映像

ジェリー藤尾

https://youtu.be/v3ithOl1n90

蝶ネクタイに黒タク(タキシード)。離し気味に持ったマイクロフォンに大御所感が漂うのは私の偏見でしょうか。リズムの後ろへのズラし方も大御所のそれです(偏見)。Bメロ(サビ)で色気と感情を多めに表現。エンディングはハミングの終わり際にそのまま一礼。

デューク・エイセス

https://youtu.be/QgdBSoHf2AY

オケが勇壮。指揮者もいる大編成。まっすぐに立つ白ジャケット・黒スラックスの4人のシンガー。まずはユニゾン、Aメロ折り返しで重唱。口の開き具合や表情のつかいかたにシンガーにとって個性があるのが面白いですね。最後のAメロではバラバラにタイミングをずらして入ってくる大胆なアレンジメントです。輪唱風ですね。エンディングはオクターブ違いを交えたユニゾン。照りっ照りに脂の乗った男声アンサンブルでした。

音源

渥美清

イントロの重っおもな雰囲気。これ、普通にクラッシック(ガット)弦のギターか何かでしょうか? 弦長があるかんじの緩くふくよかな響きの演奏。琵琶か何かかしら? と思わせる独特の情念ある響きです。その演奏に乗せて、諦観ただよう「しゃべり」で幕開け。渥美清の発音は一音一音丁寧で的確ですね。ストリングスのベーシックにビブラフォン、ピアノ。オープニングと同じメランコリックなギターもオブリガードします。

倍賞千恵子

倍賞千恵子。こちらもメランコリックなギターではじまります。右にアルペジオ、中心にリードギター。ストリングス、ピアノ。かなり低いところからフルートがうなりあげます。エンディングはストリングス、フルート、ギター、ピアノ、バイオリンとAメロ歌い出しの主モチーフのバトンが渡され次々に現れ、ボーカルのハミングとユニゾン。

ジェリー藤尾

こちらがはじめに初売されたシングルの音源でしょうか。男声のユニゾンがうめきます。男声数人で録ったのでしょうか。ジェリー藤尾は含まれいる or Not? 暗く重いピアノのストローク・パターンとともに歌がはじまります。ドラムスはブラシ。ストリングス、オーボエも絡みます。Bメロ(サビ)では女声コーラスが「Ah」と高鳴ります。かなり特定の音域にピークのある、硬質な強い響きです。ジェリー藤尾の音域と開きのあるコーラスで、あいだの音域にストリングスがいるイメージ。

オユンナ

モンゴル出身の歌手、オユンナ。雅楽器(篳篥?)のようなイントロ。なんと3拍子のアレンジです。シンセ・プログラミング主体のサウンドが妖しい響きです。Bメロでキックが2拍目や3拍目にズレて拍動。ワンコーラス後は転調。どこへ行ってしまうのか? 原曲を抜け出て本当に「遠くへ」聴き手を誘い、異質な風景を見せてくれます。

曲について

ジェリー藤尾のシングル曲(1962)。 NHK『夢であいましょう』番組内で「今月のうた」として用いられました。

楽曲と同名の旅番組『遠くへ行きたい』のスタートは1970年。初代主題歌担当はデューク・エイセスです。以降、番組のテーマ曲としてより広く知られ、多くの歌手にも歌われるようになったようです。作詞:永六輔作曲:中村八大

デューク・エイセス『遠くへ行きたい (1992 Re-Recording)』(『ゴールデン☆ベスト デューク・エイセス』収録)を聴く

ピアノのメランコリックなイントロ。

男声の斉唱。右にはアコースティックギターのアルペジオ。

Aメロ折り返しでドラムス・ベースも入ります。ドラムスは案外パワフルで腰のある太いサウンドなのが良いですね。Aメロではリムショット、Bメロでオープン・ショット。かなり残響を効かせた音作りです。

音の厚みはストリングスで稼ぐ。サビ前に飛び上がる弦楽器のフィルイン。

Bメロ(サビ)で男声は重唱でハーモニー。Aメロに戻ると斉唱、といった具合に対比をつけています。

最後のAメロにもどってくるあたりでは入ってくるタイミングや音程をずらして4人コーラスグループのアレンジメントの可能性を提示しています。

感想

物悲しく重い短調。短調のⅡの和音は減3和音になるので、強烈な不穏な響きです。Cマイナー調ならレファラ♭。第5音(ラ)がフラットする(半音下がる)のです。これが曲中にたびたび出てくるのが、重さ・沈痛さが出る一因ではないでしょうか。Ⅰのマイナーの主和音が長和音になってⅣに進行するところなどあって、コード進行がなかなか良いです。

ちょっと重く・暗すぎて普段なかなか味わおうという気にならないのも正直なところですが、だからこそ、今こそコレを聴いたり味わったりしたい、ほかの曲じゃダメなんだ! という時が稀にあって、それはどういう時かというとまんまタイトルの通り「どこか遠くへ行きたい気分」の時ではないでしょうかね。

「〜したい」は願望・希望・望みをあらわすときにもつかう言葉ですが、「遠くへ行きたい」にはどこか、一切の望みを失ってしまったような虚無感が漂います。空虚や喪失感から抜け出、希望が持てそうな環境を欲する心が隠れているのかもしれませんが、今はまだそれが具体的に見えてくることもない。そんなさすらう心は「遠くへ行きたい」なのかもしれません。安寧の地を求めているのか。

同名の番組ももはや長寿。いまだに続いているのですね。普遍で不変のテーマなのかもしれません。あと50年しても人間は「遠くへ行きたい」って思うのかな。

青沼詩郎

遠くへ行きたい(読売テレビ) 番組サイト

遠くへ行きたい(テレビマンユニオン) 公式サイト

『遠くへ行きたい』を収録した『My Road~ジェリー藤尾55周年記念アルバム』

『遠くへ行きたい (1992 Re-Recording) 』を収録した『ゴールデン☆ベスト デューク・エイセス』

ご笑覧ください 拙演