星に願いを

星に願いを』は、いろんなところでふれてきた歌。

私が高校のときの音楽の教科書にこの曲が載っていた。当時ピアノやギターで弾いてみたら、意外とコードが小難しいところがあった。でもそこがおしゃれでかっこいいし、きゅんとする響きでポイントだ。

大学のときに作曲の授業(私は音楽大学出身)があって、何かアンサンブルを書くことになったとき私はこの曲を題材にして3声部くらいの弦楽器とピアノだかギターの伴奏の編成を書いた(作曲というか編曲)。作曲と弦楽器のいずれも主科としていない私の級友(音楽教育専攻)たちに協力してもらって、授業内で演奏した記憶がある。

四分音符を中心とした、とても緩やかなリズム形のメロディを、ところどころの不安定で装飾的な音程やコードが引き締める素敵な曲。大きく跳躍したあとになめらかに下行したり上行したりするメロディ。短2度上行で解決する非和声音を含んだメロディは多くの人が聴き覚えあるだろう。

カバーも多く、愛好者にもひんぱんに歌われるし、メディアで使われることも多い曲だから、もはやいつどこでどんな演奏によって初めてこの曲を知ったのか憶えていない。いちばん初めのオリジナルの音源がどんなものだったかさえ把握していないことに気付く。

こおろぎのジミニー・クリケットを演じたクリフ・エドワーズの歌

映画Pinoccio』(1940)主題歌。こおろぎのジミニー・クリケットが歌う。だから、オリジナルを歌ったのはジミニーを演じたクリフ・エドワーズ

こちらの動画がオリジナル・モーション・ピクチャー・サウンドトラックに収録されているのと同一の音源を使用しているよう。

サブスク配信されてるもので確認すると、名義はクリフ・エドワーズ&ディズニー・スタジオ・コーラス。オーケストラのサウンドにコーラスまで乗っている。なんてリッチな編成、優雅な響き。

これを聴くと、私は細野晴臣がラジオでしばしば紹介している1900年代前半くらいのアメリカの映画音楽、あるいはそれに影響を受けたであろう類いの音楽を思う。

細野晴臣が出演するラジオ『Daisy Holiday!』(Inter FM897、日曜日25時〜)を聴いているとたくさんの素敵な音楽との出会いがあるのだけれど、いつもエンディングに流れるスタンリー・ブラックの『The Song Is Ended』という曲がある。クリフ・エドワーズとオーケストラとコーラスがパフォーマンスしたオリジナルの『When You Wish Upon a Star』を聴くと、私はこれを強く思い出す。響き、サウンドがとてもよく似ており、気持ちよく嬉しい心地、なのにちょっと寂しげで影が挿す曲想が素敵だ。夜の、どこまでも奥へ続いてるみたいな気持ちのよい空気の湿り気、西洋のどこかの街の路面のガス灯のような暖かさを思い浮かべる。

そんな景色の中に溶け込みたい。石畳の通りを、コートとハットを身につけて颯爽と歩いてみたい。似合わないだろうなぁ、私……。

青沼詩郎

『星に願いを』を収録した『Pinocchio (Original Motion Picture Soundtrack/Japan Release Version)』

ご笑覧ください 拙演

青沼詩郎Facebookより

“緩慢なリズム形のメロディ。大きな跳躍を含んだ音形の反復、順次下行。
コード進行がしゃれてる。
映画『ピノキオ』につかわれたいちばんお初の音源がどんなものか聴いたことあるのかもしれないがぱっと浮かばない。あまりにもカバーが多い。みんなにうたわれている。
下行で締めたAパートに対してBパートは上行音形で印象づける。Ⅴの和音ではじまるBパート。
映画と同じ1940年にアカデミー歌曲賞を受賞した曲。私が高校生のとき使った教科書に載っている。81年前の曲かぁ。終戦前の時代の雰囲気ってどんなんだろう。”