Yellow Submarine 楽曲の概要
作詞・作曲：Lennon-McCartney（John Lennon、Paul McCartney）。The Beatlesの『Eleanor Rigby』との両Aシングル、アルバム『Revolver』（1966）に収録。楽曲と同名のアニメーション映画の主題歌になった。
Yellow Submarine（Remastered 2009）を聴く
グッバイ定位がすごいですが、右側のメインボーカルと左側のバンドのあいだに注ぎ込んでくる波が視え増したました。近年の私が聴き慣れているのはこの2009年のリマスターかなと思っていましたが、ちゃんと定位がわかるような環境で鑑賞するとあらためて気付かされます。
リンゴの声が極端に右。ちょっと残響がふわっと抜けていきます。同じくリンゴのドラムスが極端に左。この楽曲のメインキャストがこう、一番右と一番左にいる構図がキテレツにも思えますし、ずばり楽曲を右から左まで総べ、司るシンボリックなデザインでもあります。
キックの存在感があります。あらためて聴くとパワー感がすごい。気持ちよくドシっと太く、ドチっとアタック感もある感じで良い音です。このキックに対比するようにスパカンと抜けて響くスネアのキャラクターも異様な魅力です。エンデイング付近では、オープンに演奏したグラン・カッサ（大太鼓）なのか、そのへんの廃屋から剥がれてきたトタンを馬鹿でかいマレットで叩いたのかと思うくらいに「べらんべらん」で「だるんだるん」なサウンドも聴こえてきます。サブマリンの躯体の大きさが脳内に立ち現れるようです。
そう、とにかく、最右と最左にグッバイしたリンゴとリンゴ（ボーカルとドラムス）のあいだに、架空のキャラクターを演じたり楽曲の情景や舞台・光景を映したみたいな遊んだヘンテコなサウンド・声たちが渡り、遠くからはなしかけ、闊歩していくのです。遠近感も絶妙です。
ベースもオモテ拍を強調する演奏の勘所をおさえつつ、独特の分散フレーズで「ポールなまり」みたいなフレーズセンスが光ります。キックの太いパワー感とあいまってサウンドも非常に深く気持ちがよい。重量・質量感があります。どこまでも沈んで受けそうですし、機敏に浮上もしそうなフレキシブルなベースです。BGVが入ってくると左右にグッバイした空間が埋まり、補完されます。コーラスの気持ち良いこと。リンゴが歌う前提に配慮したやさしいフレーズ、子どもの歌をつくるという意識も含まれていたのでしょうか、万人がなぞりやすい動きをもったメロディです。
2022 Mixを聴く
波が人物たちの足元から包み込んで競り上がり、周囲を満たすみたいに感じます。先項の音源では流れ込むように感じましたが、こちらは浸すよう。全然違いますね。
ドラムスとリンゴの声は左寄りな感じでしょうか。ドまんなかという感じもしません。右のほうに離れた、遊んだ声が聴こえてきたりします。
ベースやドラムスの生々しい質量感・臨場感は先の項できいた2009 Remasteredのほうが感じやすかったです。こちらはロックっぽい質感があります。『Revolver』という１枚のアルバムの中のひとつのトラックであるというところからも、こういったミックスになっているのかもしれません。これはこれで、 Revolverをいまいちど通して改めて聴いてみるとさまざまなミックス・マスターの意匠の意図が見えてきてハっと驚く・気づくこともありそうにおもいます。当然のことながら私も大好きで新鮮な驚きをもらっている大傑作アルバムです。
そもそもはEleanor RigbyとのダブルAシングルがYellow Submarineの発表の初動です。これまた、どれだけ奇天烈なシングルであることか。メンバーの楽器の演奏を含まない、心がどこにあるのか不安にさせるような美しい変な曲『Eleanor Rigby』と抱き合わせになった黄色い、この世とあの世を反転させたはざまに浮かんだみたいなまぼろしの潜水艦の歌。強いですね。モノトーンと極彩色を同時に感じさせるところがビートルズの凄みです。
青沼詩郎
The Beatles UNIVERSAL MUSIC JAPANサイトへのリンク
歌詞の参考 世界の民謡・童謡＞イエロー・サブマリン Yellow Submarine 歌詞の意味・和訳 リンゴ・スターがリード・ボーカルを務めたビートルズの楽曲 間奏の不明瞭なせりふまで起こしてあります。気ままでプカンと世俗から浮いた（沈んだ？）ような楽曲の世界とシンプルな言葉の対比の良さがよく伝わってくる邦訳です。金沢明子のイエローサブマリン音頭についても記述。
同名アニメーション映画のSoundtrack『Yellow Submarine』（1969）
『Yellow Submarine』を収録したThe Beatlesのアルバム『Revolver』（1966）
ご寛容ください 拙演（YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『Yellow Submarine（The Beatlesの曲）ギター弾き語りとハーモニカ』）