風のエオリアで思い出すとりとめのないこと

エオリア(アイオロス)というのは神話の登場人物(登場神?)。“風の神様”だそうです。ナショナルのエアコンの商品名の由来になりました。

神話や神話に出てくる人物(神物?)がモチーフになっている楽曲にしばしば出会います。思い出すのは『勇気一つを友にして』です。“イカロス”が出てきます。

エオリア、すなわちアイオロスをウィキペディアにみつけたのでページを眺めました。説明が書かれており、「系図」なるものも挿入されています……が、頭に入ってきません。神話は私の関心がもっと近くに及ぶまで時間がかかりそうです。

冒頭で述べた、つまりナショナルのエアコンのCMソングになったのが徳永英明さんが歌った『風のエオリア』です。

日本の東京、首都〜多摩地域あたりに暮らしていると、夏はエアコンがあるくらしが当たり前になっています。もちろん人によるでしょうけれど、エアコンは生活必需品ともいえます。冬も暖房としてつかいますね。冬のほうがガスとかハロゲンとか電気カーペットとか、いくぶんエアコン以外の選択肢が広がるイメージです。

エアコンの商品名に、風を司る(のかな?)神の名前を冠したのは適確なアイディアであるように思えます。風は気圧の高低差で生じる現象でしょうから……結局「気圧の神様」ということになるのでしょうか。「風の神様」と呼ぶより気概と圧力がありそうですね。顔が怖そうです。

風のエオリア 曲についての概要など

作詞:大津あきら、作曲:徳永英明、編曲:瀬尾一三。徳永英明のシングル、アルバム『DEAR』(1988)に収録。ナショナル(現パナソニック)「Eolia(エオリア)」CMソング。

風のエオリアを聴く

神々しいです。徳永英明さんの声は独特の冷やっこさのあるピーク感です。なるほど、真夏にマストな冷房アイテムのコマーシャルにぴったり。芯がある声でもあるのですが、気管を息がこすって通っていくみたいな、ささやくようなシュワっとした質感もあります。この塩梅が、彼の声の透明感を印象付けます。

2拍子系のビートに思えるのですがどうでしょう。風のようにさらっとしたビートです。ベースなんか、コードチェンジのとこで一発ボーンと鳴るシンプル。まっすぐでカドのまるい快いサウンドです。ドラムスはスネアのアクセントにガッツがあります。天空に向かって抜けていくみたいに響き、寛容な器の広いベースのサウンドとタッグして快適な音場の大地を築きます。

ピアノの16分割で1拍目の裏裏に音高のピークがくるアルぺジオ伴奏パターンがなんとも神話っぽいです。こんこんと身にしみる風です。優雅でもあるのですが、物悲しい響きなのは和声感のせいでしょう。マイナーの響きと、芯あるピーク感とこすれた質感を併せ持つ徳永さんの声のキャラクターとあいまって、冷感が骨まで沁みてきそうです。

木管楽器が対旋律をおおらかに描きます。これもまたエモい。あたたかなトーンでもある……はずなのに、風すさぶ厳しさを思わせます。ストリングスの8分割のダウンビートも緊迫感があります。やばい夏が来るから“エオリア”買って部屋に付けないとひどい目にあうぞ……なんてのは思い込みの暴走しすぎかもしれませんが、楽曲のもたらす緊張感と真摯さの質感が偉大であるがゆえの暴走だとご容赦いただければ私の来夏も快適です。

サビの下行していくベースラインがスケール感を演出します。

ところどころⅤの和音がナチュラルマイナーの響きになっていて、物悲しいのにさらっとして粘着感や臭みがありません。緊張を解決するドミナントモーションにならないのです。

ベースの下行で地平を拓いたかとおもえば、減和音の響きでギュっと引き締め箴言を突きつけるよう。甘く清涼な歌声に、ただだらだらと浸らせてはくれません。

タンバリンを「刻む」役割でなく、ポイントを印象づけるように用いているのもパーカッション愛好者としては耳を引くナイスなところです。

シンセがしゅわーっと壮麗に奥へ溶けていくようなエンディングまで、緻密で清涼です。徳永さんの声と、こういう人智を超えた感じのオケのサウンドの相性が抜群。

歌詞 鷺色

“君はエオリア 鷺色の風に 踊る妖精さ きっと誰かと めぐり逢う そんな朝を信じて”

(『風のエオリア』より、作詞:大津あきら)

鷺色とはどんな色かがネット上の迷える子羊を従えています。私も気になりました。

鳥の一種、鷺はいろんな種類がいますがおおむね、サギといったらまず白色。アニメーション映画『君たちはどう生きるか』で注目が高まったアオサギはアオっぽいからアオサギなのです。アオサギの青はいわゆる青というより、私にはちょっとグレイ、あるいはそれにうっすら信号機の青が混ざったみたく感じます。私の色覚はちょっとイカれているのでなんともいえません。

つまり、サギは色がさまざまだということ。幅があるのです。基本は確かに白色系かもしれません。あなたの思ったようになる、それを受け入れる素地の色だということ。あなたのイマジネーションが尊重される表現こそが“鷺色の”という歌詞です。“君はエオリア 鷺色の風に 踊る妖精さ”とありますが、鳥のサギが滑空したり羽ばたいたりして水平〜斜め上に空を切っていく映像が見えるようです。目に見えない風の妖精がいたとして、それを可視化したらサギの風貌をしているのかもしれません。シンボル化、偶像化したらサギの姿なのだと。鷺といっているから鷺を想像するのは安直すぎるでしょうか。

東久留米の川辺で見た白い鳥。多摩地域に住んでいると、サギのなかまかな?と思える鳥に出会うことも多いです。
アオサギのあるく様子。井の頭自然文化園で見ました。多摩地域や中央線沿線、井の頭線沿線の人には特に便利でしょう。都市と緑の融合を感じる貴重な動物園です。街歩きを楽しむその足ですぐに行けます。
アオサギの横顔。

青沼詩郎

参考Wikipedia>風のエオリア

参考歌詞サイト 歌ネット>風のエオリア

参考Wikipedia>徳永英明

HIDEAKI TOKUNAGA Official Site へのリンク

サギの参考サイトやまびこネット>サギのなかまを見つけよう(日本博物館協会)

『風のエオリア』を収録した徳永英明のアルバム『DEAR』(1988)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『風のエオリア(徳永英明の曲)ピアノ弾き語り』)