イルカ まあるいいのち なごり雪

歌手のイルカさんを思ったとき、まず浮かぶ私の好きな歌です。作詞・作曲:イルカ。1980年のアルバム『我が心の友へ』に収録されています。2分台から雰囲気が変わり、Ⅰ→Ⅱ(7)→Ⅱm的なコード進行で大きいスケールを感じさせるエンディングへ導きます。

歌手のイルカさんから真っ先に想像するのはこちらの『なごり雪』だという方が多くいらっしゃるでしょう。シングル曲であり1975年のアルバム『夢の人』に収録されています。原曲はかぐや姫でアルバム『三階建の詩』(1974年)に収録されています。作詞・作曲は伊勢正三。

歌詞 “きれいになった”をサビで2回目に唱えるときの詞のリズム(ハマり方)が有名なイルカ版と原曲(かぐや姫)の違いで私の注目するところです。

シュリークスのメンバーだったイルカさん

シュリークスはメンバーの入れ替わりがあったこと、神戸和夫さんとイルカとして知られる保坂としえさんが残り結果として二人組になったことが読み取れるWikipediaサイトをリンクしておきます。シュリークス元メンバーの山田パンダさんはかぐや姫の元メンバー。イルカさんがかぐや姫の楽曲『なごり雪』をカバーするに至るつながりがうかがえます。

シュリークスのとげ 1/2(にぶんのいち)

シュリークスのシングル『さよなら』(1973)のB面、アルバム『イルカのうた』(1974)に収録された『1/2』(ニブンノイチと読む)。作詞・作曲:イルカ。

『まあるいいのち』の器の大きく友好的な態度と対になり、ソングライター・イルカさんの幅の広さがうかがえます。オバさんがこちらをじろじろみる視線にこちらは気づいているが、当のオバさんはこちらが観察の目に気づいてることに気づいていないでしょ?という態度でしょうか、鋭く刺します。

オニイさんの登場人物に対しては、現在のたばこを吸う姿のかっこのつきぶりと、かっこよく吸えなかったであろうたばこを覚えたての時期の姿を勝手に想像して鋭く刺してしまいます。若いイルカさんの鋭く自由だが的を射た観察と想像力がうかがえるラインが口早にリズミカルに語られます。

歌ネット>1/2(シュリークスの曲)へのリンク

ウーワー系や歌詞ハモコーラスでの厚みの持たせ方、やはりコーラスか何かで広げられたかあるいはダブリングのかかったようなエレキギターのスライド・プレイ。ジャカジャカとめまぐるしいアコギのストラミングはセブンスの効いたスパイシーな響きをめまぐるしく変えます。ベースとクラビネット風のトーンがチコチコとパーカッシブに相乗しグルーヴします。シタールのトーンがまたスパイシーでトガった感じを増長します。

イルカさんのヒット曲、たとえばまあるいいのちやなごり雪を中心に認知していましたが、シュリークスの『1/2』はグループとしての気骨、一筋縄ではいかない感じといいますか……長いものに巻かれてたまるか、世間に手なずけられてなるものか……といった、ありきたりな言葉でいってしまえば反骨や反抗……ロックやプロテストの態度を感じます。好いですね。

青沼詩郎

『1/2』を収録したシュリークスのアルバム『イルカのうた』(1975)