てぃーんず ぶるーす 原田真二 曲の名義、発表の概要

作詞:松本隆、作曲:原田真二、編曲: 鈴木茂・瀬尾一三。原田真二のシングル(1977)、アルバム『Feel Happy』(1978)に収録。

原田真二 てぃーんず ぶるーす(『Feel Happy 2007 〜Debut 30th Anniversary〜』収録)を聴く

甘い声、さわやかで豊かなサウンド。大衆音楽としての耐久性と新しさを備えていて、いつ聴いてもイマの音に聴こえます。

平な心で「ニンゲン」として聴いても、さわやかで気持ちがいい。娯楽音楽としての上質さを感じもするのですが、音楽おたく、編曲・作詞・作曲・音楽鑑賞が特に好きな酔狂として聴いても実に独創的でうなります。

さわやかだし、記憶に残る豊かなボーカルメロディは、三和音を逸脱する音程をふんだんに含んでいると気づきます。メジャーセブン(長7)の音程やナインス(長9)の音程など。アカ抜けた印象とともに、歌いたくなるのに記憶に引っ掛かって残る独特の個性を備えています。メロディの片鱗ひとつとっても、ソングライターとしての原田さんの並外れた才気にあらためて驚愕します。

フルート系の音色のメロトロンの音色が愛らしい。オモチャ箱から出てきたような独特の親身さ(気軽なフレンドリーさ)、かろみがありつつ品や趣味の良さもあります。メロトロンとピアノとシンセサイザーの演奏が原田さん本人のものとクレジットされているようです。ピアノのストロークの音はバンドの中で調和します。スポットライトを独占するようなずうずうしさではありませんが、しっかりと和声の響きとリズムを鼓舞し、時折グリッサンドでスピーディに視界を横断しアクセントを添えます。

生楽器らしくなジンジンとした独特のピークを備えた音色がシンセサイザーでしょうか。エンディング付近、フェード処理に入るブロックの直前のブレイクで音程がポルタメントして下がっていく独特の音色はシンセサイザーのそれでしょうか。

コンコンとコンガの音色と、シッカリと出たハイハットの音色がコンビネーションして乾いた歯切れの良さを呈します。スネアの音の減衰の加減も気持ち良い。ふくよかさとタイトさの塩梅が絶妙です。

ベースの演奏、特にBメロのあたりの歌い方(ベースのフレージング)が独創的です。リズム的にも音の運び的にも変則性に満ちておりAパートの実直な伴奏と対比になって私の耳を惹きつけます。

歌詞“泣いてる君は”のあたりのバンド全体でのリズムと音程のユニゾンが大立ち回り。過不足ない楽曲の展開に情報量のメリハリを与えます。

ストリングスがテーブルに潤いと豊かさを運びリッチな音像に仕立てます。ときおりエレキギターのオブリガードが輪郭の明瞭なサウンド。無駄のない単語で会話にあいづちを置いていきます。チャリンときらびやかな音色の12弦ギターも絡みます。

原田さんの歌唱はダブリングの効いたサウンドを基調に聴かせていきます。バックグラウンドボーカルもご本人による演奏です。

“ズック”“ジェームス・ディーン”。外来の名詞や固有名詞がアーバンな印象を演出し、歌詞で街灯りのような輝きを添えます。

みんな軽々しく愛を

口にしても君は違うと信じた

なのに君は僕の手より

座り心地のいい倖せ選んだ

都会が君を変えてしまう

造花のように美しく

渇いた君はぶるーす

『てぃーんず ぶるーす』より、作詞:松本隆

若いってどういうことでしょう。自分の唯一無二性を猪突猛進に信念としていることでしょうか。大人になるにつれ、数多くの人と出会い、数多くを経験していくと、自分と似た部分を持っている人はたくさんいると知るし、自分が考えたり思いついたりすることは古今東西の誰かも踏んだ轍なのだろうと即座に己の思想・感情の普遍性に思いを馳せるようになります。それが私にとっての若さの喪失の一面です。

ここで主人公が唱える言葉たちには、そうした私がかつて持っていたであろう若さを、心の海綿体から染み出させた言葉そのものです。そうなんだよなぁと、うんうんと首を深く時間をかけて縦に振る私。共感を誘います。

青沼詩郎

参考Wikipedia>てぃーんず ぶるーすFeel Happy

参考歌詞サイト 歌ネット>てぃーんず ぶるーす

原田真二 公式サイトへのリンク

『てぃーんず ぶるーす』を収録した原田真二の『Feel Happy 2007 〜Debut 30th Anniversary〜』(オリジナル発売年:1978)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『てぃーんず ぶるーす(原田真二の曲)ギター弾き語り』)