MV

ちょっと不気味な感じのへんな人形が微振動。なんの人形なのでしょうね。メンバーが行く街路。どこの国でしょう。路上にしゃがんだボーカルの山中さわおが飛行船の模型を手にぶら下げています。サビで楽器を携えたシーンへ。ジャンプして激しいパフォーマンスです。2番のヴァースでも、窓辺で手にもって掲げた飛行船の模型。ちょうどここで歌詞に出てくるのがそう、飛行船なのです。サビはまた楽器を持ったメンバーのシーン。真鍋吉明のギターソロ。激しいトレモロピッキングです。最後のシーンで都市を背景にした緑の丘に立つ3人。彼らに大きな影が迫り、やがて通りすぎていきます。飛行船ですね。この丘、なんか見たことある気が……本編の大部分の外国とは違い、日本っぽくも見えます。メンバーの後ろにそびえる都市が東京っぽいな、と。

最後のシーンが何に似ていたかなと記憶をさぐり、Mr.Children『彩り』のMVに似たシーンがあるなと思い出しました。

ミスチルの方を思い出して確認する前の時点ではひょっとしてロケ地まで一緒なのでは? と勝手に興奮しましたが、改めて『彩り』のほうと見比べてみると全然違いました。芝の丘と、こちらを向いて立つメンバーという配置が似ている程度でしたね。

左『ハイブリッド レインボウ』、右『彩り』ふたつのMVをならべてスクショ。似ているようで全然違いました。

曲についての概要

the pillowsの11番目のシングル(1997年11月21日発売)、6番目のアルバム『LITTLE BUSTERS』(1998年2月21日発売)に収録されています。作詞・作曲:山中さわお。

the pillows『ハイブリッド レインボウ』リスニングメモ

真ん中のギターがアルペジオっぽくかつ旋律的です。ギターボーカルが弾く扱いの定位でしょうか。左ギターが泣き喚くようなトーン。人がしゃべったり唸ったりしているみたいに聴こえる合いの手です。右のギターがベーシックなエイトビート。左にも刻みがいますが右のほうがAメロのはじめは大きいです。Bメロで右のギターは音色チェンジ。左の刻みが主になります。右は揺れたトレモロのエフェクトがかったサウンドでじゃりーんと和音を置きます。あいかわらず歪んだサウンド。サビ前で右のギターがファーっとハーモニクスのような音を置く。芸がこまかいです。サビでは一気に右も左もブーストです。非常に深い歪みです。ワンコーラス終えてちいさな間奏、また左のギターの遊び方がいじらしい。半音で音程を移ろわせます。やっぱり喚いているみたい!真ん中のギターもまた旋律的なアルペジオフレーズです。長い間奏のギターソロはトレモロピッキングでオクターブ奏法。その間、左のギターは低音があやしくうごめきます。これ、ノーマルチューニングでしょうか? 低音の層が厚いです。

ベースラインがめちゃくちゃいいです。これ、ひょっとしてなんですが、あまりギタリストと緻密にコードを合わせることなく、結構自由にベーシストの任意で動いた結果こういう低音位になったのでは? と勝手に想像しています。ⅲに進んでⅠの和音の第1転回形のようになったり、ⅴまでいったかとおもえばⅳに下がってみたり。滑らかに浮き沈みしている旋律の起伏は、この曲で非常に重要なモチーフの、地面をスレスレにいく飛行船を思わせます。私の中で、この曲に関する記憶の比重を大きく占めるのがこの優れたベースラインです。

ドラムスはキレのタイトめなスネアのチューン。タスッと締まった響きで、連続したショットでも他のパートを食うことなくガーッとテンションを盛り上げてくれます。リズムパターンやフレージングはシンプルですがかなりパワーヒッターなドラミングで存在感があります。

そしてなんといっても山中さわおのエモーショナルなボーカルが魅力です。上の方の叫ぶような高い音域もスコーンと伸びます。♪キャンユー・フィールのところのフィールはGの音程。一瞬の到達ならばまだしも、長く伸ばすにはかなり高い音程だと私は思います。私も自分で歌いたい歌ですが、高いのでハードルの高さをいつも感じていました。移調すればよいのですけれどね、すべての音域をカバーすると1オクターブと5度ほどになるので、キーの下げ過ぎも注意です。上の音程の天井の高さをさらにあげているのが、最後のサビの途中の「途中なんだって信じたい」の「信じたい」のところです。聴く者の感情をぐわっともっていくロングサスティンハイトーンなのに、これでもかとファルセットで音域を上に拡充します。この一瞬の出来事にまた目頭が熱くなります。

感想など

歌詞の実直さがthe pillowsの魅力です。私は彼らの歌を自分ごとと思えるのです。私のいいたいこと。さけびたいこと。それらを、私の望むサウンドで、私の望む声で私のスピーカーを震わせてくれる。それが私にとってのthe pillowsです。メロディがいいとかコードがいいとか歌詞がいいとか、それも全部そう。全部ひっくるめて、私のことにしか思えないのです。ああ、ありがとういてくれて、私のthe pillows。私の言葉は尽きました。

青沼詩郎

the pillows 公式サイトへのリンク

『HYBRID RAINBOW』を収録したthe pillowsのアルバム『LITTLE BUSTERS』(1998)

BUMP OF CHICKENによるカバー『ハイブリッド レインボウ』ほかを収録したthe pillows トリビュートアルバム『シンクロナイズド・ロッカーズ』(2004)

ご笑覧ください 拙演