小林亜星が気になる。
最近出会った『ピンポンパン体操』は私に衝撃をもたらした(そのことを書いた記事)。その作曲者は小林亜星。
このときの衝撃に似たものに覚えがある。『にんげんっていいな』だ。
『にんげんっていいな』は昔から知っている歌だったけれど、それ以来あまり意識することなく来た。それが最近SWITCH誌の特集「うたのことば」に岸田繁の紹介で掲載されて、私の意中に来た。そこでいったん「へぇ」という感慨で終わってしまったのだけれど、さらに最近手に取った歌本『歌はともだち』(教育芸術社)で改めて出会い直したのだ。
譜面(Cメロ譜)での出会いはリスニングのみとはまた一段とちがったものがある。ページを見ながら音源を聴く。歌詞を見る。それは衝撃の体験だった。この曲についてはこちらに書いた。
『にんげんっていいな』の作曲者は小林亜星。
そして先に述べた『ピンポンパン体操』作曲者も小林亜星。
このふたつの曲の歌詞に私は大変衝撃を受けた。もちろん、音楽面、メロディについても思う所だらけなのだけれど、この、「まず歌詞に衝撃を受ける」というのが、小林亜星がそのように仕向けたデザインによるものなのではないかと驚愕している。小林亜星の作曲は、歌のことばを活かすのだ。これらは果たして詞先・曲先どちらで書かれたものなのか。
『あわんてんぼうのサンタクロース』も小林亜星作曲だった。作詞者は吉岡治。『おもちゃのチャチャチャ』を子供向けに補作詞した人でもある。
この曲は昔から知っていたし、歌ってきた。世のコマーシャルで流れる曲の多くが小林亜星によるものだと知っている部分もあったけれど、『あわてんぼうのサンタクロース』が彼の作曲だというのは今日まで知らないで来た。子供の私は、作詞・作曲者が誰かなんて気にしないで歌った。だから、今日そのことを知ってびっくりしている。こんなところにまで小林亜星。彼の作は私の思うよりもずっと私の中に深く根(音)を張っている。
『あわてんぼうのサンタクロース』歌詞の相違の謎
私は教育芸術社の『歌はともだち』を2冊持っている。版が違うのだ。その2冊に『あわてんぼうのサンタクロース』は掲載されている。
5番の最後の段の歌詞に違いがある。
古い版(私の手元のものは1983年)は「シャラランリン」となっているところが、新しい版(5訂版、2015年)では「リンリンリン」となっている。世に出ている音源でも両方を確認できる。どっちで歌ったらいいのだ?
これについて、名推理と名捜査を実行した人がいる。池田小百合氏だ。彼女のサイトにその素晴らしい記録がある。私が語るよりも確実かつ正しい。あなたにもぜひ読んでほしい。リンクしておく。
要点は、「リンリンリン」が本来であるのに誤植の結果「シャラランリン」版が生まれた、という考察だ。彼女のおっしゃるとおり、確かにそれまでにない「シャラランリン」が突然出てくる理由がわからないし、歌いにくい。誤植を招いたであろう理由の推察もとてもうなずける。彼女が主宰する歌の会では「リンリンリン」で歌うようにしているそうだ。
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音楽をことばのように機能させる魔法
繰り返すけれど、小林亜星の「歌詞のおかしみに着目させる音楽の力」はすごい。音楽を、ことばのように機能させているのではないか。その能力において、魔術師なのではないか。小林亜星は実際、コマーシャル、放送、歌謡、童謡等において超一級のはたらきをしてきた職人だと思う。
青沼詩郎
『あわてんぼうのサンタクロース』を収録した『小んなうた 亞んなうた ~小林亜星 楽曲全集~ こどものうた編』
ご笑覧ください 拙カバー
青沼詩郎Facebookより引用
“『にんげんっていいな』『ピンポンパン体操』で小林亜星が気になる存在に。検索していたら『あわてんぼうのサンタクロース』も彼の作曲であるとわかる。ずっと親しんできた曲だっただけにびっくり。積水ハウスの歌、日立の樹など、うっすら彼が作曲だと知っていた有名曲は多いが『あわてんぼうのサンタクロース』は完全に気づかずだった。子供の頃は、作曲者や作詞者が誰かなんて気にせずに歌った。『あわてんぼうのサンタクロース』作詞者は吉岡治。『おもちゃのチャチャチャ』を子供向けに補作詞した人。”
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