『空に星が綺麗』と私

この曲が本当に好きだった。

ちょっとそのことを忘れていたのだ。

あんなに好きだったのに、しばらくこの曲のことを忘れていたのが意外だった。悔しくも思った。

白盤』で初めて聴いた。レンタル屋で借りて、iPodに入れて頻繁に聴いた。私は大学生か卒業して数年くらいの青年だった。

サブタイトルに「〜悲しい吉祥寺〜」と入ることから、歌詞に出てくる「公園」は井の頭公園をイメージする。

私も本当にたくさん訪れた公園。あんなこともこんなこともあった。

ミュージシャンって、より多くの人の働き方からはだいぶ外れた存在に思える。それなのに、たとえば私のような凡人の気持ちをどうしてこれほどまでにわかるのか、斉藤和義さんよ…とでも嘆きたくなる。そんな歌詞なのだ。

厳密には、私の気持ちなんて誰もわかっちゃいない。あなたの気持ちだって私は知らない。だから、この曲はただ私の気持ちを知っているかのような気にさせて、揺さぶるものだというだけのこと。斉藤和義が誰かの気持ちを知っているかどうか知らないが、ただこの曲がそういうふうになっているということ。斉藤和義は斉藤和義の気持ちを一番知っているだろう。

それでも、そうやって分かり合った気になったり、勘違いを続けたりしながら口笛吹いて歩こうぜ、空には星が綺麗…とこの曲は私に沿う。

音楽について コード進行とかアレンジとか

ピアノと木琴のいユニゾンで始まるイントロが私の耳をつかむ。低い音域なのが吉。これは間奏でも聴けるニュアンス。ピアノを用いているのはイントロと間奏とアウトロのみかな? 全域に入っているわけじゃなさそうに聴こえる。

コーラスの味付けが感情を揺さぶる。声の力ってすごいな。メインボーカルはダブリングしてある。2回歌ったのかな。オブリガートギターは12弦のエレクトリックかな? オクターブの厚みのある音像を感じる。

コード進行にもいいところがいっぱい見つかる。

Aメロのディミニッシュにはきゅんとする。

BメロがⅤ(ドミナント)ではじまるところがいい。

Cメロの入り口にはⅤmがおかれている。曲はAメージャー調だからⅤmはEm。ソの♯が外れてナチュラルGが構成音に入る。このおかしさ(違和感)がスパイスになる。これは借用和音(その調の音階上にできる「固有和音」以外の和音)全般にいえるおかしみ。

BメロとCメロのコードの主音の動きはちょっと似てもいるのに、構成音が違うだけでこうも違った味になるのだ。

約2分半というコンパクトさに美しさを思う。ビートルズの初期の有名曲とかもそれくらいのサイズ感の曲多いよな。

編曲は斉藤和義・松尾一彦。おふたりのビートルズ愛、松尾氏の手腕が発揮されてこの曲の細部や服飾的な質感が完成したのかもしれない。今も死ぬ程リピートしながらこれを書いている。

余談 サブタイトルのこととかライブ盤のこととか

ライブアルバムを多く出している斉藤和義。『十二月』(1998年のライブ演奏を1999年に発売)で聴ける『空に星が綺麗』では、先述したCメロの冒頭のコードがⅤm(Em)でなくⅢm(C♯m)で演奏されている。5度下行(4度上行)パターンを味わえて、原曲とまた違った魅力。

サブタイトルの「〜悲しい吉祥寺〜」は私が斉藤和義公式サイトをみたところ、『FIRE DOG』『白盤』で確認できる。シングルや『白盤』以外のベスト、ライブ盤などではサブタイトルは外れている。

このサブタイトルがないもので初めに出会っていたら、私は歌詞から井の頭公園をイメージしたかしら。どっちでもいいんだけどね。実際に吉祥寺をうろうろしているときにiPodで聴いた『空に星が綺麗』、最高でした。

それももう何年も前のこと。でも未だに吉祥寺にはちょこちょこ行く。また今度あの街で、この曲を鳴らしたい。

青沼詩郎

斉藤和義 公式サイトへのリンク

『空に星が綺麗』を収録した斉藤和義のアルバム『FIRE DOG』(1996)

ご笑覧ください 拙カバー

青沼詩郎Facebookより引用
“イントロのピアノ+木琴。ボーカルのダブ、コーラスが厚い。イントロ間奏のピアノの低いポジションが吉。クラップがにぎやす。エレキギターは12弦か、オクターブの音像に聴こえる。
Bメロ(?)のコードがⅤ始まり。Cメロ(?)ではⅤm(ベースは第一転回形?)始まり、副Ⅴ度も用いる。
このBメロCメロの出だしをコードネームでみるとBメロがE→F♯mであるのに対してCメロがEm→F♯と、m(マイナー)の位置が移動して見えるのが面白い。
歌詞が働く者の気持ちを知っているかのようで絶妙。「和義さん、なんで俺の気持ちわかるんすか」とウン千万人が思ったのではないか。もちろんミュージシャンだって働く者の一人だけど、すごく普遍的で一般の気持ちに通ずるものをこの曲は含んでいる。
アルバム『FIRE DOG』(1996)『白盤』(2005)でサブタイトル『〜悲しい吉祥寺〜』とつくことから、歌詞に出てくる「懐かしいあの公園」に井の頭公園が重なる。私も数え切れないほど訪れている公園なのでイメージしやすい(シングルにサブタイトルはない。『十二月』ほかライブアルバム、2008年のベスト版『歌うたい15 SINGLES BEST 1993~2007』でも同様)。”

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