町に何を思う

THE BOOM『風になりたい』は、私が高校生だった頃の音楽の教科書に載っていた。実際に授業でやったかどうだったか。

それから何年かして、音楽の教員免許を取得するために母校に教育実習に行った。長いような短いような2週間くらいを実習生として過ごした最後の授業のときに、何人かの高校生と一緒にこの『風になりたい』を歌って演奏した。

「タッタッ(ン)ター」というギターの2拍目の16分ウラ拍が特徴。サンバビートの魅力を提示してくれた日本のポップやロック作品で私が特に思い出すもののひとつがPolaris『コスタリカ』で、もうひとつがTHE BOOM『風になりたい』だ。

コスタリカ
風になりたい

Bメロのコード進行が面白い。4度上行(5度下行)を幾度も経る。Ⅰmを経由してⅦ♭調を感じさせる。でもまた元のメロに戻る。

オリジナルの『風になりたい』は『極東サンバ』(1994年、ソニーミュージックエンタテイメント)に収録されていて、翌年シングルにもなっている。

左から聴こえる、先に述べた特徴的なガットギターのストロークのイントロ。打楽器とコーラスが分厚い。ベースやドラムセットがない。途中で右に定位したウクレレ(?)も聴こえてくる。楽器の数が多い。イントロで目立ったガットギターは、曲が進行するにつれて、ひゅーーーっとアンサンブルに馴染んでいる。ミキシングのフェーダーワークが良いんじゃないかと思う。

歌詞
http://j-lyric.net/artist/a001133/l006cd1.html

ソラで歌詞を言えてしまう(歌詞を暗唱できる)人も多い、有名な曲なんじゃないかと思う。歌詞をまじまじと、文字を見て味わったことがあまりなかった。あらためて読むと、なかなか不思議な歌詞だと思う。考えて書く感じのそれじゃないと思った。作詞者はTHE BOOMのボーカル、宮沢和史。実際、ご本人がどのように作ったか知らないから、もちろん「考えて」書いたのかもしれない。広い地平(海原)を感じさせるようでいて、特定の都市を思い起こさせるようでもある。タイトルにある、“風になりたい”という詞にどんなイメージを持つか。儚いような、限りない自由への希望のような。

THE BOOMの活動の原点は、原宿のホコ天だという。

サブスクリプションサービスでMVを見ることが出来たのだけれど、銀座の通りを楽器を携えて練り歩いている。これもホコ天か? 音楽性が広く求心的でも、原点を忘れていないことの表れか…なんて勝手に意味を見出す。映像中に、百貨店「MATSUZAKAYA」の看板の縦文字が見えた。

検索するとライブ映像も見つかる。

すごく大所帯なのだけれど、ほとんど「持って歩ける楽器」だけで編成されているんじゃないだろうか? これも何か、意図を感じてしまう。どこへでも行ける、風になれる、ということだろうか。

残念だけどTHE BOOMは2014年に解散してしまっている。続くことがなんでもいいわけじゃないし、「やりきった」のかもしれない。

2003年には『風になりたい(Samba Novo.)』という別バージョンがリリースされている。ストリングスやフルートが入って、オリジナル盤よりやや音像が近く、サロンっぽい感じのまとまり。

青沼詩郎

『風になりたい』を収録したTHE BOOMのアルバム『極東サンバ』(1994)

THE BOOMのシングル『風になりたい』(1995)

ご寛容ください 風になりたい 拙演

宮沢和史オフィシャルウェブ
https://www.miyazawa-kazufumi.jp/index.html

THE BOOM (SONY MUSIC)
https://www.sonymusic.co.jp/artist/TheBoom/

THE BOOM(Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/THE_BOOM