フラれ情念のこだま

チャイニーズを記号するみたいなギターフレーズに惹かれます。聴いていくと、あるいは曲の内容・歌詞に近づいてみると、どうもフラれ男の執念の歌のようでおぞましくも思えてきます。モンキーズが最初のリリースかと思えばThe Paul Butterfield Blues Bandが先にリリースしている模様。ですがソングライターはモンキーズのメンバー、Michael Nesmith。

The Paul Butterfield Blues Bandバージョンはコテコテのブルーズ。歪んだハーモニカサウンドがアクセント、ねっとり感が印象を占める重心。モンキーズの実演を聴くとBキーでボーカルがナチュラルA(ラ)〜D#(レ♯)。増4度くらいの音域で主要なラインは消化できてしまいます。ボーカルの表情が激しくなるエンディングのフェイクをのぞけば。

名詞を2度以上反復する曲名見かけると私はついそれだけで聴いてみたくなります。反復のなかで高まっていくものにちょっとした高揚を覚えるのです。愛の対象とする人名がその主題であればなおさら。アナタの名前を叫ばずにはいられない、その具体や詳細や抽象・抽出が楽曲で描かれていると期待がふくらみます。その内容が案外未練がましかったり女々しかったりすると、ロックっぽいアティテュードを持つ楽曲であっても可愛げのある不完全なやつ(その想い)が主人公なんだなと勝手に親近感を覚えます。

Mary, Mary The Monkees 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:Michael Nesmith。The Monkeesのアルバム『More of the Monkees』(1967)に収録。The Paul Butterfield Blues Bandのアルバム『East-West』(1966)でのリリースが先のもよう。

The Monkees Mary, Mary(アルバム『More of the Monkees』収録)を聴く

モンキーズのリードボーカルはまずデイビーかなと思い浮かべてしまう私ですがこの曲はMicky Dolenzがリードボーカルだそうです。実際モンキーズのリードボーカルの割合はデイビーばかりなんてことはない様子。私の思い込みです。この曲をつくったマイケルがリードボーカルなのでもないようです。

ミッキーのダブリングのサウンドのリードボーカル。パンチが、ハリがある朗々としたボーカルで、ヴァースはちょっと気だるげな雰囲気もあって魅力的です。

ぐわっと増幅感のあるベースが右に定位。ドラムスも右より。サシサシとマラカスのようなふりもの打楽器がハイハットのような分割とニュアンスを担います。ドラムキットはスネアとバスドラム中心。セクションの変わり目やアクセントにおいてもバシャーンとオープンシンバルをやることがない。ピタっと他のパートが休んで、ノン・コードになってリードボーカルとドラムだけになる小節がひんぱんにやってきますがその時でもブワブワオープンシンバルがおおいかぶさることなくドライでタイトでホットな音像を保ちます。

左にはエレキギターが定位。ギターで出せる音域の根音の4度下の低音を加えたようなポジションの響きを利用しているようか、右に定位する楽器のほうが数が多い割に、ギターばかりが左定位を独占していても太くて質感に富んでいます。

ⅲをフラットさせた感じのブルーススケールを中心にしたリードボーカルがけだるげな印象でクールです。比較的短いイディオムを反復するシンプルな曲想・構造ですが曲のなかば〜後半あたり、I’ve done more now than a clear thinkin’ man would doと歌うあたり(モンキーズの実演で1分15秒あたり)にちょっとしたそれまでにないコードやリードボーカルメロディの語彙が出てきます。些細だとしても、このあたりが楽曲を勝ちに導くフックといった感じです(恋には負けても……)。エンディングでのボーカルの高揚が急にどうした感なくもありませんが……激情を抑えていたのかなと納得感もあります。そのままはいはいどうどうと暴馬をなだめるかのようにフェードがかかっておあずけ。次の方どうぞ。

青沼詩郎

参考Wikipedia>Mary, Mary (song)、East-West (The Butterfield Blues Band album)、More of the Monkees

参考歌詞サイト Genius>Mary, Mary

モンキーズ / The Monkees | Warner Music Japanサイトへのリンク

『Mary, Mary』を収録したThe Paul Butterfield Blues Bandのアルバム『East-West』(1966)

『Mary, Mary』を収録したThe Monkeesのアルバム『More of the Monkees』(1967)