https://youtu.be/HSWkGTZJ280

西城秀樹の『ギャランドゥ』

西城秀樹の1983年のシングル曲。同年のアルバム『It’s You』にも入っています。

https://youtu.be/NXsshBbfT6E

発表時よりもだいぶ最近のパフォーマンスか。大人な雰囲気の玄人たちの演奏。Bmキーか。当時のセルフカバーから半音下げ(それでもすごい)。

作詞・作曲はもんたよしのり。1980〜1984年頃、もんた&ブラザーズとして活動。

もんたよしのり 声、キー

もんた&ブラザーズ『ゴールデン☆ベスト』に入っている『ギャランドゥ』を聴きました。感激したので、ここからはこの演奏について述べます(サブスクや購入などで各々手繰り寄せて聴いていただきたし)。

特徴のある声質がすごいです。存在感、衝撃度。キーが異様に高いです。曲中、上のC(ド)まで用いています。実声といっていいのか? 非ファルセット(裏声じゃない発声)に聴こえます。もはや女性ボーカルが歌う音域です。職業歌手でもここまで出る人は少数ではないでしょうか。

声域の高さに注意を奪われますが、この曲の使用声域はきっかり1オクターブ。コンパクトにまとまっています。移調すれば、童謡並の音域の狭さで歌えるでしょう(音域のみについていえば)。

メロディのリズム

8分音符単位の動きを主にしていますが、単語末や文の区切りのところで頻繁に16分音符での動きをみせ、次の小節のあたまにタイで引っかかっている部分がたくさんあります。タイトルかつこの曲の核となっている表現“ギャランドゥ”も16分単位のリズムで発声しています。

「ギャランドゥ」はシックスティーン

サビ以外では同音連打や隣りあった音の間での移ろい(順次進行)を多用し、サビの跳躍音程を引き立てています。

同音連打や順次のヒラウタ
跳躍のサビ

abcdc構成?

構成が面白いです。AメロBメロと来てサビでワンコーラス…なら一般的ですが、サビのあとにすぐまた違うメロディがあらわれます。Bメロに似ていますが、コードづけも違います(Bメロ→Ⅴではじまる。サビのあとのDメロ?→Ⅳではじまる)。サビ→Dメロ→再度サビ、でようやくワンコーラスという感じです。この構えは各部分にアルファベットをふるとabcdc構成? と表現できそうです。

サビとサビに挟まれたDメロ? こちらも順次進行を多用

ギャランドゥって何

気になる言葉“ギャランドゥ”ですが、特に意味はなさそうです。響きのいい音声・発声を直感的にはめて、ダーっと歌ってラフをつくって、いい感じなのでそのまま採用! というなりたちを想像します。一応、彼らの所属事務所が「gal and do」などとコメントしたことがあるともいいます。あとづけでしょうね。

ギャランドゥという言葉におへそ〜下腹部付近の毛というニュアンスが生まれた原因は、ユーミンこと松任谷由実にあるようです。水着姿になった西城秀樹の体毛が与える印象をみとめた松任谷由実が、(体毛を含めた西城秀樹の存在そのものを称して?)彼のヒットソングにちなんで「ギャランドゥ」といっているうちに、いつのまにかギャランドゥ=おへそ〜下腹部付近の体毛を意味する言葉となった…というのが、ネット検索してひろった情報をつないでカクテルした私の
説明です。

本来『ギャランドゥ』は西城秀樹を意味する言葉でも、体毛が濃いことの形容詞でも、さらには部位を特定した体毛の名前でもありません。それなのに、そういう名前が定着したのです。このことは、前にこのブログで書きましたが、フォークソング仲間が集団でギターケースを持って歩く様子を形容して「イルカみたい」と表現したことが原因で自分自身がイルカと呼ばれるようになった歌手のイルカや、ロックバンドのARB(エーアールビー)が好きでその名を口にしていたらいつしか自分自身が「エーアールビー」→「エビ」と呼ばれるようになったというユニコーンのベーシストのEBIこと堀内一史の例に似ています。本来そのものを直接あらわす言葉ではなかったものが、関連のあるもの、もしくは別のものを指す意味を持つようになるのです。おもしろくありませんか?

Billy Joel 『The Stranger』と似てる

ビリー・ジョエルの『ザ・ストレンジャー』。曲調が違う前奏や後奏の部分が、テレビなどの「哀愁」「孤独」「さびしさ」の演出にやたらと使われてきた印象がある。

『ギャランドゥ』を聴いて、とてもよく似ている曲があったなと私の頭の中に浮かぶ音楽があります。記憶の中のサウンドや歌声を思うに、アーティストはビリー・ジョエルで間違いなさそう。なんの曲だったか…彼関連のプレイリストや曲目一覧をざざっと触っていき、なんとなくこれっぽいぞと最後に引いたのが当たり。『ザ・ストレンジャー』だとわかりました。『ギャランドゥ』『ストレンジャー』ふたつの曲名をならべてネット検索してみると、とても有名な話のようです。

ヒットソングのメロディ(ほか要素)の片鱗を手がかりに新しい音楽を生み出すのは、脈々と連らなる音楽の歴史に自分の匂いをちょっとだけ加えて次の世代に託す、誇るべき創造的な行いだと私は思います。パクりではなく尊敬であり愛であり、先人を認め、受け入れてさらに半歩でも1歩でも先へ行く希望と向上の心のあらわれだと思います。

ビリー・ジョエルの大ヒット曲に『Piano Man』がありますね。もんた&ブラザーズはアルバム『Half&Half』(1981)に『PIANO MAN』という曲を収録しています。こちらは曲のタイトルと歌詞の内容・舞台設定にビリーの『Piano Man』への意識が感じられますが、音楽的なモチーフへの接近はそこまであからさまでありません。明るくもちょっと哀愁をまとったごきげんな曲調です。“ライトの中でいつか色あせた俺の人生なんてただのはやり歌”(作詞:KURO、作曲:もんたよしのり)という歌詞に続いて間奏に突入し、童謡だかクラシック?(なんだったかな、ドヴォルザークのユーモレスク?)の有名なメロディのモチーフを展開し、ビリーへの接近からさらに音楽の多ジャンルをつないでいます。彼らの豊かな音楽が、先人の築いた歴史を踏まえて生まれていること。それが『ギャランドゥ』からも『PIANO MAN』からも伝わってくるのです。

青沼詩郎

もんたよしのりオフィシャルブログ 僕らはみんな地球人

『ギャランドゥ』を収録した『ゴールデン☆ベスト もんた&ブラザーズ シングルス・プラス』

『ギャランドゥ』をもんた&ブラザーズが初めて収録したと思われるアルバム『Monta&Brothers
SPCIAL ACT』(1983) リンク

『ギャランドゥ』を収録した西城秀樹のアルバム『It’s You』(1983)

ご笑覧ください 拙演