KinKi Kids「フラワー」Music Video(YouTubeへのリンク)

作詞:HΛL、作曲:HΛL・音妃。KinKi Kidsのシングル、アルバム『C album』(1999)に収録。編曲:船山基紀、コーラスアレンジ:松下誠。

これはもうホントに私は純粋に泣いてしまいます。少年性、純朴性がすごい。すごいイノセント、無垢・純真感。それを伝える媒介としてのKinKi Kidsの個性、キャラクター。完璧です。

“僕らは愛の花咲かそうよ 苦しいことばっかりじゃないから こんなにがんばってる君がいる かなわない夢はないんだ”(『フラワー』より、作詞:HΛL)

私のなかのひねくれ、擦れ切った人格がひとつふたつみっつと猛抗議します。がんばってもどうにもならないことがあるんじゃないか。かなわない夢もあるんじゃないかと。

それに反論する人格もあります。それはおまえが本当にがんばりきれていないからだ。

別の人格がつけ加えます。自分の夢をはきちがえているんじゃないの? お前が夢だと思ってることって、本当に夢なの?

へたな作詞と作曲と、つたわらないアレンジと、へたな演奏や歌唱の表現でもって、『フラワー』と志(こころざし)の面についてのみ純粋に分類すれば似たメッセージといえる、「夢はかなう」「つらい、くるしいことばかりじゃない」風の美談を語る楽曲を私がテキトーこいて作曲して提示したとして、はたしてそのどれもがうまく伝わるものでしょうか。

ありふれた、あたりまえのようなこと。人類が100年も200年ももっと前からも、あらゆるかたち・媒介を通して願い、表現しつづけてきた自己実現という普遍的な主題。これは実に深く、幅広いです。的を絞って個性的な・奇抜なディティールを有した表現をすれば、刺さる人には深く刺さるかもしれませんが、そのディティールの個性が毒として作用してしまうリスナーには届かなくなってしまいます。一方で、あらゆるシチュエーション、それぞれが多様な人生経験を有する万人に、言い換えや解釈の柔軟さが認めうるような観念的・抽象的なアプローチで迫れば、そのぶんストライクゾーンといいますか射程距離や対象とする範囲は広まりますが、深く刺さる鋭さを失ってしまいがちです。鋭さに不足するために、はじかれたり、無視されたり、気づかれない・認知すらされない危険もあるほど、観念・抽象の表現は、作家・表現者にとって諸刃の剣です。

なぜKinKi Kidsの『フラワー』はこうも私にきちんと届くのでしょうか。私がぼやぼやと、自己実現のヴィジョンもあいまいに意識低く生きているから、表現も観念的・抽象的で「面」をとらえたものの方が響くのでしょうか? そんな馬鹿な話があるかとも思いますし、それではKinKi Kidsにも『フラワー』の作家陣にもひどく失礼かもしれません。

観念的・抽象的な歌詞は、アーティストが本気でおのれの魂を共鳴させて全霊で表現すれば、きちんと幅広い層に、深く面でぶつかる衝撃をもって届くのです。

魂とか、全霊とか、本気とか、得体の不確かな観念のちからを借りて語ってしまいました。ものの書き手として一番やってはいけないことかもしれません。私の不出来を晒しました。

KinKi Kids『フラワー』のサビのボーカルメロディの音域は、私にとってちょっと高めです。サビで使われている音域がさらっと登場し、さらっと経過するぶんにはそれほど奇抜で苦しい音域ではないのは私にとって真実ですが、この音域に、長く確かな時間、とどまるようなメロディはなかなか苦しいです。『フラワー』は、そう、私にとって、「長くとどまると、ちょい苦しい」くらいの音域を、ずっとうろうろ上がり下がりするサビのボーカルメロディをしています。

ここが、私に、「がんばるって、これくらいの負荷に対して抗い続けることか」と感じさせるのかもしれません。この音域をうろうろするボーカルが、私のエモーションや理性に対して、決してヒステリックになることなく、ひたむきな努力の継続の重要性を、心の底からの純粋な気持ちと応援する意図でもって、フレンドリーに実直に説いてくれるのです。

ボーカルメロディがこれくらいの音域を長い時間うろうろすることが、KinKi Kidsのボーカリストとしての個性において、どれくらいの負荷なのかは、恥ずかしながら私には知見と分析が不足しますが、KinKi Kidsのおふたりは『フラワー』の発売時、20才だったはずです。お若い年齢といえますし、かれらのもともとの歌のピッチとして、そこまで苦しいものではないのかもしれません。そのかろやかさ、自然さが、素直で嘘のないメッセージとして私に響くのでしょうか。というのはひとつの説で、かれらの歌のピッチとしても、やはり「ちょっとがんばり続ける必要がある」くらいの音域をうろうろしているからこそ、その「長くがんばってる感」が私に、ひたむきにがんばる、負荷に抗い続ける姿の実演として映るのかもしれません。ボーカリストがちょっとがんばった音域を出すと、実際、声の倍音の出方などにも影響があるのは事実です。

補足すれば、この曲はサビはじまりであるぶん、サビはじまりでない楽曲と比べて1回ぶん程度サビの回数が多いともとれます。おまけにラストのサビは反復するうえ、エンディングはサビのメロディと同じ音形を“Na Na Na Na……”で反復するものであり、「これほどまでにがんばってる君がいうんだから、君のメッセージは心からのものなんだ」と私のなかの純朴者が、私のなかのイノセント(無垢さ)が共鳴するようのです。花、一緒に咲かしてやろうぜって思えます。

青沼詩郎

参考Wikipedia>フラワー (KinKi Kidsの曲)

参考歌詞サイト 歌ネット>フラワー

Johnny’s net>KinKi Kids

KinKi Kidsの『フラワー』を収録したアルバム『C album』(1999)

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