いきさつ
ここで毎日音楽に関するブログを書いています。
私は曲を書いたり歌ったり演奏します。
ほかの人の曲を聴き、そうした自分の表現に反映する目的でやっています。
ただ聴くのでなく、聴いたら「書く」。書いて伝えます。何がどうだったのか。どこがどうだったのか。
それから、聴いたら「自分でもやってみる」をしています。
書くためにはよく聴かなければならないし、「演奏する」「歌う」ためにはよく聴いた上でからだに刷り込まねばなりません、ある程度。
自分の表現をより広げるために、「これまでにはあまり聴いてこなかった曲」をふんだんに聴くようにしています。
でも、そうするほどに「対立するじぶん」が際立ちます。
これまでにたくさん聴いたり、ある時代にすごく好きだった音楽。
自分が取り入れてこなかったものに注目するほどに、そういうものがときに、私に向かって強く主張してくるのです。それは何かのきっかけがあることもあれば、ふいに思い出すこともあります。私の脳の中では「何かしらのきっかけ」「脈絡」があるのかもしれません。
私と『冬のミルク』
高校生のころ、軽音楽部でバンドをやっていた私。THE BACK HORNはすごく好きで聴いていました。
インディーズ時代のアルバムをMDに録って聴いていました。
それが『冬のミルク』が収録された『何処へ行く』(1999)でした。
思い出して、検索して曲をたぐり寄せてみる。
今サブスクリプションサービスで聴けるものは新録バージョン。
2008年リリースの『BEST THE BACK HORN』に収録されています。
ループして夢中で聴きました。
インディース時代のものも聴きたいと思いましたが、公式のサブスクやYouTubeでの配信はしていないようです。
久しぶりに家にしまいこんだMDをあたりました。15年ぶりくらいにMDを聴きました。家のCDプレーヤーが古く、MDの録音再生可能機なのが幸い。
久しぶりに聴いたインディー盤の『冬のミルク』。
菅波栄純のエレクトリック・ギターの歪みが、よく暗く粗っぽく怪しく、激しく潰れて感じます。レスポールにファズをかけたような潰れ方とコシに聴こえますが当時の使用機材はなんだったのでしょうか。音程が高いところでの山田将司のボーカルのがなり方が乱暴(表現として)でたまりません。曲の最後で、それまでの歌いまわしを高く変えた部分があるのですが、そこの「声のコントロールを外れた感じ」も顕著で生なましく私を唸らせます。落ち着いた音域における声や息の抜き方と張り上げる部分のギャップが強く感じます。光と陰、コントラストが強い。
2008年のベストの新録版はギターのキメがこまかく、高解像度な印象。バンドが認知され、人気が出て、使用楽器もハイエンドなものにアップグレードしたのかどうかわかりません。インディー版とは違う、高濃度なコシがあります。
山田将司のボーカルは「がなり」のコントロールが利いて、高い音域まで張りと艶のある声で表現している印象です。音域が落ち着いている部分も過不足ない息づかいを感じます。
リズム隊のグルーヴもシマっています。インディー盤は粗くドコドコした感じ。
どちらがいいというより、どちらもいい!
時間を経ても、表現の方向性を見事なくらいに保っています。この、方向性を保っているという点はTHE BACK HORNの魅力のひとつ。新しいことにいつもチャレンジしていると思うけれど、彼らがやる「THE BACK HORN」を「THE BACK HORN」としてリスナーに認めさせる何かがある。彼らの遍歴をもっとちゃんと聴き込みたいと思います。
インタビュー記事
こちらの音楽ナタリーの記事。メンバーが自分たちのバンドをどう考えているか。『冬のミルク』についてや、バンドが結成された当初のバンドの様子がわかります。
THE BACK HORNのギタリストで、バンドの作詞・作曲の柱の菅波栄純が積極的に動画をアップロードしています。『冬のミルク』のギターを実演したり語ったりしている動画があります。プレイヤーとしても作曲者としてリスナーとしても興味深いです。作曲やプレイの細かい魅力に光を当てています。曲にも、菅波栄純にもより親しさを感じました。
曲について 私にとって
曲については、先に貼付けたインタビュー記事や、菅波栄純の解説動画でかなりまるまるおわかりいただけると思うのでそちらに譲ります。
私にとってはとにかく、高校時代の思い出の曲であること。
あ、それからインディー版と新録盤で、サビのおわりのほうでコードに少しだけ違いがあったような。Ⅳ→Ⅴ→Ⅵ→Ⅰがこの曲のサビの大事なコードの流れなのですが、インディー版にはサビの終わりにⅣ→Ⅴ→Ⅵ→Ⅰ→Ⅳ→Ⅲ→Ⅵと、「Ⅲ」に下降する動きがあったような。
菅波栄純が解説していますが、コードのセブンスがブルージーを醸しているのがかっこいい。普通ならつい、ただのマイナーコードにしてしまうところです。
このダークなバンドサウンドと歌詞ががひたらすらにカッコよく、高校生の私に刺さったのです。
菅波栄純は、山田将司が歌うことを意識してこの曲を書いた。そのことで、書く曲が変わったといったことをインタビューやYouTube動画から私は読み取りました。リスナーにとってもTHE BACK HORNメンバーにとっても、大きな影響をもたらした重要曲。
青沼詩郎