一生分の何か

児童期に実家のリビングでテレビ番組『めちゃ2イケてるッ!』を観た記憶があります。JUDY AND MARYの『Hello! Orange Sunshine』は番組のテーマとして使われた時期があり、テレビで流れてくるこのサウンド、いいなぁと思ったのです。

JUDY AND MARYの存在は私が小学生の頃の記憶と呼応します。生まれてはじめて小遣いで買ったCDアルバムは確かJUDY AND MARYの『POP LIFE』だったと思います。ほか、3枚組のライブアルバムを誕生日だかクリスマスだかといいわけをつけて親に買ってもらった記憶もあるくらい、JUDY AND MARYファンでした。『そばかす』が“るろ剣”につかわれたりとか、とにかくテレビでジュディマリにふれる機会が多かった気がします。音楽と少年の接点は、テレビ主題歌はもちろん、CMで楽曲を印象づける機会も多かった。それくらい私はテレビを観ていました。

一生分のテレビ鑑賞を、実家暮らしをしている時代に私は済ませてしまったのです。いまではときおり自分の意思とは無関係に、そのとき自分が過ごしている環境とテレビがついている環境を切り離すことができないとき、テレビにいらいらしてしまうことがあるくらいです。「一生分の鑑賞」とか、別に関係ないとも思いますし、単に私がその場を離れればよいのですが……(そうもいかないこともしばしばあるのです)。

昔、私の父が冗談まじりに、あるひと夏の休暇をさして「一生分のビールを飲んだ」と表現したことがあります。現在でも、私はよくビールを飲んでいる父の姿を目にすることがあります。一生分の何かをいっときに済ましてしまうことは、案外むつかしいことのようです。

Hello! Orange Sunshine 曲の名義、発表の概要

作詞:YUKI、作曲:恩田快人。JUDY AND MARYのシングル、アルバム『ORANGE SUNSHINE』(1994)に収録。

Hello! Orange Sunshineを聴く

YUKIさんの可愛い歌唱のキャラクターはいわずもがな。ダイナミックマイクとスピーカーを通った空間を一緒に収録したような臨場感があるサウンドです。

フー……と漂うようなBGV。ぴったりとまっすぐな声で寄り添う字ハモ。男声による合いの手、というか主題の“Hello! Orange Sunshine”と、ボーカル類ひとつとっても味付けが豊かです。

ベースの歌い躍動するような基本パターンの逸脱しそうで青春を謳歌するような活発な素地づくり。ドラムスもタムを絡めたパターンの素地が本当に豊かですし、随所でチャイナだかスプラッシュだかがパシャーンと砕ける。サウンドかとにかく豊かですし、それでいてどこか、「バカテク」に走ったようなきらいもなく親近感がもてる。ひとなつっこさがちゃんとあるベーシックなのです。

左にがっつり振ってある基本のリズムギターで、右側は終止、わりと空間があります。間奏で、この空間に荒々しくて華のあるギターソロが全開してきます。ここ、調性感がちょっとつかみづらい。ギターのスケール(音階)感のせいなのか、D調が基本ですが間奏でGに着地するような感覚がしますがソロギターが暴れすぎ(良い意味で)ているせいかはっきりしたドミナントモーションがあるような印象も受けないのです。秩序が崩壊しそうなくらいに自由なバンドの絶妙さがジュディマリの魅力の一面ではないでしょうか。

こんなに自由でどっかにぶっ飛んでいきそうなのに、オルガンがホワホワいったり、チャイムがコーンと敬虔できらびやかな福音をならしたり、BGVの構築が緻密だったりと、ちゃんとちゃんと「音楽」しています。タンバリンがチャリっと鳴って歯切れ良さを30パー増し。こうした「音楽」としての基礎のよさの保証され具合は、バンドメンバーの音楽性の高さはもちろん、やはりプロデューサーの佐久間正英さんの存在も大きいのかもしれません。

あらためて聴いても、バンドの素材のよさと録音作品としての良さが抜群ですね。小学生の私についてひとつ褒めてあげるなら、ジュディマリ好きになってお前は正解だぞという点でしょう。

青沼詩郎

参考Wikipedia>Hello! Orange Sunshine/RADIO

参考歌詞サイト 歌ネット>Hello! Orange Sunshine

JUDY AND MARY 公式サイトへのリンク

『Hello! Orange Sunshine』を収録したJUDY AND MARYのアルバム『ORANGE SUNSHINE』(1994)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『Hello! Orange Sunshine(JUDY AND MARYの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)