FM802『BINTANG GARDEN 小山田壮平のMUSIC FREAKSりたーんず』(8月23日)の放送の中で、リモートトークゲストの岸田繁小山田壮平のそれを指して「へんなおじさんのアルバム」と表現した。

本日。小山田壮平THE TRAVELING LIFE』がリリース。CD屋が開く前に配信で聴ける時代になったか。0時過ぎたら解禁されていた。早朝、これを書いている。

とにかく、聴く。全曲視聴メモ。

HIGH WAY

アルバムに先んじて公開された曲。『OH MY GOD』の次に解禁になった。初めて聴いたとき、シブいと思った。andymoriAL、ソロとやってきた彼のキャリア。ここまでくるとそうなるのか、とも思った。いつも彼は私の先をいく。私の現在の関心事、そのずっと先をすでに見つめている。私は5年〜10年くらい余計に過ごすと、やっとピントが合ってくるのでは。その頃にまた『HIGH WAY』を聴いてみると、今は見えないものが見えてきそう。先が楽しみである。

といいつつ、解禁になってから今、この曲を聴くのが4〜5度目。じんわりと沁みてくるものがある。派手さ・やんちゃさは前のパーキングに置いてきた。大人の歌である。先日(8月23日)のFM802 BINTANG GARDENの放送で、小山田壮平はリモートトークゲストに岸田繁を迎えた。岸田繁の放送中のことばを借りる。「へんなおじさんのアルバム」。ニヤリとした視聴者は私のほかにいっぱいいたのではないか。「大人の歌」と私が表現した、このあたりのことが岸田繁の言う「へんなおじさんのアルバム」と重なる部分があるのかもしれない。

金管楽器が入っている。小山田壮平ゆかりのミュージシャンの顔が浮かぶ。歌詞 “誤解されないように生きるなんて無理な話”。ほんとうにわかり合うことってどれだけあるのだろう。言葉をかけあって、仲睦まじくしたような気になって、つながりを感じる人と人。だけど、共生の本質は誤解にあると思う。深みのある渋い歌詞だと思う。「へんなおじさんのアルバム」トップソングにふさわしい。今後もたくさん聴きたい曲。自分に変化がある度に、時間を経て。「最近あいつどうしてるかな。飲みに誘ってみるか」みたいなノリで、繰り返し聴きたい曲。

に出るならどこまでも

andymori『モンゴロイドブルース』を思い出す曲調。ALっぽさもある。テルミンが怪しいポルタメント。幽霊が出るときの演出のアノ音。アルバム中、いちばん苦みがある。ピーキーで抜けた、低音の落ちたエレキ。オクターブボーカルコーラス。ライブでツインボーカルのパフォーマンスをしたら華だろうなと思う、際立つハモリ。歌詞 ”息切らして” でロングトーン、息切らさず。次々にモチーフが更新される。エンディング付近はアコースティックでカントリー・フォークのよう。ファルセットと笛の音色。ケルト音楽みたいな。タイタニックのやつや。この曲は最後に書いたらしい。それでアルバム『THE TRAVELING LIFE』になった、といったようなことを本人がラジオ(BINTANG GARDEN 小山田壮平のMUSIC FREAKSりたーんず)で確か言っていた。アルバムになった、すなわち、このアルバムを象徴するトラックだという自覚が本人にもあるのだろう。一曲目であり顔は『HIGH WAY』にせよ、一定しない曲調はまさに旅。変化の小山田壮平の生きざまを思う。

OH MY GOD

デジタルシングルとして先行リリース。映画『#ハンド全力』主題歌。ギターのストロークパターンと刺繍音がキモ。ドラムスとベースがフックのあるパターンで絡む。サビでアナログサンプリング楽器「メロトロン」に思える音は、前の曲『旅に出るならどこまでも』の笛の音色と似ている。ピアノの和音のスイープが小節の頭にキランと光る。この曲に関しては前にもこのブログで書いた。まっすぐに歌いこなしているけれど、ボーカルは非常にハイポジション。彼のミュージシャンとしてのキャリアが、映画とのコラボといった外的な動機とうまくタッグしたと思う。大好きなシングル曲。

雨の散歩道

トリプレットロックバラード風。歪んだエレキでバッキング。フェイズがかったサイドのエレキギター。ボーカルのファルセット。コーラスでコヨったトーンのサイドエレキ。そのトーンでギターソロ。転調。コーラスボーカルは誰だろう、ゲストかな。ハーモニーがいい。カラっとした音色でエンディング付近のギター。エレキギターの音作り、そのグラデーションが魅力的。

ゆうちゃん

何年も前、立川のライブハウスBABELでこの曲の弾き語りを聴いた。marebitoの企画ライブだった。そのときに聴いて、私は大変気に入った曲だった。このアルバムには案外、時間的な幅が含まれている。恵比寿リキッドルームでのSparkling Record立ち上げライブでも『ゆうちゃん』を聴いたっけ。

ゆうちゃんとわたしの関係をずっと眺めていたくなる。歌詞 “でもゆうちゃんは気にしない”が好き。「わたし」にないものを、ゆうちゃんは持っている。収録音源での編成はジャンベだかコンガ、バイオリン奏法+スライド奏法?のエレキギター、アコースティック風のベース。昼休みの部室で聴きたい一曲。

あの日の約束通りに

エレクトリックピアノ(Rhodesかな?)、それにアコースティックピアノがきれい。小山田壮平のボーカルの上行跳躍は絹のように優美で秀逸。ボーカルの魅力が際立つ。またメロトロンか。ベースの音像が暖かく、でっかい抱擁。ブリッジミュートのアコギ。浪漫、夢想、純愛無垢を連想する。

ベロべロックンローラー

Ⅳの和音からはじまる。タイトルから想像した攻撃的なサウンドじゃなかった。タムがぼっと出たドラムスの音像。歌詞がすごくよく入っくる。気持ちがいい。直感的に好きな曲。歌詞 “カナダの国旗とはっぱの形” 、標題の造語「ベロベロックンローラー」。何かを象徴した表現にも思える。これも「へんなおじさんのアルバム(by岸田繁)」のワンピースか。

スランプは底なし

小山田壮平にもスランプがあるのかな。あっても大丈夫そうだと勝手に思うのは、私が彼の存在をメチャ大きく思っているから。何があっても大丈夫と思っている。えゔぃしんぎず・ごな・び・おーらい。トリップレットロックブルース風。これも歌詞がよく入ってくる。私の思い出の地、石神井公園あたりをふらふらする小山田壮平を勝手に想像。日記的でもあり、架空の共感。ヒーローのことばはわからん。小山田壮平は底なし。

Kapachino

andymoriの匂いある。Kapachinoってなんだろう。あえて今は調べないでおく。言葉の羅列、意味の層、たたみかける音韻。同音エレファントチョーキング(勝手に命名。エレキギターのふたつの弦で同じ音程を鳴らす奏法。低い方の弦を半音〜全音下からチョーキングで音程をずり上げることで、まるで象が鳴くような強烈なサウンドになる。私の大好物の奏法)が良い。

君の愛する歌

ドラムスパターンでオープニング。シンセ的なサスティン系のトーンが空気、壁と奥行きを演出。曲のアティチュードになんとなくandymori『16』を思い出す。『革命』もどこかに感じる。アコギとエレキのストローク、 ドラムス。和音を鳴らしてエンド。これもまだまだ聴きたい、お気に入りの一曲。このアルバムのラストトラックかと思った。(まだ違った。)

ローヌの岸辺

『空は藍色』を思いだす。アコギのアルペジオ、低音弦を鳴らす位置、そのパターン。バイオリン奏法のエレキギター。「ローヌ(※)の岸辺」ってなんだろう。心象風景か。どこでもいいとも思う。ロマンチック。夜か、朝か? 暁。焼ける空を思う。「明ける」音。サウンドメイク、ミックスが光る。

※スイス、フランスを流れ地中海に注ぐ川。https://news.j-wave.co.jp/2020/09/post-6650.html

↑『STEP ONE』(J-WAVE)に小山田壮平が出演した時の川の話がまとめられている。ぜひ読んでほしい。

夕暮れのハイ

ボーカルの厚み、深いルームリバーブのギター。ボーカルのダブがくるりの名曲っぽい。「ハイ」に至る枕が、歌詞 “夕暮れどきは花の匂いに誘われて” なのか。「ハイ」に「酎ハイ」のダブルミーニングを勝手に想像する(へんなおじさんのアルバムだもんね)。左に残るエレキの余韻、ノイズ。シュコー。

むすびに 壮とは

「俺らはもう壮年。青年じゃない」

これは、ドラムスがむちゃくちゃうまい、私を飲みに誘う唯一無二のある友人が、ある日飲みながら私に言ったことばの端っこだ。

「壮」には、「おとこらしい。つよい。血気盛ん。達者。」そんな意味があるらしい。厚生労働省提言における定義の中でも、小山田壮平や私の現在の年齢は「壮年期」に区分される。偶然か小山田壮平の名前にも付されたその文字の意味を思う。アルバム『THE TRAVELING LIFE』がそれに重なる。少年〜青年を経た旅のいま、これからを思わせる「壮」なアルバム。これからも「へんなおじさん」の動向を見守りつつ、愛聴していきたい。

青沼詩郎

小山田壮平 – Sparkling Records

http://sparkling-records.com/artists.php

小山田壮平 Twitter

https://twitter.com/oyamadasohei?s=20