真昼の人魚 くるり 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:岸田繁。くるりのシングル『Superstar』(2005)に収録。

くるり 真昼の人魚を聴く

くるり『真昼の人魚』フィドルのモチーフのスケッチ例。解釈するなら8分の6拍子でしょうか。その6分割ひとつひとつをさらに3分割した、ゆったりとハネるグルーヴを感じます。和声的な跳躍と、旋律的ななめらかさを兼ね備えたフレージングで細かく移勢するリズム面でのフックもあり……とあーだこーだ言いつつ、記譜(譜面)を基礎にする音楽とは対極にある、土着あるいは生活、唇からもれ出る鼻歌を想起させるトラディショナルの香りです。

ヴァースを過ぎ、歌詞が“明るくなって 我に返れば”となるところで転調。回顧がふっと解けるような清涼感です。F調からA♭調への転調と解釈できます。

くるりの近作『感覚は道標』収録の『aleha』では、間奏でEメージャーへ行ってヴァースに帰るところでGメージャー(こちらが元の調)に行きます。短3度上に行く間隔(感覚)が共通していますね。

シングル『Superstar』収録の『真昼の人魚』、録音はLong View Farm Recording Studios。マサチューセッツ郊外だそうです。Fran FlanneryがエンジニアさんでArrangedがくるりと共同名義になっています。

全体のバンドの響きがすごくいいですね。歌とギターではじまりますが、バンドインしたあとはエンディングまでサウンドの分布を保ったまま経過していきます。私の心を異国の路上だか草原だか夜の飲食店に連れて行ってくれます。時間を共有したセッションの輪を感じるトラックです。一期一会の儚さも感じるのに、ほころびなく美しい演奏で満たされています。

フィドルの演奏がBruce Molsky。素朴で寛容。サスティンや動きの付け方が歌を受容し、協調します。民話を甥っ子や姪っ子に語りかける親戚のおっちゃんやおばちゃんみたいな、人の声のような優しいフィドルの音色です。

ヘッドフォンで聴くとドーンと映画音楽をシアターで堪能しているみたいに感じるほどに、キックの深みが抜けていくのを感じます。ブラシでパサパサっとライドシンバルとスネアを軽妙に演奏していますが、この宇宙チックなキックの深みが快感です。ドラムスは川本真太郎さん。

ベースがアップライトで深い箱ものの響き。バンド、部屋の空気を統べ、抱きしめるようです。

メインのストラミングギターのほかにはナイロン弦でしょうか。非常に軽やかな、フェザーのようなタッチのギターがいるようです。マンドリンなんかを思わせるくらいにライトな音色です。

チャカチャカとピッキングのクリスピーな質感が目立つアコースティックギターのストラミングは、ピッキングのソフトでドルチェなニュアンスを私に印象づけます。繊細な感性で、柔和に弾いているのではないでしょうか。

大村達身さんがいる3人がメンバー、ドラマーがサポートの時期のくるりです。美しい演奏の詰まったトラック。くるりが変幻自在で自由なバンドであるのを強く再認識させます。世界のあらゆる音楽スタイルや、その時期・その時代に受ける刺激や出会いを心身にコミットし、ブレンド・抽出した音と言葉で映し出すくるりが大好きです。

余談ですが、メロディの起伏が高まるあたりの歌詞“ずっとひとりで描いた地図さえも”のところの「地図」が「チーズ」に聴こえてニンマリ。食べ物をモチーフにした妙作の多いくるりバイアスでしょうか。単語「地図」のメロディへのハマり方が、まるでフィドルを演奏する際の装飾的な節回しのようです。

においを感じる音楽を大切にしていると思うのです。たとえばチーズは極端かもしれませんけれど。

青沼詩郎

参考Wikipedia>Superstar (くるりの曲)

参考歌詞サイト 歌ネット>真昼の人魚

くるり 公式サイトへのリンク

『真昼の人魚』を収録したくるりのシングル『Superstar』(2005)

『真昼の人魚』を収録したくるりのアルバム『僕の住んでいた街』(2010)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『真昼の人魚(くるりの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)