作詞:岡本おさみ、作曲:吉田拓郎。吉田拓郎のシングル(1981)。編曲:松任谷正隆。

ひとことして、すんごいロンバケ感。

『君は天然色』を収録した“ロンバケ”こと、大滝詠一の傑出アルバム『A LONG VACATION』。

どなたが編曲者かと思えば松任谷正隆氏。私が何を知っているわけではありませんが、大滝さんと深いつながりを持つギョーカイの人だと思います。この『サマーピープル』を制作するうえで参照曲として『君は天然色』が話に挙がることってあったのでしょうか? と思いふと気になる。『君は天然色』は1981年3月21日リリース。『サマーピープル』は1981年4月5日リリースです。なんと近いことか。

『君は天然色』にとどまらず、大瀧さんが数多の曲で魅せるサウンドの集合体と通底するところを感じる、といったほうが的確かもしれません。

ストリングスのピツィカート。「トトトトトト……」とタムタムの連打が豪快で目立ちます。そう、トリプレット(三連符)系のノリと、平易なコード進行のパターンを基調にしているところも通ずるでしょうか。細かいところですが、しばしば吉田拓郎の楽曲にみられるⅥmからⅠへの進行がありますが、『サマーピープル』では「Ⅵm→Ⅰ→Ⅵm→Ⅰ」とやったりひっくり返して「Ⅰ→Ⅵm→Ⅰ→Ⅵm」とやったり、ごくシンプルな繰り返しによって変化をつけているところが好きです。

間奏があけたのち、エンディングに向かって長二度転調。GからAにかわり、清涼感と新鮮さを胸いっぱいに取り込みます。元のキーでやったことをそのまま転調後に再現することによって冗長さを打開する、というよりは、また違った境地に至る感覚を覚えます。毎年繰り返す夏の風情においても、うつろい、変化していくものがあるのを思います。気づく感性や、自分の中にある比べるための資源(経験、記憶)をありがたいものとして大事に扱いたいですね。豊かな色彩感を覚えます。

“裸のやつとならうまくやれる 裸のあの娘とならうまくやれる 踊る気分で 踊る気分で 灼けつく夏だぜ”(『サマーピープル』より、作詞:岡本まさみ)

岡本まさみとの共作で独特のニオイを音楽にまとわせてきた数多の吉田拓郎作品で、上のラインにもちょっとしたニオイを感じるのですが、『サマーピープル』に至ってはくだんのフレッシュな音楽と相まって垢抜けたポップ(大衆音楽)の印象で、その磁場において精神の血や肉を語る様相が個性になっていると思います。リズムや音韻、音程など、相似する部分をもつフレーズを上手に反復してリスナーが愛着を持ちやすい音楽を形成しています。ゴマスリを感じることは決してないですが、孤高の境地から唱える、純度の高いおのれの言葉を感じさせる傑作も多い吉田拓郎作品の中では、かなり、ユーザー(リスナー)のそばに寄り添った愛嬌あるサウンドと言葉をもつ妙作ではないでしょうか。今後も年に一回は聴きたい、夏がくるたびに。そのうちねんがらねんじゅう夏みたいになるのかな。あんまり暑いんで……。

青沼詩郎

参考Wikipedia>サマーピープル

参考歌詞サイト 歌ネット>サマーピープル

エイベックス>吉田拓郎

『サマーピープル』を収録した吉田拓郎のベスト『ONLY YOU 〜since coming For Life〜 + Single Collection』(2011年、オリジナル発売:1981年)

吉田拓郎のシングル『サマーピープル』(1981年、CDシングル版の再発売:1990年)

ご笑覧ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『サマーピープル(吉田拓郎の曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)

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