『Fool on the planet』と『SYNCHRONIZED ROCKERS』

the pillowsを知ったのは、高校生のときだった。トリビュート『SYNCHRONIZED ROCKERS』(2004)より前だったか、あとだったか。Mr.Childrenによるカバー『ストレンジカメレオン』、BUMP OF CHICKENによるカバー『ハイブリッド レインボウ』で、その楽曲の良さを実感したのを覚えている。

ベスト・アルバムの『Fool on the planet』(2001)を繰り返し聴いた。そりゃもう、しこたま聴いた。先に手に取ったのは、トリビュートとどっちが先だったか。思い出せない。

『Funny Bunny』がくれる肯定感

Funny Bunny』が大好きだ。サビの歌詞の“風の強い日を選んで走ってきた”(1999年、the pillows。作詞・作曲 山中さわお)。このフレーズに、感動する。不器用な自分を肯定して感じるから。山中さわおが、the pillowsがそれを言ってくれているのでもあるし、それを能動的に聴いている「私から私へのメッセージ」でもあると感じるから。

私も、曲を書いて歌ったり演奏したりする者のはしくれだ。そのとき。私から私へ、ほんとうに言ってやるべきことを言えたとき、私は感動する。山中さわお、the pillowsが『Funny Bunny』サビの先程の歌詞に込めたものが何かは知らないが、私はそれに共鳴している。

曲が何を言おうとしているかを解釈するのはこちらの勝手だ。解釈は多様でいい。だから実際『Funny Bunny』の先程の歌詞も「私がそう感じる」だけのこと。それなのに、それでいいのに。私は山中さわお・the pillowsから直接に、比喩でもなんでもなく、ど真ん中の「自己肯定」をもらったように感じるのだ。これが、私にとってのthe pillowsの魅力。これほどのものには、そうそう巡り合わない。私はthe pillowのいちファンだ。

『Funny Bunny』のふたつのバージョンを紹介する。

『HAPPY BIVOUAC』(1999)収録の『Funny Bunny』

イントロのドラムス。バスドラの「ボッ」という音。太く、暖かい。センター付近にアコギ。左に低いリズムギター、右に少し動きがあって高い音域のリズムギター。左がボーカル・ギターの山中さわおの演奏で、右が真鍋吉明のものか。右のギターはBメロでコーラスサウンドになる。ボーカルはダブったサウンド。

間奏でセンター定位のギターが現れる。サビ前のアルペジオフレーズをアコギがユニゾンする。ギターの構成や音づくりが細やか。ドラムス含め、全体の音が、真空管やアナログテープを思わせるような暖かみと太さのある印象で好ましい。

この曲でとても私が認識を改めたのが、ベースのフレージングだ。主和音のときに、拍のアタマからいきなり第三音を引っ掛けている。このベースラインに大変衝撃を受けた。こんなベースフレーズもあるのだと、私は影響を受けた。サポート・ベーシストは鈴木淳。彼が考案したフレーズだろうか。

『Funny Bunny(Rock Stock Version)』

the pillows、2枚目のベストアルバム『Rock stock & too smoking the pillows』(2009)収録。

再録バージョン。イントロのドラムスの余韻が短く、キレがある。無機質で冷やっこい耳心地。1999年バージョンと対象的だ。あちらが真空管・アナログテープ的ならば、こちらはトランジスタ・デジタル的。イントロに幼女のような声で“I love you funny bunny”と入る。

こちらにはアコースティック・ギターがない。テンポが1999年バージョンよりも速い。繰り返しこの曲を演奏してきた、the pillowsの歩みと変化を映す再録か。こちらのバージョンはライブでの再現度が高そう。エレキ・ギターのBメロでのコーラスエフェクトもない。より直線的な表現。アルペジオフレーズなどを含んだ真鍋吉明の演奏が左、山中さわおのギターが右に定位されているのでは。それが正しければ、1999年バージョンとは逆の定位だ。

ライブでみる『Funny Bunny』

ライブで客側から見ると山中さわおが左(センター)、真鍋吉明が右。音の定位もそうなっている。『Funny Bunny(Rock Stock Version)』のギターの定位はこれとは逆なので、より「ミュージシャン目線」なのかもしれない。

後記

the pillowsについては、何を書こうか戸惑ってしまう。いつまでも「過去」にならないからだ。句点を打てない。どこから書き始めて、どこで筆を止めればいいかわからないのだ。彼らの曲が私にとって特別なものばかりだから。でも、とにかく書き始めて、とにかく点を打つ。彼らthe pillowsもきっと、そうしてきたように。

青沼詩郎

the pillows
http://pillows.jp/

『Fool on the planet』the pillows


『SYNCHRONIZED ROCKERS』

ご笑覧ください Funny Bunny カバー