続きを読む たいくつ 井上陽水 望郷の哀歌 どうにもあの冷たく澄み渡る次元の裏から湧き出るみたいな声でフフゥンと歌われるとこれは神のお告げか思し召かと錯覚してしまいます。最大の敬意で陽水マジックとお呼びしたい。…彼の音楽を聴けば、私は降車ボタンの壊れた行き先不明のバスで連れ去られてしまうのです。
続きを読む 朧月夜(唱歌) 倍賞千恵子の歌唱 霞の観念 2番の歌詞がおもしろいのは、「~も」で名詞を連ねきって、そのすべてが朧月夜に霞んでく風情を歌っている点です。「●●も××も△△も……すっかり日が落ちて霞んでしまうよ、おぼろ月夜」という意趣を感じます。昼間の陽光を反射した生きとし生けるもののテクスチャも、光の量が減って、見えかたが変わるのです。 夜の光量は、圧倒的に月の満ち欠けに左右されます。都市を離れた場所ならなおさらです。そういう環境においては、「霞」や「おぼろ」の観念がよりいっそう深みある知覚をふるうのです。
続きを読む 花 滝廉太郎作曲、武島羽衣作詞による日本歌曲 “春のうらら”の吐息の顕現 「みずや」? 耳でこの歌を聴く限りの私はまず「水や」だと思ってしまいます。まさかの「見ずや」。「見よ!」と解釈すればいいでしょう。こんなにきれいな春の風情を見過ごすわけがない、という。