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レポート『京都音楽博覧会2020』 ライブとレコーディングの半生

出演者側が表現のために必要な息継ぎを適切なタイミングで適量とり、プロローグ風映像をはさむなど必要な「編集」を経て演出された今回は、より完璧な「パッケージ」に近いのではないかと思う。ライブよりも「レコーディング」寄りだ。とはいえ、あくまでその手触りは一発で録音されたライブのそれである。会場内に観客はいないから「ライブ・レコーディング」とも違うかもしれない。しかし、私は時間芸術の緊迫を確かにここに感じている。「ライブ」と「レコーディング」の両方の性質を併せ持っている。「半生」とでもいっておこう。
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映画『#ハンド全力』を観て 変化はグラデーション

熊本の震災と、その後、そして現在。それらは、すべてつながっている。どこにも切れ目はない。報道が関心を示さなくなったら、外部の人にとっては「切れて」感じるかもしれないが、そこで生きる人、その心はずーっとずーっと、「コンティニュー」。無段階に続き、絶えず変化したり現状維持に努めたりして光り続けている。だから、先程の「現在と過去をつなぐシーン変移」の演出は、あながちただの技法の話で終わらない。この映画で最も着目すべきテーマの象徴ではないか。
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小山田壮平『THE TRAVELING LIFE』 「壮」なアルバム 〜ファースト・インプレッション・ノート〜

FM802『BINTANG GARDEN 小山田壮平のMUSIC FREAKSりたーんず』(8月23日)の放送の中で、リモートトークゲストの岸田繁は小山田壮平のそれを指して「へんなおじさんのアルバム」と表現した。「壮」には、「おとこらしい。つよい。血気盛ん。達者。」そんな意味があるらしい。厚生労働省提言における定義の中でも、小山田壮平や私の現在の年齢は「壮年期」に区分される。偶然か小山田壮平の名前にも付されたその文字の意味を思う。アルバム『THE TRAVELING LIFE』がそれに重なる。少年〜青年を経た旅のいま、これからを思わせる「壮」なアルバム。これからも「へんなおじさん」の動向を見守りつつ、愛聴していきたい。