大雪とゲーム熱

何年も前の2月に、とんでもない大雪が降ったことがあった。

これはもう引きこもるしかない。猛烈にテレビゲームがしたくなった。

ほこりをかぶっていたプレステ2を引っぱりだす。長い間使わないでいるものでも、私は捨てずにいる。「あのときのあれ、どこやったっけか」というとき、たいていちゃんと出てくる。

ゲームやりたいが、ソフトがない。なくはないけど、新しいのがやりたい。旧作でもかまわない。自分がやったことないやつ。

大雪だけどゲーム屋に行った。そこは厭わなかった。ひきこもってゲームをやろうという意志の強さは、ひきこもりを打開する強さでもある。これはひきこもるための戦いだ。園芸用のボロボロの長靴に雪がまとわりつく。膝から侵入しそうな深さ。

『ペルソナ4』を選んだ。ヴィジュアルがかっこいい。ずっとシリーズ名だけは知っていてやんわりと気になっていたが、やったことがなかった。過去作や、同じメーカー(アトラス)の別タイトルもあったけど『ペルソナ4』の黄色っぽいパッケージが目を引いた。

ペルソナって

私がペルソナという単語についてちゃんと意識するきっかけを得たのは、この『ペルソナ4』がきっかけだった。もともと心理学用語?で、外の世界と対峙するための仮面…みたいなニュアンスだったか。これは盛大に間違っている可能性が高いので各々調べてもらいたい。けど、私になりに「ペルソナ」に対する理解が築かれた。

ゲーム中、主人公はさまざまな個性を持ったとくべつな力をつぎつぎ得て、仲間を増やしながら謎を探っていく。そのとくべつな力が「ペルソナ」。物理攻撃、精神攻撃、支援、敵の妨害。いろんな方面に長けたいろんなペルソナがあるのだ。それらから好きなものを選んだり、新しいものを手に入れて試したりしていくのが楽しい。

仲間が増えて、主人公と関係を築いていく要素も非常に魅力だった。ゲーム中には日時があって、何か行動すると時間が進む。限られた時間で選べる行動は限られているのだ。その中で、共に過ごすことを選んだ仲間とは親密さが増して、その登場人物のことがより知れる。この仕掛けのせいで、周回を重ねてプレイしてしまうヤミツキ性がある。「今度の周はこのキャラとの関係を極める」といったふうに。ちなみに、うまくやるとすべてのキャラとの親密さを最高にしたうえでクリアが可能。

現実のペルソナ

外の世界と対峙するための仮面…この解釈が正しいという前提で進める。

これって、現実でもあるじゃないか。他者と関わって。社会と戦って…いや、社会と協力していくときに、私はいろんな「仮面」を付け替えて生きている。そのときそのときで、対峙する場面にあった自分を演じている。というか、その仮面をかぶると自分が「そうなる」のだ。その仮面が自分の個性に作用して、私は「そういう人」になる。で、この仮面をいっぱい持っている。使い分けている。うまく使い分けられているかは別として。

素の私もいる。いちばん真ん中の、深いところに? たぶん、そのあたりに。

仮面“ペルソナ”は癒着して、もはや引きはがすのは困難だ。無理にはずしたら皮膚を持って行かれてしまうかもしれない。負傷しそうだ。

ペルソナを持っちゃいけないわけじゃない。なるべく持たないようにする生き方も私は肯定する。はがせないくらいに癒着してしまった自分自身の生き方も。

音楽

ペルソナ4の音楽は素晴らしい。すっきりとした線、輪郭、ほどよくアニメ・漫画の絵になっている洗練されたポップなビジュアルと相まって気持ちのよいエンターテイメントになっている。

これまで述べたように、登場人物たちとの関係を深めたり、ペルソナを増やして強くなったり、謎を追うストーリーを進めたりと夢中でコントローラーを握りつづけてしまうのだけれど、その過程にずっと付き添って気持ちよくさせてくれるのが音楽だ。これがすごくいい。R&Bっぽい洗練された雰囲気が主だ。

音楽のコンポーザーは目黒将司。アトラス所属のサウンドクリエイターだという。外部かと思った。ボーカルには平田志穂子

ゲームのエンディングにこの曲、『NEVER MORE』。作詞者、小森 成雄。

日本語がプレイヤーに沁みてくる。仲間との関係づくり、バトル、謎追いとがんばってきたプレイヤーにぐぐっと迫ってくる。ほかの曲はみんな英語だから、より映える。

この曲は確か、エンディングに至るまでに平常シーンでインストゥルメンタルバージョンが繰り返し流れていた。プレイヤーの私に、メロディが刷り込まれていた。それに、エンディングで歌詞がつく。インストではピアノが奏でていた美しいメロディに、ゲーム内容を回顧させることばが乗る。エモい。

当然のように、大雪が降ったその日だけで終わるゲームではなかった。

解け残った雪が春先すぎまでずっとあるみたいに、だいぶハマった。

ゲームを原作にした、アニメーション作品がある。ゲームの存在を知ったのはアニメとどっちが先だったか。アニメを知って、オリジナルのゲームのほうに強い興味を持ったんだったけっかな。忘れちゃったけれど。

間違いなく私の人生に影響を与えたゲームのひとつ。

青沼詩郎

ペルソナ4
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