみせます。コーラスやボーカルダブリングが確実に入ってきます。録音の音源に、コンサート時の映像を重ねたものでしょうか? お兄さんが繰る鍵盤は名器・ウーリッツァーですね。楽器のロゴマークがこちらに向いてみえるカットがあります。舞台セットの鏡のようなものがメンバーの後背を写すヒキの画で終わる映像。

ライブ音源・映像

高らかに割れんばかりの歓声のなかはじまる演奏。ボーカルのカレンのみじかい前髪と長い髪、衣装に個性があります。こういうスタイルやファッションをなんと形容としていいのか語彙を持たない私です。すらっとしたピンクのスカート。間奏の管楽器のトーンがパリっとしていて独特です。この楽器はなんでしょう? ソブラノサックス? みためはクラリネットそっくりです。音をブレイクさせる瞬間にこぶしをクっと握るお兄さんの挙動が可愛げあり。

スタジオライブ風

ドラムスについて歌うカレン。そう、この人はこんな楽器も演奏できるのですね。ストロークの手首づかいが独特です。かなりスナップが効いている感じがします。大御所ドラマーのような芯のあるショット。お兄さんや演奏メンバーの髪型がきになります。長めのマッシュというかなんというのか。日本のミュージシャンもこの頃わりとこういう髪型をしていた人がいた……かも? カレンのスティックのショットはややナナメから打面を射ている感じがします。こちらもスタジオライブのような映像にオリジナルの録音をかぶせたっぽい映像ですね。

曲について

カーペンターズ(Carpenters)のシングル、アルバム『遙かなる影(Close to You)』(1970)に収録。作詞:ハル・デヴィッド(Hal David)、作曲:バート・バカラック(Burt Bacharach)。

カーペンターズ『(They Long to Be) Close to You』を聴く

スーッというヒス・ノイズ。左にピアノのダウン・ストローク。右にコワンと鍵盤打楽器。Aメロひとまわしでドラムスやストリングスが入ってきます。ドラムスのキックは右に定位。ハイハットが真ん中付近? ブラスがオブリガード。タムタムのフィルイン。左のほうにカレンの声でコーラスがきこえます。ピアノは左にいたと思いましたがいつのまに右に? 数トラックに分けて録音したのでしょうか。左のほうに古楽器……チェンバロのような音もきこえます。金管の間奏。ハープがトゥルルリンとグリッサンド。ちょっと私の記憶のチェンバロのトーンよりやさしめでマイルドな音。違う楽器かしら。エンディングは右に左に厚いコーラスが入ってきます。男声・女声の成層。一度音楽が息をひそめ、フェルマータ。鍵盤がわずかに残りの息を吐き切るか……とい思いきやふたたび盛り返し、エンディングはコンティニュー。影はいつまでも私とともに……か。フェード処理で額縁します。

雑感

歌い出しのコード。|Ⅳ|Ⅲsus4・Ⅲ|Ⅲm |Ⅵm|うまいな〜〜、サス・フォーして長3度から短3度に色彩をかえる和音です。イントロからサスフォーが効いていますね。引っ掛けた和音だけにカチりと心に耳にフックする響きです。トップ・ノートをナインスから主音、長7、シックスと下行させて変化させていくコーラス部とか。バート・バカラックさん、すごいよ……。

せつない情感をもった、移ろう響き。歌詞は、そばにいたいのは私だけじゃないのね……花鳥風月はもちろん、街の女の子だってみんなあなたに寄ってくるのよ……みたいな感じの意訳をこちら(世界の民謡・童謡 > Close to You カーペンターズ 歌詞の意味)から読みとりましたが……

恩恵を独占したいという思いは誰にもあるのではないでしょうか。たとえば恋愛の相手のもたらすやさしさ。笑顔。奉仕。そういうもののみんなを、私がみんな欲しいのよ。そういう思いって普遍かと。

でも、それを私に全部くれよという曲ではないのです。

ただ、嘆くだけ。

みんな、あなたのそばにいたいのね。

(わたしもだよ)

わかるでしょ? わかるかな。

……ラブソングですね。

思いを秘めること。それは理性だと思います。理性のきく人、私は好きです。伝えてもいいんだけどね。それも大事。

青沼詩郎

世界の民謡・童謡 > Close to You カーペンターズ 歌詞の意味 世界の民謡や歌謡・童謡、ポップスの歌詞や雑事に明るいサイト。

『(They Long to Be) Close to You』を収録したカーペンターズ(Carpenters)のアルバム『遙かなる影(Close to You)』(1970)

細野晴臣によるカバー『Close to You』を収録した『Heavenly Music』(2013)。鍵盤楽器やギターのゆらめくトレモロサウンド、細野晴臣の平静なボーカルにとろけてしまいそう。マイルドなアタックと余韻、ハーモニー。

ご笑覧ください 拙演