以前、このブログで『走れ正直者』を取り上げた

西城秀樹が歌う『走れ正直者』はアニメ『ちびまる子ちゃん』2代目エンディングテーマ(1991)。作詞:さくらももこ、作曲:織田哲郎

アニメを象徴する曲として広く知られるのが『おどるポンポコリン』ではないか。1990年、初代エンディングテーマ曲。B.B.クィーンズが歌う。ボーカルは近藤房之介と坪倉唯子の二人だ。当時は覆面ユニットだったそう。ヒットと要望の大きさによってメディアへの露出へ踏み切ったのか

作詞:さくらももこ、作曲:織田哲郎。『走れ正直者』と同じ二人が作者。

コード進行はめっちゃシンプル。

Aメロ|Ⅰ|Ⅵm|Ⅳ|Ⅴ|

Bメロ|Ⅳ|Ⅳ|Ⅰ|Ⅰ|Ⅵm|Ⅵm|Ⅴ|Ⅴ|。1つのコードにつき2小節に渡る。出だしをⅣにすることで雰囲気を変えた。

サビはAメロと同じパターンだが|Ⅰ|Ⅰ|Ⅵm|Ⅵm|Ⅳ|Ⅳ|Ⅴ|Ⅴ|と1コードでひっぱる長さを変えていて、そこはBメロを踏襲。変化の移ろわせかたが巧い。

こんなシンプルなコードのはこびで印象深くフレンドリーなソングライティングが可能なのだ。オダテツこと織田哲郎氏に私は学ぶ(「つるり」と1分ほどで作ったとか)。

意味なしリフレイン

この歌詞を前に、私が何を論じられるか。ぶっとんだライン。

“ピーヒャラ ピーヒャラ パッパパラパ ピーヒャラ ピーヒャラ パッパパラパ ピーヒャラ ピ おなかがへったよ ”(『おどるポンポコリン』より、作詞:さくらももこ 作曲:織田哲郎)

意味がなく気持ちがよい響き。テキトーでソラゴトをつぶやいて、こうもうまくいくものか。靴下で人の心に上がり込むこの感じ。しょうがないからお茶くらい出してしまう。なんなら流れで煎餅も卓上に現れるだろう。「おなかがへる」のは人類共通の生理である。手術で胃がない人もいるが栄養は採る必要があり、生きている者に共通する方針であり宿命。それが、「おなかがへる」ということなのだ。これはさくらももこの体感覚の普遍性とそれを掬い上げる感性がなせる業ではないか。

B.B.クィーンズに近藤房之介

B.B.クィーンズにピンと来たのは、2020年8月に見た特別番組『磔磔というライブハウスの話』に近藤房之介が出演していたからだ。彼がB.B.クィーンズの一員だったことに、その特番視聴時の私はピンと来ていなかった。そのあと、たまたま最近『おどるポンポコリン』のことを思い出して、B.B.クィーンズについても検索して知ったことで、「ああ、あの近藤房之助!」とつながった。『おどるポンポコリン』は知っていても、B.B.クイーンズのメンバーが誰なのかは長いこと意識したことがなかった。

オリジナル音源の坪倉唯子の声は、再生速度を速める処理をして、声質を少女のそれに近づける演出をしているというが私にはライブとの違いがよくわからない。近藤房之助の合いの手ボーカルの熱量がライブだとよりいっそう高くてうっとりする。

余談

近藤と坪倉の間には当初の報酬条件に違いがあったらしく、近藤が印税で坪倉が買い取りだったという。大ヒットによって印税が圧倒的に高くなっただろう。そもそも『おどるポンポコリン』のメインの歌唱は栗林誠一郎の予定だったのを変更して坪倉になったという。そのへんの事情が待遇にあらわれたのか。近藤は坪倉に1度や2度くらい飯をおごっているかもしれない(邪推)。

また、織田哲郎には当時「まる子」と同じくらいの年代の娘がいて、彼女を喜ばせる意識をもって作曲したともいうが、ヒットしたこの曲に対しての娘さんご本人の反応は思ったほどでなかったという。

なんだか『ちびまる子ちゃん』の本編内でも出会えそうな「とほほ」な感じのエピソードが現実にも盛りだくさん。心に上がり込むのにおあつらえ向きで、ありふれていて可愛げもある……まさに靴下のようなポップソング。

青沼詩郎

B.B.クィーンズ 公式サイトへのリンク

B.B.クィーンズのシングル『おどるポンポコリン』(1990)

『まるまるぜんぶちびまる子ちゃん』(2004)。B.B.クィーンズ『おどるポンポコリン』ほか多数収録。

『おどるポンポコリン』を収録したB.B.クィーンズのアルバム『We are B.B.クィーンズ』(1990)

ご笑覧ください 拙演