星野源はどんな音楽聴いてきたのだろう。と思ってウィキペディアを見る。彼が聴いたり話題にしたことがあると思われるタイトルのなかにUNICORN『服部』を見つける。それを加入している音楽配信アプリで検索、再生した。

その関連で表示されたプレイリストが『バンドブーム ベスト』だった。気になって開いてみる。
先のUNICORNもこのプレイリストに加えられている。

プレイリスト中に目を引くタイトル。『バカになったのに』。ジャケットサムネイルも手描きの感じが引っかかった。名前を見るにThe ピーズじゃないか。

Theピーズの名前はたびたび目にして知っていた。私が大好きなバンド、the pillowsのドラマー・佐藤シンイチロウがThe ピーズのドラマーでもあることも知っていた。

歪んだギター、ベース、ドラムスが私の好みど真ん中のサウンドだった。

イントロから関心を高めているとタン・ロール。「Rrrrrrrrr」。いわゆる巻き舌の発音。

歌が入る。ストレートでラフな表現。歌詞が入る。

“自堕落ばかりがもてすぎる”(『バカになったのに』The ピーズ、作詞・はる)

ドアタマの単語が「自堕落(じだらく)」。強い! 濁音「じ・だ」、冒頭の巻き舌のRと符号する「ら」に「く」。また濁音「ば」、直前に出てきたカ行「か」、「り」(RiかLiか)、また濁音「が」…そして続く、「モテすぎる」。自堕落ばかりが、なんなの?…え?「モテすぎる」だと?! ハゲドー(激しく同意)だよそれ!!! この時点でこの曲を最後まで私が夢中になって聴くのはもはや決まっていた。

怠惰でさ。たばこ吸っちゃってさ。酒飲んじゃってさ。泥臭く努力している姿とかあんまり思わせないのにライブステージではカッコ良くてギターもうまくて声も良くてさ、女性にモテちゃってさ…みたいなバンドマン像を想像する。そーゆー奴に対しての「俺」。対極としての?、俺。

酒もそんな飲まないしたばこも吸わないし、人知れず努力している「俺」を誰よりも「俺」が知っている割にはそのことが評価されたり報われたりしている感じに満たされているともいえない、そんな俺。“自堕落ばかりがモテすぎる”というたった一行から、私はそんな「俺」を重ねる。そういう対極像から影響を受けて『バカになったのに』、なったのに、だよ…? ばかー!!って言いたくなる現実。それをこの歌で叫んでいる「俺」。最高か!

1サビ明け、“進学校の悲しみ アホ不足”と続く。頭いい人たちの多い高校に運良く(悪く)進学してしまって、ずっと底辺を更新し続けた「俺」を私は重ねてしまう。そこで「俺」は軽音楽部室に誘われる。勉強に費やすこともできたはずの時間のぜんぶを「俺」はそこに注ぎ込んで過ごす。からだが軽音部室にいないときでも心は部室に置きっぱなし。

クラスメイトとして出会って、軽音楽部どうしの友人であったTくんを思いだす。彼のことを私は気に入りすぎて、つい絡んでしまう。そのときの態度や挙動があまりにも乱れていたのか、Tくんに私は「酔っぱらい」という形容をもらった。ほめるとも否むとでもなく、心底シンプルに放ったであろうTくんのその形容を私は心から歓んだ。しらふの酔っぱらいだ。

私は馬鹿になれたか? アホは足りていたか?

私は自分に影響を与えたものを目指した。目指した自分。目指す自分。現実の自分。どれも確かに存在していて、それらは混在していた。境目なくカクテルしていた。

ちょうど最近、『磔磔というライブハウスの話』という特番を見たところだった。The ピーズも登場していた。私の敬愛するバンド・くるりも長く出演し、先の7月にもライブ配信『LIVEWIRE くるり in 京都磔磔』の舞台にもなった、その名の通り京都にある老舗のライブハウス「磔磔」を中心にしたドキュメンタリーだ。こちらはテレビで8月7日深夜に放送されて、8月いっぱい見逃し配信されていたけれど期間が延長になった。FOD/TVerで9月30日まで見られるので、未視聴・再訪希望の方はぜひ。https://www.fujitv.co.jp/b_hp/takutaku/index.html

The ピーズは私が敬愛するくるりと同じライブハウス「磔磔」に絡めて縁やつながりがあったり、私がすでに好きだったバンド・the pillowsとドラマー・佐藤シンイチロウがかぶっていたりなんて関連があったのにも関わらず、その音楽をきちんと受け止めることができたのは恥ずかしながら今回がはじめてだった。でもここで知れて良かった。じゃなけりゃ、バカじゃなくてただの愚だ。バカって褒め言葉なんだよな。

青沼詩郎

The ピーズ オフィシャルサイトへ

The ピーズのシングル、アルバム『グレイテスト・ヒッツ VOL.1』(1989)に収録。 作詞・作曲 はる。『バカになったのに』は彼らのメジャーデビュー(ビクター)曲。