旅する歌い人・森山良子の一筆箋『この広い野原いっぱい』

かろやかな曲想というのが第一印象でしたが、普遍の風光明媚とロマンが理想高くうたわれています。あなたと私の関係に現実のリスナーと森山良子をあてはめても読めることから、彼女のファーストシングルとしてとてもおあつらえ向きという点にも鑑賞を重ねてから気づきました。飽きの来ない垢抜け感。当時の森山良子のジャズ志向をあながち無視したものでもない秀作。
2021/07/24(土曜日)青沼詩郎

松田聖子『瑠璃色の地球』 ミクロの向こうのマクロ

平井夏美の音楽の語彙の豊富さ。こりかたまった心に染み入る松本隆の言葉つむぎ。音楽とことばを透明に映しとる松田聖子の歌唱。Cメロ(大サビ)の緊張の連続に「おっ」と思い、それをきっかけに細かくみていくほどに良い曲。裏表のない美しさに出会えた稀。普遍を究めるほどに、いろんな個人や社会の境遇に響くのです。さながら、三賢人の楽船か。
2021/07/13(火曜日)青沼詩郎

井上陽水『帰れない二人』 星よ、帰らないで。〜もやつく叙情のきらめき〜

曲に独立した深い想像の世界を持たせた上で、現実をネタにしたジョークの世界としても超一級。毎度井上マジックにクラクラする私。アイディアの出発点はRCサクセション『指輪をはめたい』だといいます。元ネタを問う必要もないくらいの独自性の高みだと個人的には思います。私が関係者でも『帰れない二人』をA面にしたいと主張しただろうな。それくらい好きです。ふらふらした、もやつくコード感やイケズなメロディセンスも絶品。
2021/07/12(月曜日)青沼詩郎