Radioheadを知った高校のとき
Radioheadが抜群に好き。アルバム『OK Computer』は中でも1番好きだ。『Hail to the Thief』(2003)も好き。『Kid A』(2000)も……。
高校生のときにツタヤでCDを色々借りた。その中にRadioheadがあった。それで1番好きになってしまった。1番好きなバンドを聞かれたら、Radioheadと答えた。今でも私の中に生きる人格の1人がそう答えるだろう。初めて知ってもう17、8年になるか。
『OK Computer』はツタヤで借りたのち、あまりにも気に入ったので高校生だった自分の小遣いで輸入盤を買った。中でも抜群に好きな曲がある。4曲目『Exit Music(For a Film)』。いや、『No Surprises』も。あ、『Electioneering』も……(全部好きだ)。
Exit Music(For a Film)
『Exit Music』は(For a Film)とあるように、映画『ロミオ+ジュリエット』に書き下ろされた。
父ちゃんに見つからないように服を着て荷物を詰めて逃げよう的な(雑でスミマセン)刹那が描かれていてその空気の温度(冷たさ)や緊迫が鋭く描かれる。
その鋭さと対立するかのような、柔和なマイナーコードのアコースティックギターのストロークの響き。艶やかで妖しい。トム・ヨークのヴォーカルは極限のささやき。子音の破裂音、歌詞に出てくる単語“sleep”の「p」なんか最高。
曲の後半で1回だけ盛り上がる構成。緊迫した繊細な雰囲気をぶち壊すかのようにぶりぶりブーストしたベース。
うろうろする調性。基本Bmなのだけれど、部分的にはAmやG-Cのモーションもある。長短の3和音が基本で分数コードづかいが妙味。
メロトロン
人の声を思わせるサウンドが使われているのだけれど、どこか「嘘くさい」。これはメロトロンという楽器か。元祖サンプリング楽器。オルガンの様な鍵盤をもつ箱形のボディのなかにアナログテープが入っていて、鍵盤を押し下げる(弾く)とそのテープに収録された音色が再生されて鳴る。
音色にはいろいろあって、フルートやストリングス、『Exit Music』にも用いられているであろうコーラスヴォイス風の音色もあって、他のミュージシャンの他の曲でもしばしば出会う。たとえば最近鑑賞した中だと私は小山田壮平『OH MY GOD』にもこれにそっくりのトーンが使われているのを感じた。
アナログテープを通るとこのように「嘘くさい」音になるのだろうか。「嘘くさい」とは否定的な表現に感じるかもしれないけれど、これは愛の裏返し。私はメロトロンのトーンが大大大好きなのだ。
メロトロンのフルートのトーンがアタマの中に鳴っているのだけれど、何の楽器をどう使ったらあの音になるのかかつて私にはわからなかった時期があった(つまり、メロトロンという楽器を知らなかった)。そのとき私はリコーダーを自分で演奏して多重録音し、イコライジング(音質調整)して「メロトロンのフルートトーン風」を手作りしたこともあった。フルートとリコーダーは楽器の仲間としては近親なので、当たらずとも遠からず。良き思い出だ。メロトロンという楽器の存在と実態を知ったときは、そういうことだったのかと深く腑に落ちる思いと同時に、決定的に違うんだからいくら生楽器で真似してもそりゃ無理だよねとハンズ・アップする気持ちが立ち込めた。
ちなみにメロトロンは、トーンを変更するためには本体の箱を開けてアナログテープをガポッと外し、望みのトーンがサンプルされたテープに入れ替える。
メロトロンっぽい音は、たぶんいろんなキーボードやシンセにあらかじめサンプルされて(サンプルのサンプルか)デフォルトパッチに入っているか、後からでも外部音源を仕入れてくるかすれば手持ちのキーボードでそれらしい音は比較的容易に出せるだろう。メロトロンがなくても、代替のそれっぽい音になら手が届く。でも実物の音はやっぱり格別だろう。楽器(実機)はとても貴重。これを備えたスタジオは現在、一体どれくらいあるのだろう。エンジニアやミュージシャンの私物がほとんどなのか。遭遇したら拝みたいし触りたいが、果たしてその日はいつ来るのか。
青沼詩郎
Radiohead Public Library へのリンク
『Exit Music (For a Film)』を収録したRadioheadの『OK Computer』(1997)
ご笑覧ください 拙演『Exit Music (For a Film)』
“Radioheadが好きで特にアルバム『OK Computer』は抜群に好きで「無人島に一枚持ってくなら」とか「棺に入れて欲しい一枚は」とかいうつまらない質問が仮にあったならこのアルバムを挙げるのもいいなと思う。
ところがこの作品を熱心に愛聴していると告白したら「暗い」と言われたことがある。
特に収録曲のなかでも暗いかもしれない『Exit Music』みたいな曲を私が愛好するのは、その暗さに憧れるからなのか、あるいは自分との同調を感じるからなのか。
暗いという表現を使いはしたけど、私はRadioheadを暗いと思ったことはない。彼らの作品を「暗い」と形容する人が周りにいて初めて「そうか(そう感じるのか)」と知った。暗いというか普通に一番かっこいいと思っていた。今でも思っている。
『Exit Music』にはメロトロンのコーラスボイスみたいな音が使われている。メロトロンはぱっと見、オルガンみたいな箱型の鍵盤楽器だけど中にテープが入っていて、鍵盤を押し下げるとテープに収録された音が再生される元祖?サンプリング楽器。フルートやストリングスやコーラスボイス?のようにいろんな音色のバリエーションがある。けど、どうもそのサンプリング元の楽器とは決定的に違う音になるみたいで不思議。アナログテープを通るとそうなっちゃうのか。「既存の楽器(声)に似ているのにどこか違う」その音はメロトロンかもしれない。
…というRadioheadの名曲をやってみたらまじ誰得動画になりました。”