長閑さと友好を背中に
シングル『100万人のJabberwocky』のB面に入っているのが最初か。時期の近いアルバム『美しい日々』が再発したときにボートラとして加えられているようです。秋空のもと聴きたい・歌いたい気分のさわやかな曲。『美しい日々』はアグネスさんがアイドル歌手から自律した表現者に一皮むけたのを実感させる、視座の多角なアルバムに思えます。A面曲とされる『100万人のJabberwocky』も挑戦的な攻めた曲な印象。そんな振れ幅が出てきた作品群のなかで本曲『風まかせ、愛まかせ』を聴くと、その形の良さ、歌としての普遍的で万人の手のひらへの収まりのよさがいっそう愛らしく感じられます。のどかさと平穏を背景に友好と希望の感じられる曲調・作風です。
作詞は森雪之丞さん。意外と布袋寅泰さんの『スリル』も森雪之丞さんの作詞だったりします。作風豊かですね。作曲の植田芳暁さんは加瀬邦彦とワイルドワンズのメンバーとしてのキャリアもある方でドラムやギターを演奏されるようです。マルチですね。
風まかせ、愛まかせ アグネス・チャン 曲の名義、発表の概要
作詞:森雪之丞、作曲:植田芳暁。アグネス・チャンのシングル『100万人のJabberwocky』(1979)に収録。時期の近いオリジナルアルバム『美しい日々』(1979)の再発?のボーナストラックに収録されている模様。
アグネス・チャン 風まかせ、愛まかせ(アルバム『美しい日々(+7)』収録)を聴く
カラっとしたサウンドがさわやかです。各パートの輪郭が明瞭でコントラストが強い秋の日差しのよう。アコースティックギターのスリーフィンガー奏法的なイメージのアルペジオがふりそそぎ、アグネスの甘くくすぐったい歌声が愛嬌をふりまきます。男声のバックグラウンドボーカルの弾けるような「あの日に帰ろう」のカウンターメロディがクセ強(つよ)で元気いっぱい。だんだかTULIP(チューリップ)っぽいコーラスだなと思い出させます。
右のエレキがカラっとしています。少しコーラスみたいなうねるエフェクトをまとっていて、ポンポンとブリッジミュートを効かせてはずませる奏法がバンジョーみたいです。バンジョー入れても良かったんじゃないか。でもこのエレキがいれば不要でしょう。
ベースがキビキビ、ピタっとよく動きます。上に下になめらかに飛距離を一瞬で滑るように動く。キャラの立ったベースです。多動なこの子(ベース)の女房役のようにドラムがカツっと音像をカンバスにとめます。すーっとストリングス系のキーボードが風のにおいをうつします。ピアノが補佐的に過ぎります。
行く先はね 風まかせ 幸せはね 愛まかせ(『風まかせ、愛まかせ』作詞:森雪之丞)
サビの直前にタイトルコールがあり印象的です。「〜はね、」「かぜ」「しあわせ」「〜まかせ」。サビ前に押韻をたたみかける作詞上のリズムの起伏が巧妙です。「のんびり、行こうよ」とここがサビですがさらに「Smile for you, Smile for me」とコーラスがつく。日本の娯楽音楽由来のサビと洋楽由来のコーラスが融合したような、アグネスの活動スタンスやバイオグラフィーを象徴するような楽曲構造の特色が尊いですね。
青沼詩郎
『風まかせ、愛まかせ』を収録した『美しい日々(+7)』(1979)。日本デビュー50周年時の2022年にリマスター・再発されています。ボーナス・トラックはこのときに加えられたようか。矢野顕子さんから提供を受けた名曲『ひとつだけ』が最初に収録されたのもこのアルバムです。
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『風まかせ、愛まかせ(アグネス・チャンの曲)長閑さと友好を背中に【ギター弾き語り・寸評つき】』)