時計をとめて あおい輝彦が歌ったロス・トレス・カバジェロスの曲 “レロー”とは時計の意

日本語で本曲を歌ったあおい輝彦さん。ジャニーズの『淋しさはどこから』をB面にしたスプリットシングルみたいな体裁で1966年にリリースされています。いい曲だなと思って著作者をたどってみると外国の方のお名前が。つまり外国作品に日本語歌詞をつけたカバーだったのですね。

原曲の『El Reloj』はメキシコのバンド:Los Tres Caballeros(三人の騎士)による1957年作品。こちら御本家の実演は平静さあり朗々とした高揚・輝きありのボーカルダイナミクス、複数のボーカルの近距離なハーモニー、ギターのハーモニクスやパーカッション、種々の楽器が表現する時計や秒針を思わせるサウンド的な試みが調和して卓越したグルーヴを織りなしていて絶妙。サブスクでも聴けます。

恋の魔法のバフ(効用が助長される状態)がかかった時間は誰しも、一瞬でも長続きするのを願うもの。それが古今東西の普遍の希望なのだと、こうして「時計」をモチーフにした「時間よ止まれ」的な楽曲の多いことからうかがえます。似たモチーフや願いを扱う楽曲たちのなかでも本曲はひときわロマンチックで音楽上のコンテクストも豊かです。恋の神秘をそのとき限りの快楽で終わらせない学びをもたらすでしょう。

あおい輝彦さんの実演のエンディングに「レロー(reloj)」というなんの意味か気になる高音域に浮き上がるような発声が含まれていますがこれがスペイン語で「時計」の意味なのですね。時計に呼びかける、あるいは時計の名を呼んで嘆く終わり方なわけです。

時計をとめて あおい輝彦が歌ったロス・トレス・カバジェロスの曲 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:Roberto Cantoral。訳詞:かも・まさる。あおい輝彦のシングル(1966)。原曲はLos Tres Caballerosの『El Reloj(The Clock)』(1957)。当初の発表形態がシングルリリースなのか生演奏などの発表なのか不明瞭だが『El Reloj / La Barca』の7インチシングルレコードが存在する模様。

あおい輝彦 時計を止めてを聴く(『GOLDEN☆BEST あおい輝彦 RCAイヤーズ』収録)

あおい輝彦さんの歌声と永遠にふたりきりの幻想空間にパックされた気分になります。エンディングのレローのロングトーンが悩殺。Good night, my darlingでトドメ。シックスの和音のギターでおあとがよろしい。

ズゥンとアコギが深い音色で収録されていて至福です。右に定位の寄ったベーシックのアコースティックギターに、オブリガードのギタートラックも中央〜左付近にいます。チャッチャッチャ……と竹籤を束ねたみたいな“ロッド”2本1対を打ち付けたみたいな音色で時計の針のあゆみを表現します。こいつさえ止まってくれれば……

ずうんと深いアコギのサウンドのボトムの輪郭をベースがうけとめます。ストリングスは弓の労働力をおしげなく稼働し高らかに歌いあげます。時計が止まる理想への情熱的アプローチです。

ロス・トレス・カバジェロスの“時計”

ギターのトレモロピッキングに緩急があり達者。すかさずギターのハーモニクスで時計のすすり泣くような感情を音で表現。ボンゴのような甲高いタイコも時計のあゆみを表現。サッサッサ……と短い音色の楽器はカバサか何かでしょうか。

歌声のシルキーな手触りが恋の頭をやさしくなでつけます。歌い出しのやさしさから情熱的なカンタービレまで、紳士さと豪快さの振れ幅でロマンの姫を時計の及ばない幻想銀河に連れ去ります。

青沼詩郎

参考Wikipedia>時計 (ロス・トレス・カバジェロスの曲)El relojRoberto Cantoral

参考歌詞サイト 歌ネット>時計をとめて

あおい 輝彦 | ソニーミュージックオフィシャルサイトへのリンク

『GOLDEN☆BEST あおい輝彦 RCAイヤーズ』(2016)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『時計をとめて(あおい輝彦が歌ったロス・トレス・カバジェロスの曲)“レロー”とは時計の意【ギター弾き語り・寸評つき】』)