マジック・ロード(さすらいの天使) 平山三紀 曲の名義、発表の概要
作詞:橋本淳、作曲:筒美京平。平山三紀(平山みき)のアルバム『希望の旅』(1972)に収録。JASRAC登録上は正題:さすらいの天使、副題:MAGIC ROADとされています。
平山三紀 マジック・ロード(さすらいの天使)を聴く
平山みきさんのネットリした声にうっとりです。質感で勝る。気色悪く歌うことも、さらっと明日には忘れてしまうように軽く歌うことも数多の歌手にできようとも、平山さんのように記憶の画用紙に、水や油に溶く前のチューブから出したままの絵の具のようにネットリと滞在することは難しいでしょう。
以前、作詞家の橋本淳さん、平山みきさん、音楽評論の富澤一誠が壇上に会して筒美京平作品を語ったりレコード鑑賞したりパフォーマンスしたりする集いがありました。そのときのトークで、橋本淳さんの口から「(筒美さんは)ヘンな声の人、好き」と聞き覚えがあります。筒美京平さんも平山みきさんの声のユニークさを高く買っていたのがうかがえる、御三方(橋本・筒美・平山)らしいエピソードです。
カノン進行風のベースが下がっていくマジックロードならぬ王道……キングスロード的な堂々とした音楽の展開。何十年経って聴いてもグッドバイブレーション。
ドラムが闊達で驚きました。聴き終えて笑ってしまったくらい。手がよく動くのなんの。手だけではありません。キックの細かいのなんの。ベースとコンビネーションしてわたしの心をぶるんぶるん震わせます。ベース・ドラムのリズム隊がありえないくらいファンキーでグルーヴィーなのは筒美サウンドのお印です。ただの歌謡でもない。だからといってロックやファンクでもない。何かに属させようとするのは門外漢(とは言い過ぎでしょうが)が付すラベリングにすぎません。この音楽が何かなんて勝手に決めてくれ。アタシが唸る最高のリズムをここに吹き込むのみなのです。
左右に定位を広げるバックグラウンドボーカル。シンガーズ・スリーが『マジック・ロード(さすらいの天使)』を収録したオリジナルアルバムの収録に参加しているよう(参考リンク)ですのでこの音声は彼女たちのものでしょうか。右のほうには男声もきこえます。個性の調和とにぎわいを感じます。
右のほうにブラスセクション。イントロを印象づけます。ストリングスの高音域が左のほうから漂ってくるような気がしましたがどうでしょう。まんなか付近からは絢爛なピアノが豊かな楽曲のサウンドの中心となり、印象をリードします。コーラス間に横断歩道をわたるような音形を添えるフルートの音色がアナログチックで温和。
“男らしく 抱きしめてほしい”という結びのラインの歌詞が前時代的ではありますが、性別うんぬんでなく単に「頼もしい存在」のようなものとして読み替えれば普遍的な表現としての耐久性を見出せます。
“何かが起こる 悲しみのあとで 幸せへと続く何かが” 平易で抽象的な言葉が時代を横断してそびえます。マジカルな言葉がサウンドと一体化して今日の私と共鳴する逸曲です。
青沼詩郎
参考 Discogs>Miki Hirayama – Kibo No Tabi = 希望の旅
『マジック・ロード(さすらいの天使)』を収録した『平山三紀ベスト・ヒット・アルバム』(2007)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『マジック・ロード(さすらいの天使) 平山三紀の曲 ギター弾き語りとハーモニカ』)