レミオロメン 粉雪

平歌の歌メロディが低くて落ち着いている。対するサビはスコーンと高い音域をパワーのある声で歌っていてかっこよさ際立つ。

この曲の歌詞を書き取って、コードを振って、弾き語りできるようにコマカイ書き込みをしたノートを作ってみた。

するとなんと、16分音符の移勢が多いことか。前の拍のウラのウラから起こるフレーズがこの曲にはふんだんに含まれている。

サビの“粉雪”という歌い出しのフレーズひとつとってもそう。「こ」が前の小節のいちばんおしりにはみだし、「な」が次の小節のアタマに来ている。音程もそこで5度上に跳躍させている。

このときのルートは(低音)はド(C)で、「な」の発音の音程はラ(A)。長6度の関係。

コードネームとしては簡単にCとみればいい。

このシックスの音は5音音階を感じさせる。なつかしさ・親しみやすさ。

しかもただでさえサブドミナントのコードから始まるサビはエモくなりやすい。シックス音+サブドミのエモパンチ。

「こなゆき」は固定音で述べると「レラソレ」。コード「C」の構成音はドミソだから、「ラ」は「ソ」に解決する非和声音。だから、ソを逸脱しちゃった「ラ」なのです。

気付いたことがあって、その響きが鳴っている瞬間、なんとストリングス(小林武史氏か)はさらに逸脱しちゃった「シ」を4分音符1拍分の長さで2拍目にとっている。

ギターはたぶんパワーコードとかで「ド・ソ」の5度の和声音程、あるいは+3音を鳴らしている。

つまり、一瞬、「ソ」「ラ」「シ」が渾然一体となって鳴っている。

「ド」(C)のルート(根音)の上で、音の色彩が複雑な様相を呈している。その響きが、調和と混沌を感じさせる。

「ソ」と「ラ」と「シ」はぜんぶ、(近接した音域に並べれば)長2度の間隔で並んでいてぶつかっているんだけれど、心地よい。心地よさのトリプル合わせダシみたいな感じ(どんな)。これが間隔の狭い短2度の並びだったら響きの調和度は絶望的だ(もちろん調和度についていえば絶望なのであって、不協和を表現したければ最高のぶつかりだ)。

とまぁサビの歌い出しの2拍分くらいについてのみでこれだけ語れる傑作が『粉雪』なのである。あとの魅力の分析は他に譲ります。もしくはまた改めていつか……粉雪が舞った日にでも。

青沼詩郎

レミオロメン 公式サイトへのリンク

『粉雪』を収録したレミオロメンのアルバム『HORIZON』(2006)

ご笑覧ください 拙演

青沼詩郎Facebookより
“ホワイトクリスマスとはなかなかおいらが西東京ではなりません。
2005年のレミオロメンのシングル曲。もうちょっと昔から定番曲な気がしていましたが、自分が思ったよりは最近の曲でした。言うてももう15年前……!
ボーカル高くて歌えません。歌ってみたけどやっぱり歌えませんでした。
歌メロ、細かい16分音符の「食い」のオンパレード。ほとんどのフレーズが弱起では? あと小節の中でも2拍目と3拍目の間で食ってたりとか。私にはムズカシー曲でした。高い技術と歌唱力でちゃんとカバーしたらかっこええやろなぁ。モテ曲っぽいやろなぁ。あ、メリークリスマスイヴ。”

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