結びのはじまり
いつまでに何をやるのか。
時間には限りがあって、何をやるかを選んでいかなけりゃならない。
それは、つまり「何をやらないか」でもあるのだけど。
やるべきことを選んでいるうちに、自然に「それはできない」が生まれてくる。
新しく始めた何かが本当に大事で、それをやるのに夢中になると、捨てられずにいた古い習慣を捨てることができる。大事に大事に持っていたときは、それを捨てるなんてできやしないと思っていたのに。
自制と締め切り
何かを生み出すときに、「いつまでに」やるのかを決めることで、道筋が具体的になる。
リミットを決めないと、自由度が高すぎて、自分をコントロールできなくなる。
私は、自分ひとりの演奏を多重録音してバンド(風)の音にする、という制作をずっとやっている。
収録もスタジオじゃなくて、実家のピアノが置いてある部屋なんかを拝借してやっている。いわゆる「宅録」だ。
制作にかかる手間は、私ひとりが負担すめば済む。
パッケージをつくるとか、配信するとかするにしても、出資者も庶務事務担当も自分だ。
社員を食わせて行く使命を担ったレコード会社と命運を共にして進んでいくというのでもない。
つまり何が言いたいかというと、私は「締め切り」をないがしろにしがちなのである。
ゆえに、たくさんの時間を湯水のように流して無駄にしてきたかもしれない。
現状よりも自分を統制するには、他者との関わりが必要なのだ。少なくとも、私には。
浪漫革命『KYOTO』
すごいペースで素晴らしいエンターテイメントを発信しまくっているバンドがいる。
浪漫革命だ。
ツイッターを見ていて、私は存在を知った。
魅力的なミュージックビデオが多数ある。
彼ら浪漫革命は、志によって、いつまでにどれくらいのことをするのか時期とボリュームを見定め(社会的に責任を果たす際、当然のことだろうが)、シビアに動き続けているんじゃないかと思う。
作品からは、享楽、自由、青春の匂いがする。それでいて、その刹那さ、はかなさを漂わせている。酸っぱさ甘さに、舌がきゅっとなる。
手の込んだ高密度のエンターテイメント、その表面の華やかさに対して、これらの制作にかける労力は並大抵ではないだろう。お金も人手もかかる。すなわち、命である。志あるたくさんの仲間を巻き込んで、命をともにしているのであろう。
命のワンカット
浪漫革命の『KYOTO』。
ワンカットを基調にしたミュージックビデオ。
これも、用意周到に、緻密に組み上げられた表現の集合体である。
命の道は、一本道だ。引き返せない。バンドメンバー。出演者。監督や製作陣。音源のレコーディングひとつとっても、関わっている人がたくさんいるだろう。一本一本の命の道が、絡まってできている。光り輝いて見えるエンターテイメントのディティールは、ひとつひとつの命の営み、生活臭や青さだったりする。
曲の音楽的なこと、詞
Gメージャーを主に、後ろのほうでA♭に転調する。ボーカルの音域は広い。私がざっと確認した限り、下のレ〜上のド(ファルセット)と、1オクターブ+短7度にまたがっている。なかなか歌いこなすのが大変そうな曲だ。
サビの結びのフレーズ”I’m loving you.“のきれいな順次進行メロが最高にキマっている。
コード進行、編成
コードに注目する。ⅠーⅥーⅡーⅤや逆循環を応用して、部分ごとに細かく分化・発展させている。各パートの機微がこの基礎そのものであり、リアルタイムにドラマが進行する。
広い音域にまたがるボーカルメロ。左右のツインエレキギター。ベース。ドラムス。そして、曲の華やかさ豊かさに重要なキャラクターである管楽器の編み方が素晴らしい。
字面の味
ミュージック・ビデオを観たら、ぜひ歌詞だけを字面で味わってほしい。
MVで生まれた体験とは、また違った映像体験ができる。私は歌詞を「読んで」、非常に感傷的な気持ちになった。
(YouTubeの動画説明欄に歌詞がある)
むすびに
「CDが売れない。」
「テレビの力が衰退した。」
そんな論調で切り取る現状が仮にあるとして、そんな中でも、星野源のようなスターが誕生することに私は驚嘆していた。
限りあるリソースで何をやるのかを見据え、そのハードルに縮こまることなく戦い、自由を謳歌し、志を・身を立てていかんとする、浪漫革命。彼らとともに、時代に沿って生きていることを実感する。
浪漫革命『KYOTO』(『NEW ISLAND ROMANCE』収録、2019年)に寄せて
青沼詩郎
浪漫革命公式サイト 浪漫革命~革命本部~
https://roman-revolution.amebaownd.com/
動画のリンク多数、公式の情報。
浪漫革命『KYOTO』Official MV
https://youtu.be/5ZnxU4HSMbk
浪漫革命『あんなつぁ』Official MV
https://youtu.be/lMYSptBzSFE
Vo.藤澤信次郎氏のツイッターから、私が浪漫革命を認知するきっかけになった動画。サビのリフレインが印象的。魅力的な映像。
浪漫革命『サマタイム』(Official MV)
https://youtu.be/2ZlaNdCuegw
映像も曲も、遊び心・青さタップリでニヤニヤ。サニーデイ・サービスを思い出した。
skream!
https://skream.jp/interview/2019/03/roman_revolution.php
インタビュー記事。彼らについて知る視点、多数。