川に流す感情
シングル曲で、セカンドアルバムの再発?などにボートラとして加えられていることもあるよう。
悠然とした雰囲気を携えています。She is goneと歌います。愛する人を失った悲しみ。命を落としてしまったのか、単に恋愛関係の解消といったことなのかわかりません。
個人のことを歌っていたとしても本曲には個人の感情からの距離を感じます。riverも印象的なモチーフとして扱われます。川の雄大さ。連続性。どこまでも続いている様子と対比することで、個人の悲しみは相対的に小さくできます。音楽は個人の痛みを相対的に小さく抑えることができる機能を有するのは、古今東西にいかに恋や愛の苦しみを歌ったものが多いかがやんわり示しているのではないでしょうか。
本曲は主音の低音保続が広くよこたわります。その上で、ずりあげるようなギターの語彙が用いられています。
本曲は特定の感情にリスナーを誘導する性格から遠く離れた方向を極めているように思えます。そこが本曲を通してキンクスのロックアティテュードを私に感じさせるところです。
本曲のサウンドはビートルズの『Tomorrow Never Knows』『Love You To』などのサウンドを思い出させます。ビートルズの『リボルバー』よりもリリース時期は1年ほど?早いようです。革新の象徴、音楽を娯楽からアートに変えた象徴として語られることの多いビートルズですが、実は音楽業界でふつふつと、特定のアーティストのみに限った態度ではなくある界隈ではこうした特定の感情からの遊離をこころみる挑戦は起きていたのかもしれないと思わせます。
本曲の途中に含められたⅤm的なコードの響きも感情からの超越への希求を思います。Eキーだと仮に本曲をみなすと、近親調である下属調であるAキーにはしごをかけるような動きがあります。のんべんだらりと一本川が続いているだけに没入するのでなく、川沿いのあかるさや空気が変移していく映像的な快楽も含みます。しかし全体としては川の流れのひとつづきの連続性への回帰、統一性が感じられます。
See My Friends The Kinks 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:Ray Davies。The Kinksのシングル(1965)。アルバム『Kinda Kinks』の再発?などにボートラとして加えられている。
The Kinks See My Friends(アルバム『Kinda Kinks -Deluxe-』収録)を聴く
モノラルの音像。グバグバっとした混然一体感。コンプのきいたドラムのぶっとび感。
ボーカルにダブリングがかかっているのも、個人の一瞬の感情からの離脱をはかるブレです。ハーモニーに分かれるところもあって、感情と理性の二面性を思います。
途中のBm→E→Aのところの展開がやはり聞き直しても爽快で良いですね。ベースがここのところでストロークがおおまたぎになります。エンディングでは謎にブッブッブッブッブ……と8分音符で走りだす。何かの真理に気づいたのでしょうか。
エレキギターがボトルネック奏法なのかスティールギターなのかわかりませんが、グニャァンとポルタメントぽくせりあがります。この深淵な響き。12半音階の段階を超越した無段階の響きにこそ調性のある商業音楽以上の何かにのばす手のひらの所作が薫ります。
ギターの同度の音程を複数の弦で重ねる響きにゆらゆらと木漏れ日がまぶたを刺激するみたいな気分になります。明るいサウンド。ボーカルにしてもギターにしても、卓やら機材やらテープやらを通ったゲイン感があってきらびやかでまぶしいんです。
青沼詩郎
参考Wikipedia>キンクス、See My Friends
The Kinks – The Kinks Official Siteへのリンク
“デラックスバージョン”の『Kinda Kinks』で『See My Friends』が聴けます。