わくわくのつまったおもちゃ箱のようなキラキラしたサウンド。チャイムのようなシンセ(キーボード?)がきらびやか。ブラスをイメージしたようなタイトなトーンも上行・下行できびきびと合いの手をうちます。
ストリングスのサウンドがみずみずしく流麗。主旋律を奏でる背後でピツィカートでバッキングするなど、ストリングスのパートの中でも役割を分け、フレキシブルで豊かな様相をなします。
ピアノがリズミカルに和声を表現。コーラスがかったようなトーンのエレキギターも場をひきしめる名脇役です。
Aメロでルートを保って和声を動かすところがいいですね。対して、Bメロの折り返し“もっとワイルドに もっとたくましく”のところでは、ボーカルメロディが2度ずつ天井を突き上げるような動きで和声のうつろいを表現します。そしてサビでは“ロマンティックあげるよ”のリフレイン。覚えやすく、キュンとなるメロディが絢爛。少年漫画原作のアニメなのですが、少女(登場人物でいえばブルマでしょう)の宝箱の中身を覗いているゆな華やかなメロディ・コードワーク。楽曲の骨格がすこぶる優れ、アレンジメントも実際の演奏も抜群に機能し効果を発揮しています。まぶしいばかりの“21st century ver.”ですね。
“サウンド・プロデュースは、オリジナル・ヴァージョンのサウンド・プロデューサーであり、
アニメ音楽の大家「田中公平」氏”(イナズマChallenger – TEAM Entertainmentより引用)とのことで、歌手としても編曲者としても完全にご本家のセルフカバーと解釈してよさそうです。オリジナル版(と思われるYouTube投稿へのリンク)のほうはドラムスのプログラミング感が結構強かったり、かと思えばコーラスワーク(バックグラウンド・ボーカル)の表情が豊かだったりと、その時代らしい魅力を映したサウンドに思えます。間奏は楽曲の骨子面でも新旧ではっきりと違いがあります。“21st century ver.”はただ原曲をトレースしたのではない、正真正銘のリフレッシュ版なのですね。今後も長く愛聴したい傑作です。息の長い不朽の名アニソンといって相応しいところでしょう。
青沼詩郎
『ロマンティックあげるよ(21st century ver.)』を収録した高橋洋樹・橋本潮のミニアルバム『イナズマchallenger』(2008)
オリジナル版『摩訶不思議アドベンチャー!』『ロマンティックあげるよ』を収録し、1998年にシングルCDで再発売。
Romanticあげるよ